もみじに花と実が出来るのご存知ですか?太田道灌の山吹伝説もご紹介します

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もみじの実

<2021/7/27追記>西矢(もみじ)さんが東京五輪2020のスケートボードで金メダル獲得

西矢椛

13歳西矢椛(もみじ)さんが、スケートボード日本人最年少金メダリストとなりました。

今回のニュースで「もみじ」という名前が、「紅葉」や「黄葉」「栬」ではなく、「椛」というあまり見慣れない漢字だったのに驚いた人も多かったのではないかと思います。

「椛」は「国字」(日本で独自に生み出された数少ない漢字)の一つです。2004年に人名に使えるようになってからは、字面に「花」があることから、どこか可愛らしさが感じられ、名付けで徐々に使われるようになりました。

なお「椛」には、「紅葉、もみじ」と「(樹木の)樺(かば)」の二つの意味があります。

この漢字の成り立ちは、もともと「樹木のかば」を表す漢字に「樺」があり、旁(つくり)の「華」を同じ読みを持つ「花」に変え、「椛=かば」の意味が生まれました。

その後、「木」と「花」を組み合わせた字であることから連想し、「木の葉が花のように変化する様子」を意味する「もみじ」を表すようになったのです。

皆さんは、「もみじ」に花や実が付くことをご存知でしょうか?「植物なのだから、花や実が付くのは当たり前だと思う。しかし、実際にどんな花か実か見たことはない」という方がほとんどではないでしょうか?

実は、私もはっきり認識したのはつい最近のことです。「実」については、庭に植えてあるもみじの木の周辺のバークチップや「砂利敷き」の露地に、「実生(みしょう)」が生えているのを時々見かけたので、種が出来ていることは知っていました。

「もみじ」と言えば、「秋の紅葉」が定番ですが、初夏のころの「青もみじ」も美しく、俳句で「青楓(あおかえで)」や「若楓(わかかえで)」という初夏の季語にもなっています。

今回は意外と知られていない「もみじの花と実」および「太田道灌の山吹伝説」についてご紹介したいと思います。

1.「もみじの花」

4月上旬~5月上旬にかけて、最初は赤く縁どられていたもみじの幼葉が、徐々に鮮やかな黄緑色の美しい若葉に変わっていきます。近づいてみるとたくさんの紅色の小粒のつぼみと小さな花弁から白い雄しべが飛び出した「もみじの花」が見えるはずです。

桜やチューリップなどのように派手な花ではありませんが、遠慮がちに密やかに咲いているのは、高山植物のような奥ゆかしさが感じられます。

2.「もみじの実」

「もみじの実」は、「翼果(よくか)」と呼ばれる竹とんぼのような羽根を付けた実です。紅く色づいてきれいなものです。風が吹くと、竹とんぼのように舞いながら周辺の地上に落ちて行きます。

3.「太田道灌」の「山吹伝説」

江戸城を築城したことで有名な「太田道灌」(1432年~1486年)が、若いころ鷹狩りに出かけた時、急に雨が降ってきたので蓑を借りようと付近の農家に入ったところ、若い娘が出てきて何も言わずに山吹の花一枝を差し出しました。「花がほしいのではない」と彼は怒って雨の中を帰って行きました。

しかしその夜、家臣にこの話をしたところ、若い娘が差し出した山吹には「七重八重花は咲けども山吹のみのひとつだになきぞ悲しき」という兼明親王の歌に託して、「山間の茅葺の家であり、貧しくて【蓑(実の)ひとつ】さえ持ち合わせがないことを奥ゆかしく答えたのだ」と教えられ、自らの無学を恥じ、この日を境に歌道に精進するようになったという伝説です。江戸時代中期に書かれた戦国武将の逸話集「常山紀談」に載っている話です。

しかし、本当に山吹には実が出来ないのでしょうか?もし本当なら、どうやって増えるのでしょうか?確かに「園芸」では、山吹は「挿し木」で簡単に増やせますが、自然界ではどうなのでしょうか?

八重山吹

答えは、「八重の山吹には実が出来ない」が、「一重の山吹には実が出来る」というのが正解です。一重の山吹は、5本くらいの雌しべとたくさんの雄しべがありますが、八重の山吹は全部の雄しべが花びらに変化してしまっていて花粉が出来ないため実も出来ないのです。

一重山吹

そして、八重山吹のように実の出来ない「不稔花」は、挿し木・取り木などの「栄養繁殖」でしか増やせないそうです。

種苗メーカーで販売している植物の中には、「種で増えてしまうと種苗が売れなくなる」とか「勝手に品種改良されると困る」などの理由から、意図的に「不稔花」の品種を売っている場合もあるようです。

最近は、せっかく良い花を買ったのに、「不稔花」だったので増やすことが出来ずにがっかりしたという例も増えているようです。くれぐれもご注意ください。