今の世の中は「過度なスピード」を求め過ぎ

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新幹線

1.東海道新幹線

1964年(昭和39年)10月1日、「東海道新幹線」は、東京オリンピックに間に合わせるように無事開業しました。この「夢の超特急」は時速220kmで、東京駅と新大阪駅間を3時間10分(開業当初は4時間)で結ぶようになりました。それ以前の在来線では10時間以上かかったそうです。

私も中学2年の時(昭和38年)に、修学旅行専用列車の「ひので号」か「きぼう号」に乗って東京まで行ったはずですが、そんなにかかったとは知りませんでした。たしか、箱根の大涌谷にも行った記憶がありますので、「途中下車」ありで、東京直行ではなかったようです。

2.リニア中央新幹線

それが今や時速500kmの「リニアモーターカー」が走る「リニア中央新幹線」計画が着々と進んでいます。開業予定は、品川ー名古屋間が2027年、名古屋ー新大阪間が2037年となっています。東京ー大阪間が、最速67分で結ばれるそうです。その時私が生きていれば88歳ですが、果たして乗れますかどうか・・・

3.リニア中央新幹線の問題点

この「リニア中央新幹線」については、既に次のような問題点が指摘されています。

(1)事業としてペイしないのではないか?

(2)活断層の問題などもあり、難工事となる

(3)大量に発生する残土の処理方法が未定

(4)地下水の水枯れの問題

(5)原発一基分相当の大量の電力消費

(6)電磁波の人体への影響

(7)ウラン鉱床を回避できるのかという問題

(8)「ほとんどトンネル」という中での事故の場合の避難の問題

これらとは別に、私が個人的に気になる点が二つあります。

第一は、「スピード」を追求するあまり、線路は極力「直線」になるようにしているため、モグラが地中を進むように「トンネルだらけ」になっていることです。車窓からの景色を楽しむことは期待薄です。2018年3月に全線開通した「新名神高速道路」も高槻ー川西間は「トンネルだらけ」です。

20年後には、「懐かしの新幹線ひかり号で行くのんびりゆったりのフルムーン旅行はいかがですか?車窓からの景色がゆっくりお楽しみいただけます」といった旅行会社のCMが流れているかも知れませんね。

第二は、「東京出張」が「日帰り」で行けるようになるため、「宿泊を伴う出張」が減るようになることです。午前中の会議がある場合でも、朝一番のリニアに乗れば十分間に合いますし、午後の会議の場合でも、日帰りが十分可能となるからです。これは「宿泊を伴う東京出張」を楽しみにしていたサラリーマンには痛手です。

「テレビ電話会議」も普及して来ていますので、よほどの遠隔地からの出張でない限り、「宿泊を伴う東京出張」は絶望的です。

一度「時間よ止まれ!」と言いたい気分です。また「狭い日本、そんなに急いでどこへ行く」とでも言いたいところです。あっ、これは45年ほど前に、「交通安全標語」の最優秀作品に選ばれたスローガンでしたね。「スピード違反による重大事故を減らす」ための・・・

それにしても、皆さん、あまりせっかちにならずに、もう少しスピードを落としてゆっくりのんびり行こうではありませんか.

旧約聖書の創世記に「バベルの塔」の話があります。実現不可能な天に届く塔を建設しようとして崩れてしまったと言われるこの塔にちなんで、「空想的で実現不可能な計画」を比喩的に「バベルの塔」と言います。「リニア中央新幹線」も、バベルの塔とならないことを祈るばかりです。