免疫と抗体と抗原はどう違うのか?全員が免疫か抗体を持つまでコロナは終息しないのか?

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免疫と抗体分かりやすく解説

「新型コロナウイルス肺炎(COVID-19)」の世界的感染拡大(パンデミック)については、日本政府・日本国民全体も一体となって「外出自粛」「休業要請」「3密の回避」などに努めていますが、収束の兆しが全く見えません。

現在「パンデミック」となった「新型コロナウイルス肺炎」が恐れられている最大の原因は、「空気感染・飛沫感染すること」よりも「確実に有効な治療薬やワクチンがまだ開発出来ていない」ということです。もちろん現在研究者が全力で有効な治療薬やワクチン開発を進めています。

イギリスでの感染拡大の初め頃にイギリスのジョンソン首相が「多くの人々が感染しないと免疫が出来ない」(集団免疫論)として、パブの営業自粛などの感染抑止策に否定的な意見を述べたことがあります。その後、感染抑止方針に転換し、首相自身もコロナに感染しました。

ところで、「免疫」とそれによく似た「抗体」とはどう違うのでしょうか?また、イギリスのジョンソン首相の当初の方針は全く間違いだったのでしょうか?

今回はこれらについて考えてみたいと思います。

1.「免疫」と「抗体」との違い

(1)「免疫」とは

「免疫」とは、「常に体内をパトロールしながら細菌やウイルスなどが侵入していないかをチェックし、もし侵入されてしまったら即座に攻撃を開始する機能」のことです。

つまり細菌やウイルスに対する「警備システム」「防衛システム」のことです。

誰でも生まれた時から「免疫機能」は持っています。血液中の白血球が免疫機能を司り、体全体の細胞の約6.6%を占めています。約5000億個の免疫細胞が、細菌やウイルス、がん細胞などの抗原から私たちの体を守っているのです。

(2)「抗体」とは

「抗体」とは、「免疫細胞から指令を受けて作られる、細菌やウイルスなどの抗原を不活性化(死滅)させるための特別なタンパク質」のことです。

つまり細菌やウイルスに対する「武器」のことです。

この「抗体」は、細菌やウイルス、寄生虫などの抗原が体内に侵入し、免疫細胞からの指示が発せられるまでは体内で生産されないため、免疫機能のように生まれ持って備わっているものではありません。

しかしこの抗体が作られると、一度かかった病気にはかかりにくくなります。

「おたふく風邪」や「はしか」に一度かかると、「免疫が付いた」とよく言われますが、これは「抗体」が作られたおかげで同じ病気にかかりにくくなるためです。もしその病気を再度発症しても、一度目にかかった時ほど症状は重篤化しません。

(3)「抗原」とは

「抗体」とよく似た言葉に「抗原」があります。その違いは何でしょうか?

「抗原」は「ウイルスや細菌のほかアレルギーを引き起こす花粉や卵などの、体に免疫反応を起こす物質そのもの」のことです。

一方「抗体」は「免疫グロブリンというたんぱく質で、体に入ってきた異物(ウイルスや細菌、花粉など)にぴったりと適合して、その異物を排除するように働きかけるもの」です。

つまり、「抗原」は外部から体内に侵入してくる「泥棒」のようなもので、「抗体」は異物が入ってきた時に体の中で作られる「警察」のようなものです。

2.「ワクチン」の予防接種

インフルエンザなどの「ワクチン」の予防接種は、人工的に抗原を体内に入れ「抗体」を生成させるため、感染症や病気にかからずに予防することができるのです。

実際の抗原ほど強い作用を持っていないものを入れるため、免疫細胞が正常に働いている人は予防接種で罹患することはありませんが、免疫力が低下している人はまれにこのワクチンの予防接種で体調を崩すことがあります。

3.イギリスのジョンソン首相の当初の方針は全く間違いだったのか?

ジョンソン首相

3月12日にジョンソン首相は、最高医療責任者のクリス・ホィッティ氏、主任科学顧問のパトリック・ヴァランス氏とともに記者会見して、新型コロナウイルス肺炎への対策に関して次のように述べました。

①多くの家庭で本来の死期よりも早く愛する人々を失うことになるだろう。

②最も重要な課題は、ピークの数週間に高齢者と最も脆弱な人々を守ることにある。

③イギリスはイタリアよりも新型感染症の進行スピードが約4週間遅れているが、いずれ大規模な感染者の発生が予想される。全員が感染しないようにすることはできないし、多くの人々が感染しないと免疫ができないので、誰もが感染しないようにすることは望ましいことではない。

④イギリスでは感染者数は現時点では590人だが、実際の感染者数はこれよりもはるかに多く、5千人~1万人の間だと推測している。

⑤目指すことは新型感染症を封じ込めることではなく、ピークを遅らせることとピークの高さを下げることによって、苦難を最小化することにある。背景として、夏が近づくとNHS(国民保健サービス)が忙しくなり、また呼吸器疾患が一般的に減ることがある。

学校は閉鎖しない(今後変わる可能性あり)。閉鎖しても子供はどこかに集まるし、重症化する可能性の高い祖父母に会う機会が増えるとかえって問題が悪化する。

大規模イベントの禁止は効果が少ないので、禁止しない(今後変わる可能性あり)。大規模イベントでも、家族や友人との小さな集まりでも同じ程度でうつる。

⑧アメリカが行おうとしている大陸ヨーロッパからの渡航制限には追従しない。やっても効果は乏しい。

⑨新たに咳が続くようになるか熱が出たら、どんなに軽いものであっても、感染を広めないようにするために、7日間は自宅で自己隔離することが求められる。

⑩数週間後のいつかの時点で、家族の誰かに何らかの症状が出たら、家族全員が2週間にわたって自己隔離することを求めることになるだろう。

家にとどまっている人々は、検査を受ける必要はない。検査能力の重点は、症状がある入院患者に置かれる。検査をするかどうかは、症状とその重さだけで決まる。

⑫行動科学の知見によれば、感染を減らすための行動を最初は熱心に行っていても、それを長く続けることは難しい。自粛行動を長期にわたって求めても、長く続けられない人々が肝心な時に守らなくなることを懸念している。長期的な対応を求めるのではなく、疫学的に見て最も効果的な時期に必要な対応をしてもらう必要がある。

⑬手を洗ってほしい。

このジョンソン首相の当初の方針は、一理あったようにも思いますが、どちらが正しかったのかは、1年後か数年以上後になるかわかりませんが、この「新型コロナウイルス肺炎」が「完全に終息」してから検証されるべき問題です。

4.元厚生労働省医系技官の木村もりよ氏の見解

木村もりよ

2020年4月11日にABCテレビの「教えて!NEWSライブ 正義のミカタ」という情報番組で、元厚生労働省医系技官の木村もりよ氏(1965年~ )は、次のように述べていました。

 誰も感染症から逃げることは出来ない。感染症に関しては、感染して免疫を持つか効果的なワクチンで予防するしかない。緊急事態宣言は医療崩壊を防ぐための時間稼ぎと考えてください。

彼女は筑波大学医学部、ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院疫学部修士課程修了の医師です。

この木村もりよ氏の発言は、政府の「諮問委員会」の専門家の見解ではありませんが、一理あるようにも思えます。

5.産婦人科医の丸田佳奈氏の見解

丸田佳奈医師

「日本がPCR検査を希望する人全員に施さず、感染者の数字を低く抑えている」という海外などの批判について、4月12日に放送された読売テレビの「そこまで言って委員会NP」で次のような趣旨の意見を述べていました。

(1)日本が意図的に感染者数を低く見せかけるために、PCR検査を抑制していることはない

(2)軽症者は検査を受けることなく、家にいて療養するほうが、医療崩壊を防止する上で大切

(3)味覚障害・嗅覚障害の症状のある若者で、PCR検査を受ける人が急増しているが、結果はほとんどが「陰性」だったとの情報がある

(4)PCR検査の対象をやみくもに広げるのではなく、重症者・中症者に限定すべきで、それによって医療従事者の過大な負担を軽減すべき

この丸田佳奈医師の意見には私も同感です。

6.コロナの「終息」についての私の素人考え

イギリスのジョンソン首相が当初が打ち出した「集団免疫論」(多くの人々が感染しないと免疫が出来ないとして、営業自粛や学校休校などをせず放任する考え方)は、有効なワクチンの開発に1年から1年半以上かかる見込みという現状では「多くの人に抗体を付ける」という即効性がある反面、非常に多数の重症者や死者が出る恐れもある「ギャンブルのような政策」で、リスクが大きいと思います。

そのため、中国のような「都市封鎖」(ロックダウン)や欧米のような「外出禁止令」や「休業指示」、あるいは日本のような「不要不急の外出自粛要請」や「休業要請」、「三つの密の回避」などの政策を取らざるを得ないのが実情です。

ただ、このような政策は、医療崩壊を起こさないために「オーバーシュート」(爆発的感染拡大)を出来るだけ先送りし、オーバーシュートの山の縮小を目指すだけです。

これらの政策によって「一旦は収束」ができても、活動の自粛が解除されるとまた第二波・第三波の「オーバーシュート」が起きることは避けられません

完全な終息」のためには、有効なワクチンが開発されて、「国民全員がワクチン接種を受けて抗体が出来るまで待つしかありません

回復した(抗体が出来た)コロナ患者の血漿(けっしょう)を重症患者に投与する「血漿療法」も一部で行われ、効果も見られるようですが、輸血と同様に別の感染症リスクもあります。

また、中国の調査チームトップの鐘南山医師によれば、この新型コロナウイルスは患者の体内で生存しやすいよう変異し、感染力がより強力になることもあるようで、なかなか手強い相手です。

いずれにしても、我々人類が今まで経験したことのない「スペイン風邪」以上に厄介な「姿の見えないウイルスとの長い長い戦い」になりそうです。

それともう一つ、この「ウイルスとの戦い」に「自衛隊の力を借りる」必要が高まっていると思います。現在国際協力で「連合海上部隊」 として中東に派遣されている護衛艦「たかなみ」(約260名の隊員)は即刻帰国させて、「コロナ対策の応援部隊」として、日本にいる自衛隊員とともに日本国民の役に立ってほしいものです。



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