今年2月に俳優の新井浩文が逮捕される事件がありましたが、その結果、NHKやWOWOWの出演番組の配信停止や、出演映画の公開延期など各方面に影響が出ました。
それについては賛否両論がありましたが、私は「過剰反応」だったと思います。
今度は3月にNHKの「いだてん~東京オリムピック噺~」に無口で頑固な職人気質の足袋屋の店主役で好演中だったピエール瀧が麻薬取締法違反容疑で逮捕されました。
今回も新井浩文の時と似たような自粛措置が取られました。「冠番組打ち切り」や「降板・代役差し替え」「公演中止」「販売中止」「配信停止」など広範囲に及びました。
唯一の救いは東映映画「麻雀放浪記」が予定通り4月5日に公開と決まったことです。
1.阿佐田哲也の小説「麻雀放浪記」
この阿佐田哲也(1929年~1989年)の小説は、戦後復興期のドヤ街を舞台に、主人公「坊や哲」「ドサ健」「上州虎」などの個性的な人物が生き残りをかけて激闘する「ピカレスクロマン」(悪漢小説)です。「青春篇・風雲篇・激闘篇・番外篇」のシリーズものです。
花村萬月の「百万遍」のシリーズ「青の時代・古都恋情・流転旋転」や、五木寛之の「青春の門」のシリーズ「筑豊篇・自立篇・放浪篇・堕落篇・望郷篇・再起篇・挑戦篇・風雲篇」にも通じる面白さがあります。
私は、学生時代には麻雀をしたことがありませんでした。しかし30代のころに、これから麻雀を覚えたいという会社の先輩がいたので、上手な人に一緒に教えてもらうことにしました。
そのころに、麻雀小説作家として阿佐田哲也の名前を知りました。やがて、阿佐田哲也というのはペンネームで、彼が色川武大(いろかわたけひろ)という「雀聖」とも呼ばれる雀士であることも知りました。
麻雀の本も何冊か買って読みました。「メンゼン・タンヤオ・ピンフ」が基本で、「チー・ポン・カン」と賑やかに鳴くと「安上りの手」になるのであまり良くないとありました。しかし、なかなか「役作り」も出来ず、「ドラ」も無く、たまに「テンパイ」して「リーチ」を掛けても「捨てパイ」から筋を読まれて、なかなか上がれませんでした。
このような有様ですから、学生時代から長年やっている人にはとても及びません。「点数計算」も親切な人が表に書いてくれたのですが、結局覚えられず数年で麻雀はやめてしまいました。
2.白石和彌監督の映画「麻雀放浪記2020」
1945年の「戦後」からタイムスリップして2020年の「新たな戦後」へ現れた主人公のギャンブラーが見る世界を描いているようです。
制作した東映の紹介は次のようになっています。
主人公・坊や哲がいるのは、2020年の“未来”。なぜ? 人口が減少し、労働はAI(人工知能)に取って代わられ、街には失業者と老人があふれている・・・そしてそこは“東京オリンピック”が中止となった未来だった・・・嘘か?真か!?1945年の“戦後”からやってきたという坊や哲が見る、驚愕の世界。その時、思わぬ状況で立ちはだかるゲーム“麻雀”での死闘とは!?
ストーリーの奇想天外さもさることながら、ピエール瀧の演技も大変興味深いので、ぜひ映画館に足を運んで見たいと思っています。