「遺伝子組み換え食品」ならぬ「ゲノム編集食品」は安全なのか?日本では今夏にも流通する見込み

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ゲノム編集と遺伝子組み換え

「遺伝子組み換え食品」については以前から「安全性」に問題があることがわかり、「この食品は遺伝子組み換え作物を使用していません」という表示をよく見かけました。

昨年11月に中国の科学者が「遺伝子操作ベビーの誕生」を発表して以来、「ゲノム編集」がにわかに注目を浴びるようになりました。

1.「遺伝子組み換え」とは

生物には「遺伝情報」を伝える「DNA」というらせん状のひもがありますが、その中で特定の働きをするものが「遺伝子」です。特定の働きというのは、特定のたんぱく質を作る働きです。

「遺伝子組み換え」とは、「人間が利用できそうな性質を持つ遺伝子を発見し、それを別の生物のDNAに組み込むこと」です。

「遺伝子組み換え」は英語で「Genetic Modification」(略称:GM)と言います。「遺伝子組み換え作物」は「Genetically Modified Organisms」(略称:GMO)です。

「遺伝子組み換え食品」(Genetically Modified Food)とは、「特定の遺伝子を導入した作物(GMO)を原料に用いた食品」のことです。

「遺伝子組み換え食品」には、除草剤に強い大豆・トウモロコシ・菜種、害虫に強いトウモロコシ・ジャガイモなどがあり、日本では1996年から輸入されています。しかし、安全性に疑問があるという消費者などの声を受け、農林水産省は2001年4月に日本農林規格(JAS)法を改正し、「GM農産物およびそれを原料とした食品への表示義務」を実施しています。たとえば「大豆(遺伝子組み換え)」のような表示です。

しかし、しょうゆ・食用油脂・マッシュポテト・ジャガイモ澱粉などは、「加工工程で、遺伝子組み換えで生じたDNAやたんぱく質が分解・除去される」との理由から、表示義務はありません。

では、どうやって「遺伝子組み換え」をするのかというと、様々な方法がありますが最も多く使用されているのは「アグロバクテリウム法」です。「アグロバクテリウム」というのは、土の中にいる細菌の一種で、自分の遺伝子を植物の中に組み込む能力があるのです。

「ベクター(運び屋)」として働くのは「アグロバクテリウム」の「プラスミド」と呼ばれる部分(遺伝子の一種)です。

「遺伝子組み換え」の手順は、次の通りです。

①「アグロバクテリウム」の中から「プラスミド」を取り出す、②それを目的の遺伝子につなげる(遺伝子を切ったり貼ったりするのは酵素を使う)、③それを「アグロバクテリウム」の中に戻す、④「アグロバクテリウム」を植物に感染させることで、「プラスミド」に運ばれて目的の遺伝子が植物の中に送り込まれる

2.「ゲノム編集」とは

「ゲノム編集」とは、「ゲノム上で任意の遺伝子を改変する技術」です。「人工ヌクレアーゼ」というDNA切断酵素を用いて、目標とする遺伝子を破壊したり、挿入したりすることです。「ゲノム」とは、「ある生物種を規定する遺伝情報全体」のことです。

従来の「遺伝子組み換え」技術は、微生物などの別の生物の遺伝子を入れることで、農薬や害虫に強い品種を作るものです。耐病性など限られた機能しか持たせられず、他の生物の遺伝子が入るため安全性に対する不安が根強くあります。

一方、ゲノム編集を使った品種改良は主に遺伝子を切断して働きを止める方法によって、作物自体の遺伝子を改変するので安全性が高いとされています。

遺伝子によって、味や栄養を自在に変えることもでき、消費者にメリットの大きい品種が短期間で簡単に開発できます。

厚生労働省は、「ゲノム編集は自然に起こる突然変異や従来の品種改良と見分けがつかない」という理由で、規制の対象外としました。改変した遺伝子や有害物質の有無などの情報を同省へ届け出れば、安全審査を受けなくても販売を認める方針です。

早ければ、今夏にも申請の受け付けを開始するです。

3.日本での「ゲノム編集食品」流通開始の問題点

「ゲノム編集食品」の取り扱いについては、各国で議論が分かれています。

アメリカでは、農務省が2018年3月にゲノム編集食品の栽培を規制しない方針を出し、実際に栽培も始まっています。ただ、食品の販売はまだ始まっていないそうです。

一方、欧州では司法裁判所が2018年7月に「遺伝子組み換え」と同様に、規制するとの方針を出し、議論を進めています。

「ゲノム編集」の安全性に問題があるかどうか(健康に悪影響があるかどうか)は、長年月の検証を経ないとわからないと思いますので、少なくとも消費者が選択できる余地を残すために「遺伝子組み換え食品」と同様に「ゲノム編集食品」についても表示義務を課す必要があるのではないでしょうか?

今夏に日本で流通が始まれば世界初となりそうですが、新しい技術であるだけに、安全性について問題がないのか慎重に検討する必要があると私は思います。