昨年末から今年1・2月にかけて、例年以上に「インフルエンザ」が日本全国に猛威を振るっています。今冬のシーズンは史上最悪ペースを更新する勢いです。
この「インフルエンザ」について、先日会社の同僚が「インフルエンザは潜伏期間もあるし、法定伝染病だから注意しないといけない」と話していたので、ちょっと気になりました。
「法定伝染病」については、ちょっとした思い出話があります。私が中学3年の時、「保健体育」の授業で先生が、「日本の法定伝染病は、教科書に書いてある11種類です。これを今日暗記して来なさい。明日テストします」と告げました。
ちなみに「法定伝染病」とは、次の通りです。
『コレラ、赤痢、腸チフス、パラチフス、痘瘡、発疹チフス、猩紅熱、ジフテリア、流行性脳脊髄膜炎、ペスト、日本脳炎』
私は、どうやって暗記するかを思案した結果、頭の部分だけ取って「コレ・赤・腸・パラ、痘・発・猩・ジフ、流行・ペス・日本」と暗記することにしました。「語呂合わせ」にもなっていませんが、何だかリズム良く唱えられるので、比較的短時間で暗記出来ました。
翌日、案の定「テスト」があり、最初に当てられた同級生は5つほどで立ち往生してしまいました。次に私が当たり、昨晩の暗記法のおかげですらすら言えました。先生は「ほらね。ちゃんと覚えて来る人は覚えて来るでしょう」とあたかも私が全部言えることを予期していたようなコメントを言って終わりました。
私はこれで、「短時間でも集中してやれば、案外覚えられるものだ」ということを学びました。そしてこの「法定伝染病」は55年経った今でもすらすら言えますので、15歳の頃の記憶力は我ながら大したものです。
1.「法定伝染病」とは
「法定伝染病」とは、「伝染病予防法」(1897年制定)に定められていた「悪性の伝染病(伝染性感染症)」のことです。同法では、医師の届け出義務、患者の隔離と強制入院、消毒などが規定されていました。
しかし、1999年の「伝染病予防法」の廃止と「感染症予防法」の施行に伴い、人の場合はこの「法定伝染病」という呼称は使用されなくなりました。(残念・・・)
現在、「法定伝染病」という言葉は、「家畜伝染病予防法」で指定されている「家畜伝染病」の通称となっています。
「家畜伝染病」には、「牛・馬・豚などの家畜がかかる伝染病で、特に強い感染力を持ち被害の大きい牛疫・豚(とん)コレラ・炭疽・狂犬病など」が指定されています。
最近、野生の猪から感染したと見られる豚コレラが続発し、多数の豚が殺処分されています。この豚コレラは、人には感染しませんが、食べると健康被害が出るのではないかと心配です。しかし、一部で豚コレラに感染した子豚が出荷されていたとの報道もあります。今後このようなことのないように、関係当局には十分注意してほしいものです。豚コレラに感染した子豚が、それ以外の人間に感染するような有害な病気に罹っていない保証は何もないからです。
なお、消費者庁はホームページで次のように述べています。
『豚コレラは、豚、いのししの病気であり、人に感染することはありません。このため、仮に感染豚の肉を食べても人に影響はないと考えられます。根拠のない噂などにより混乱することなく、正確な情報に基づいて冷静に対応して頂きますようお願いします。』
2.「感染症予防法」とは
新たな感染症が多発する現代においては、「伝染病予防法」は制定から100年以上経っており、実情に合わなくなったため、「エイズ予防法」「性病予防法」と共に廃止し、「感染症予防法」に統合したものです。
「伝染病予防法」は、患者を社会から「隔離」する以外に感染の拡大を防ぐことが出来なかった時代を反映し、対象となる伝染病(感染症)を全て一律に隔離対象とするなど、伝染病への偏見や差別の原因にもなっていました。
その反省点に立ち、「感染症予防法」では、「感染の拡大防止」と「患者の人権保護」が両立するように、法の対象となる感染症を一律に隔離対象とせず、危険性の高い感染症から順に、「強制隔離」「隔離を含む行動制限」「就業制限」「法的な行動制限なし」などの5段階のランクを設けました。
「伝染病予防法」の取り扱いに最も近い「1類感染症」は、「エボラ出血熱」「ラッサ熱」「マールブルグ病」「クリミア・コンゴ出血熱」「南米出血熱」「ペスト」「痘瘡」の7種類です。
「2類感染症」は、「1類感染症」に次いで危険度が高いもので、「ジフテリア」「SARS」「ポリオ(急性灰白髄炎)」「結核」「重症急性呼吸器症候群(SARS)/中東呼吸器症候群(MERS)」の6種類です。
状況に応じて入院勧告や命令が可能な「3類感染症」は、「コレラ」「細菌性赤痢」「腸チフス」「パラチフス」「O-157(腸管出血性大腸菌)」の5種類です。
「新型インフルエンザ」は上記1~5類の感染症とは別の新たなカテゴリーとして追加されました。
<2020/1/27追記>
安倍首相は中国を中心に感染が拡大している「新型コロナウィルス肺炎」を「感染症」に指定する方針を表明しました。
3.インフルエンザの対応
「新型インフルエンザ」は、「感染症予防法」で「就業制限」が定められており、「就業禁止を命じることができる」とされています。
一方、通常の季節性の「インフルエンザ」は、「感染症予防法」では「5類感染症」とされており、「就業制限」は定められていません。
以下では、通常の季節性の「インフルエンザ」の対応について考えて見たいと思います。
(1)学校での対応
「学校」(幼稚園・小学校・中学校・高校・高等専門学校・特別支援学校・大学など)の「学生」がインフルエンザに罹った場合は、「学校保健安全法」により、「発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日を経過するまで」の「出席停止期間」が設けられています。
(2)会社での対応
学校の場合と異なり、会社によって対応がまちまちです。
「出勤停止が言い渡される」「通常の病欠扱いとなる」「有休休暇の消化を勧められる」「休業手当が支払われる」などです。
しかし、家族(特に子供)がインフルエンザに罹った場合は、本人に自覚症状がなくても、「潜伏期間」があるため、「1週間程度は出勤を自粛」して、「会社の他の人に感染させるなどの迷惑を掛けない」ようにするのが、社会人としての責務だと思います。
これは、会社の対応がどうであれ、絶対に守るべきです。「会社の対応の改善」が必要と考える場合は、「労働組合」を通じて会社に交渉してもらうなど別途行動すべきです。
私が現役サラリーマンの頃は、「風邪を引くのは気持ちが弛んでいる証拠」だと言われたり、「風邪や熱があるぐらいで休むな」という雰囲気がありましたが、今はそんな時代ではありません。
その一方で最近「インフルエンザハラスメント」という耳慣れない、しかし気になる言葉を耳にします。
この「インフルエンザハラスメント」というのは、「人手不足」を背景に、「子供がインフルエンザに罹って看護が必要なのに、会社からは出勤を強要される」「インフルエンザで数日休むと、休日にただ働きさせられる」「カラオケのアルバイト店員がインフルエンザで休みたいと言うと、代わりのアルバイトを探して来いと言われた」などの事例を指しているそうです。
「禍を転じて福と為す」で、「インフルエンザ」に罹ったことを契機に、せいぜい「休養・養生」をされることをお勧めします。
<2020/3/9追記>
2019年12月に中国・武漢で発生した「新型コロナウイルス肺炎」(COVID-19)が世界中で猛威を振るっていますが、最近「コロナハラスメント」という気になる動きが出て来ています。
中国人や日本人などに対して「コロナ!出て行け!」といった人種差別的な感情を含んだ発言や中傷が欧州などで見られるようです。
また、日本でも横浜中華街の数店舗に「コロナ!中国人は出て行け!」と書いた紙が届いたり、「家族に中国人がいるという理由だけで、自宅待機」を命じられたり、ある人が普通の風邪か体調不良で休んでも「彼はコロナではないか?」といった噂や疑心暗鬼を生むこともあるようです。さらに「花粉症」や「喘息の持病がある人」まで、咳をすると「コロナではないか?」という目で見られる事態も起きているようです。
「新型コロナウイルス肺炎」(COVID-19)は、感染が世界中に広がっている一方でまだワクチンや確固とした治療薬がないことから、このような風潮が起きているのだと思います。しかし我々としては「過剰反応」を戒め、「賢く恐れる」ようにしたいものです。