「容疑者」が出演の「DVD」を販売中止や発売延期したり「映画」を公開延期したりするのは行き過ぎ!

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新井浩文

以前から気になっていたのですが、出演した俳優が何らかの犯罪で逮捕された場合、その俳優が出演するDVDが販売中止や発売延期になったり、映画が公開延期になったりすることがあります。

「被害者の心情に配慮する」というのが理由のようですが、そのDVDや映画を作品として見たいと思っている人の権利はどうなるのでしょうか?あるいは、そのDVDや映画の監督・共演者・スタッフ・製作委員会、その他の利害関係者の利益・権利はどうなるのでしょうか?

その容疑者に「賠償金」を請求できる立場の人は良いかも知れませんが、それ以外の人は「泣き寝入り」ということになるのでしょうか?

2019年2月に逮捕・起訴された新井浩文容疑者の逮捕までの出演作は130本近くに上るそうです。

NHKオンデマンドは、彼が出演していた「真田丸」「トットてれび」など10作品の配信を停止、WOWOWも「ヒトリシズカ」などで同様の措置を取っています。

2019年6月に公開予定だった映画「台風家族」について、配給元のキノフィルムズは公開延期を発表。同じく2019年公開予定だった映画「善悪の屑」について、配給元の日活は公開中止を発表しています。

2月27日発売予定だった映画「SUNNY強い気持ち・強い愛」のブルーレイDVDについては、発売が延期されていましたが、5月22日に発売することが決定したそうです。

また、ゲスト出演していた2018年のテレビドラマ「今日から俺は!!」第9話では、やべきょうすけを代役として撮り直し、DVD版およびHulu配信版で映像が差し替えられることになりました。

しかし、出演している芸能人の不祥事があると、映画やDVDなどの作品が公開中止などの「封印」に追い込まれる(あるいは自主規制か?)のはどう考えても行き過ぎた「過剰反応」ではないでしょうか?

1.ネット上の意見

「封印」賛成の意見としては、「販売延期・中止は当然。どんなに良い映画でも性犯罪を犯す人間が出ている映画は見たくない。それが理性というものだ」「公開するべきではないと思う。被害に遭われた女性の気持ちを最優先に考えて・・・」などです。

一方、「封印」反対の意見としては、「臭い物に蓋をするだけの短絡的思考」「作品は関係ないという姿勢はないのか?」「DVDは買いたい人が買って家で見るだけだから別に問題ない。何でも自粛はよくない」などです。

私は後者の意見に賛成するものです。

2.発売元・配給元の会社の事情

(1)こうした事件の容疑者を起用しているということで、会社が社会的・倫理的責任を問われる恐れがあるので、迅速に「自粛措置」の対応をしている

(2)昨今の「コンプライアンス意識」の高まりを受けて、企業は「レピュテーションリスク」(企業に対する否定的な評価や評判が広まることによって、企業の信用やブランド価値が低下し、損失を蒙る危険度)に非常に敏感になっており、不祥事や事件を起こした人物との関りを極端に嫌う

(3)被害者がいる事件の場合、「被害者の気持ちを考慮した上で、加害者が世間に出る機会を減らす」という大義名分

(4)テレビ局や映画会社による「クレーム対策」あるいは「リスク回避対策」

ちなみに出演者以外でも、映画監督などが不祥事を起こしたり、逮捕されることもあり得ますが、その場合はどうなるのでしょうか?

3.Yahooによるアンケート調査結果

「Yahoo!ニュース」による意識調査「出演者の不祥事で作品お蔵入り、どう思う?」(合計投票数12万2,290票、男女比は77.1%:22.9%)の結果は、「やむを得ない」が30.7%、「公開すべき」が62.7%、「わからない/どちらとも言えない」が6.6%でした。

4.マイケル・ジャクソンの「児童虐待告発映画」公開の波紋

マイケル・ジャクソン(1958年~2009年)は、「キング・オブ・ポップ」と呼ばれ、「史上最も世界で売れたアーティスト」の一人です。この光り輝く部分がある一方、以前から「児童虐待」の噂があり裁判にもなりましたが、2005年に全ての起訴事実について「無罪」が言い渡されました。この「無罪」の有力な根拠となった「児童虐待は無かった」と証言していた被害者二人が、彼の没後10年目に今度は「児童虐待があった」と告発映画で証言しているのです。闇の部分にスポットライトが当てられた格好です。

この児童虐待告発映画「リーヴィング・ネバーランド(Leaving Neverland)」は、4時間に及ぶドキュメンタリーです。これがイギリスや全米で放送されたことで、彼の曲が「放送禁止」になるのかどうかが注目されているようです。

イギリスで最も人気のあるBBC radio2が、この映画の放送後彼の楽曲を流さなくなったことから、そういう見方が出たものです。

これに対しBBCは、「マイケル・ジャクソンの楽曲をプレイリストから取り下げたという事実はない。新たなプレイリストに彼の楽曲がないだけ」「マイケル・ジャクソンを放送禁止にはしていない。他のアーティストと同様に、音楽をリスナーとコンテンツに合わせて選曲している」とのコメントを発表しています。

マイケル・ジャクソンの言葉に「Lies run sprints,but The truth runs marathons.」(嘘はあっという間に伝わるが、真実が伝わるには時間がかかる」というのがあるそうです。

今回の「児童虐待告発映画」の話を聞くと善悪どちらの意味に理解したらよいのか、意味深長な言葉ですね。

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