1.生涯現役だったケーシー高峰さん
ケーシー高峰さん(1934年~2019年)は、医療ネタと下ネタを交えた「お色気医事漫談」で人気を博しましたが、惜しいことに今年4月に亡くなりました。
彼の母方は、先祖代々医師の家系で、母親は「生涯現役」で診察を行った産婦人科医でした。日野原重明さんのようなお医者さんだったのですね。兄弟をはじめ、一族の多くが医師や歯科医師だそうです。
彼は日本大学医学部に進学させられましたが、教授と折り合わず、芸術学部に転部しました。転部したのは、本人の話によれば風貌を理由にいじめを受けたからだそうです。
彼の芸名は、当時テレビで人気だった脳神経外科医が主人公のドラマ「ベン・ケーシー」と彼の憧れの女優だった「高峰秀子」から取ったものです。
彼が連発する「グラッチェ」(イタリア語で「ありがとう」)、「セニョール」(スペイン語で男性への呼び方)、「セニョリータ」(スペイン語で女性への呼び方)など謎のラテン系あいさつは流行語にもなりました。
彼の漫談は、医者のような白衣を着て、漫談をしゃべりながら、鹿爪らしい顔をして黒板にいろいろと書きながら笑いを取る独特のスタイルでした。
彼は2005年に舌ガンにかかり、完治させて舞台に復帰しましたが、療養中にもかかわらず、独演会を行った際は、黒板を前に一言もしゃべらず、身振り手振りと筆談だけで舞台を務めあげ、「私のガンは・・・子宮ガンです」とか「顔は悪性です」などのギャグを飛ばして観客を魅了したそうです。
昨年4月には肺気腫と診断され、「酸素ボンベ」が欠かせない生活となりました。それでも昨年7月に亡くなった落語の桂歌丸師匠が、酸素ボンベを付けて高座に上がっていたのを見て発奮し、「オファーがあれば酸素ボンベを付けてどこへでも行く」と意気込んでいたそうです。
「昭和の芸人らしい芸人」であったと懐かしく思い出します。
2.舞台で倒れたイギリスのコメディアン
今年4月に、イギリスのベテランコメディアン「イアン・コニート」さんが、舞台で「心臓発作」や「脳卒中」を話題にした漫談を披露していて「心臓発作のマネ」をした後、急に体調を崩して倒れ、亡くなったというニュースがありました。
彼は60歳代だったそうですが、「心臓発作のマネ」をしていて体調に異変を感じて、座り込み、肩を引きつらせるなどの症状を示しましたが、観客はこれも「芸の一環」と受け止めていたとのことです。
「舞台で死ぬのは本望」とか「役者冥利に尽きる」と言いますが、心臓発作の芸をしながら舞台で倒れたのは「コメディアン冥利に尽きる」というべきなのかもしれません。