<2020/12/4追記>12/6にいよいよ「はやぶさ2」が地球に帰還します!
<2019/7/11追記>「はやぶさ2」が二度目の土砂採取に成功し、2020年末に帰還予定との報道がありました。今後の分析作業とその結果を見守りたいと思います。
最近、大阪の街頭でキリスト教の布教と思われる人達が立って、「生命の起源」というプラカードを掲げているのに出会います。プラカードには「生命の起源について、ご一緒に考えて見ませんか?」と書いてありました。どちらかと言えば礼儀正しい雰囲気を持った人達でした。
多分、聖書によって「造物主・創造主」のことを説こうとしているのだと思いますが、私には「この人たちは本当にそんなことを信じているのだろうか?」という疑問が先に立ちました。
私は、大学時代に生物学の教授が推薦したソ連のオパーリン(1894年~1980年)の「生命の起源」という本を読んだことがあり、以前から興味を持っている問題です。彼の説は「化学進化説」でした。
1.「生命の起源」とは何か
「生命の起源(Origin of life)」とは、地球上の生命の最初の誕生・生物が無生物質から発生した過程のこと」です。これをテーマとした論や説は「生命起源論(Abiogenesis)」と言います。
2.「生命の起源」についての諸説
「生命がいつ、どこで、いかにして誕生したのか?」という問いと、それに対する説明(仮説)は古くから行われてきました。
古代においては、「神話」でそれを説明しました。様々な宗教においても同様のことが行われ、現在まで続いています。
(1)古代ギリシャ
哲学者のタレース(BC624年頃~BC546年頃)は、「万物の根源(アルケー)」は「水」であるとしました。ヘラクレイトス(BC540年頃~BC480年頃)は「火」と考え、ピタゴラス(BC582年~BC496年)は「数」をアルケーと考えました。自然哲学者のエンペドクレース(BC490年頃~BC430年頃)は「土・水・火・空気」の四元素をアルケーと考えました。
アリストテレス(BC384年~BC322年)は、様々な動物を観察したり解剖した結果、「生物は親から生まれるものもあるが、物質から一挙に生ずるものもある」として、「自然発生説」を唱えました。世界には生命の基となる「生命の胚種」が広がっており、この生命の胚種が物質を組織して生命を形作ると説明しました。これは「胚種説」と呼ばれています。
(2)ユダヤ教・キリスト教
ユダヤ教の聖書(旧約聖書)の「創世記」では、「天地創造」が6日間で行われ、7日目に「神」が休息したとされています。神は1日目に光を、2日目に空と水を、3日目に植物を、4日目に太陽と月と星を、5日目に魚と鳥を、6日目に獣と家畜そして神に似せて人を造ったとしています。
ユダヤ教の聖書は、キリスト教でも「旧約聖書」として引き継がれていますので、このような生命観・世界観は広くキリスト教圏でも信じられることになります。
しかし。既に「進化論」を知っている我々の目には、最初から「神」が「人」を造った話など出鱈目も甚だしいものです。まあ。「神話」ですから仕方がないようなものですが・・・
(3)「自然発生説」をめぐる研究の歴史
16世紀から17世紀にかけて、スイスのパラケルスス(1493年~1541年)とオランダのヘルモント(1579年~1644年)は、ネズミ・カエル・ウナギなどが無生物から発生すると主張しました。
イタリアのレディ(1626年~1697年)は、実験によって「ハエのたからない魚には、ウジが発生しない」ことを証明しました。
オランダのレーウェンフック(1632年~1723年)は、顕微鏡を発明し、1674年に微生物や細胞を発見しました。
フランスのパスツール(1822年~1895年)は、空気中には目に見えない微生物(カビや細菌の胞子)が多数浮遊していることを実験で証明しました。
(4)「化学進化説」
かつて地球上に生命が誕生するまでは、地球上には有機物は存在しなかったはずなので、最初に生じたのは無機栄養微生物だったと考えられた時代がありました。
しかし、20世紀に入り、「最初の生命の発生以前に有機物が蓄積していたはずだ」と考える学者が現れます。これを最初に唱えたのがオパーリンです。彼は「生命の起源」(1922年)という本の中で「無機物から有機物が蓄積され、有機物の反応によって生命が誕生した」とする仮説を立てました。これが「化学進化説」です。
(5)「ワールド仮説」
1950年代から、化学進化後の最初の生命でDNA(遺伝情報保存役)・RNA(仲介役)・タンパク質の三つの物質のどれが雛形となったのかが論じられて来ました。「DNAワールド仮説」「 RNAワールド仮説」「 プロテインワールド仮説」の三つの仮説がありますが、統一見解はまだありません。
(6)「パンスペルミア仮説」
「宇宙空間には生命の種が広がっている」「最初の生命は宇宙からやって来た(地球そのもので生命が生まれたのではない)」とする仮説です。この説の原型は、1787年にイタリアのスパランツァーニ(1729年~1799年)によって唱えられました。
1906年にスウェーデンのアレニウス(1859年~1927年)によって、このように名付けられました。アレニウスは、「生命の起源は地球本来のものではなく、他の天体で発生した微生物の芽胞が宇宙空間を飛来して、地球に到達したものである」と述べています。
ただ、この説は結局のところ、「生命の起源」についての根本的な解明にはなっていません。
いずれにしても、太陽系の地球以外の銀河系にも「生命」「生物」の存在の可能性があり、銀河系以外の宇宙全体については、さらに未知の部分が多すぎます。
宇宙に存在する「銀河」の数は、従来約2千億個と考えられてきましたが、最近のハッブル宇宙望遠鏡の観測によると、2兆個以上もあることが分かったそうです。気の遠くなるような数ですね。
3.「はやぶさ2」による小惑星「リュウグウ」の岩石採取による調査
つい先日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ」への着陸に成功しました。「リュウグウ」は、地球から3億4000万kmのかなたにあり、4年をかけてたどり着きました。岩石のかけらを採取して来るそうで、「太陽系の成り立ち」や「生命の起源」についての手掛かりが得られると期待されています。
地球と同じ46億年前に誕生した小惑星だそうですが、水分のない岩石だけのようなので、果たして「生命の起源」の謎の解明にたどり着けるのか、私には疑問があります。