ステマは何が問題か?健康被害が出た企業や詐欺商法企業のCM出演者の責任は?

フォローする



ステマ・京都盛り上げ隊

1.「ステマ」は何が問題か

(1)最近のステマの事例

先日、吉本興業所属のお笑いコンビ「ミキ」(兄・昂生33歳、弟・亜生31歳)が、広告(PR)であることを明示せずに、「#京都市盛り上げ隊」や「#京都国際映画祭」などのハッシュタグをつけてツイートしたことが、「ステマ」に当たるのではないかとして問題になりました。「ステマ」とは「ステルス(stealth:隠密)マーケティング」の略で、「口コミを装った広告」のことです。

この「広告」の話は、京都市から吉本興業に依頼があり、その広告の仕事(京都を宣伝するツイートをする仕事)を「ミキ」が受けて4回ツイートし、200万円を受け取ったというものです。

(2)ステマとは

ステマとは「消費者に対し、広告だということを隠しながら行う広告のこと」です。いわゆる「やらせ」や「サクラ」です。

そもそも「広告」であれば、自分は高級車に乗っているであろう木村拓哉がカローラのような大衆車の宣伝をしていても、問題はありません。外国の有名化粧品を使っていそうな北川景子がコーセー化粧品の宣伝をしていても、問題はありません。ただ、嘘っぽい印象を消費者は持つかもしれませんが・・・

しかし、「ギャラをもらった広告」であることを隠して、自分のブログで、自分が本当に愛用したり、愛飲しているかのような記事を書いたり、その商品を推薦したりすれば、「ステマ」になります。

(3)ステマの種類

「ステマ」には、「なりすまし型」と「利益提供型」の2種類があります。

「なりすまし型」は、「業者が一般消費者になりすまして、口コミや評価を書くタイプ」です。好意的なものだけでなく、利用者のふりをしてライバル企業に対して悪口を書き込む行為もこのタイプです。

過去の有名な事件としては2012年の「食べログ事件」があります。これは、業者が利用者になりすまして、特定の飲食店に好意的な書き込みをしていた事件です。

「利益提供型」は、「芸能人など社会的な影響力のある人(インフルエンサー)に報酬を渡して宣伝を依頼するタイプ」です。

過去の有名な事件としては2012年の「ペニーオークション詐欺事件(ペニオク事件)」があります。これは、「ぺニオク詐欺」の摘発によって発覚しました。逮捕された業者が運営していたペニオクサイトで、複数の芸能人が報酬をもらって、「高額商品を格安で落札購入したという嘘の内容」を自分のブログに投稿していた事件です。

ステマをしていた芸能人については、最終的に詐欺罪や軽犯罪法違反などの刑事責任は問われませんでした。

(4)ステマの問題点

①消費者を騙していること

消費者に誤った印象を与えて、正しい判断を出来なくさせていることです。

②業界全体に対する信用が低下すること

同じもしくは似通った業界全体に対する不信感を醸成することです。

③炎上のリスクがあること

ネット民や一般消費者から大々的な非難を受け、ネット上で「炎上」してしまう可能性があることです。

(5)ステマに対する法規制

「景品表示法」は、企業が商品やサービスを宣伝・広告する時のルールを定めたもので、「不当な表示」を禁止しています。「不当な表示」とは、「優良誤認表示」と「有利誤認表示」です。

2.健康被害が出た商品を販売した企業のCM出演者

某女優が「あきらめないで」というキャッチコピーで宣伝していた「茶のしずく」というお茶を原料にした石鹸で健康被害が出たことがあります。化粧品・医薬部外品メーカーの商品で「モンドセレクション金賞」を受賞していたそうですが、湿疹やかぶれ、アレルギー症状などの健康被害が出ました。

メーカーへの損害賠償請求訴訟は多数あり、現在も継続中ですが、女優に対する責任追及はありません。

3.詐欺商法企業のCM出演者

(1)金融商品の詐欺的商法(抵当証券の多重売り)を行った会社のCM出演者

元大関が新聞折り込み広告やテレビCMに出演していました。被害者らは「元大関の出演した宣伝広告は、これを見た者に対して親近感と信頼感を与え、購入への心理的抵抗を弱らせたものであり、元大関は抵当証券販売会社による詐欺行為を故意または過失によりほう助した」として不法行為に基づく損害賠償責任を追及しましたが、裁判所は元大関の責任を否定しました。

(2)疑似通貨「円天」(L&G)のCM出演者

「円天」(L&G)の広告に出演した演歌歌手も、L&G社に出資した原告から「L&Gは組織的詐欺で不法行為であるのに、演歌歌手はL&Gの全国大会でコンサートを行ったり、DVDに出演していた」として不法行為に基づく損害賠償責任を追及されましたが、裁判所は演歌歌手の責任を否定しました。

(3)詐欺商法の企業広告に「推薦文」を掲載した俳優

上記2件とは異なり、いわゆる「原野商法」のパンフレットに「推薦文」を載せた俳優が、「不法行為のほう助責任」を認められた事件があります。

これは、俳優が「被告会社役員と個人的なつながりがある」と明記しており、「俳優個人の立場で被告会社を推薦している」として、「不法行為のほう助責任」を認められたものです。

4.出演している企業の商品について「本音」をしゃべった芸能人など(蛇足)

故中村勘三郎(1955年~2012年)が、中村勘九郎と名乗っていた子供時代の話です。

サントリーのCMタレントとして「トリス坊や」という名前で濃縮ジュースの「トリスコンクジュース」のコマーシャルを担当していましたが、契約期限が来て最後の出番となった時の出来事です。

司会者の女性から、「今日がトリス坊やとしては最後の出番となりますね。今日は何でもいいから好きなことをしゃべってね」と振られて、彼は「何でもしゃべっていいの?」と念押しした上で、「本当はね、このジュースはあんまり美味しくないの」と言ってしまったのです。当時は生放送ですので、撮り直しは出来ません。その後のサントリー社内の騒動は大変だったでしょう。

浅茅陽子は長年「エバラ焼肉のたれ」のCMに出演していて有名でしたが、ある時「エバラ焼肉のたれを使っていない」と公言しました。実は彼女は「ベジタリアン」(菜食主義者)で、肉を食べない人間であることを公言したのです。

その結果、当然ですがCMはあえなく降板となってしまいました。

1970年代に、ある銀行のイメージキャラクターになった某有名女優は、「CM出演後も、その銀行に一切預金しなかった」という話を聞いたこともあります。

これからCMを見る時は、「嘘が多い」ということを念頭において「眉に唾を付ける」ようにして見た方がよさそうです。