犬の鳴き声は「びよびよ」、猫の鳴き声は「ねうねう」だった!?

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猫の鳴き声

前に「本当は鳴かない動物たちの鳴く季語」の記事を書きましたが、犬や猫の鳴き声の「擬音語」(オノマトペ)が、昔は今と違っていたことを、皆さんはご存じでしょうか?

今回はこれについて考えてみたいと思います。

1.犬の鳴き声

今は、犬の鳴き声を表す擬音語は、「わんわん」が一般的ですね。

しかし平安時代後期、白河院政期(1086年~1129年)頃に完成した歴史物語の「大鏡」の中の次のような逸話では、犬の鳴き声は「ひよ」(当時は濁点をつけなかったので、多分「びよ」)と表されています。

清範律師という播磨国の僧侶が、愛犬家から犬の法事を依頼されます。この犬の法事の席で、飼い主が愛犬を偲んで説法を頼んだところ、清範律師は「ただいまや 過去聖霊は蓮台の 上にてひよと 吠え給ふらん」と言ったという話です。

江戸時代初期に出版された狂言の台本集である「狂言記」(1660年)では、犬の鳴き声は「びよ」と書かれています。実際の狂言の舞台では、多分「びょう」と発音していたのではないかと思います。

江戸時代中期以降は「わんわん」が一般的になったようです。

この「犬の鳴き声の擬音語(オノマトペ)の変遷」も、広い意味では「日本語の変遷」といえるかもしれません。

英語では「bow wow」(バウワウ)というのが一般的ですが、これは昔の日本の「びよ」と感じが似ていますね。ほかにも「ruff ruff」とか「woof woof」という表現があります。

2.猫の鳴き声

今は、猫の鳴き声を表す擬音語は、「にゃーにゃー」か「みゃお」が一般的ですね。

しかし、平安時代は「ねうねう」、鎌倉時代は「ねんねん」と表記されていました。

平安時代に紫式部が書いた「源氏物語」の「若菜下の巻」に、次のようなくだりがあります。

人気遠かりし心も、いとよく馴れて、ともすれば衣の裾にまつはれ、寄り臥し睦るるを、まめやかにうつくしと思ふ。いといたくながめて、端近く寄り臥し給へるに、来てねうねうといとらうたげに鳴けば、かき撫でてうたてもすすむかな、とほほ笑まる。

与謝野晶子訳の源氏物語では次のようになっています。

つきの悪い猫も衛門督にはよく馴れて、どうかすると着物のすそへまつわりに来たり、身体からだをこの人に寄せて眠りに来たりするようになって、衛門督はこの猫を心からかわいがるようになった。物思いをしながら顔をながめ入っている横で、にょうにょうとかわいい声で鳴くのをでながら、愛におごる小さき者よと衛門督はほほえまれた。

ここには「ねんねん」ではなく、「ねうねう」と書かれていますが、実際は当時「ん」の表記が確定していなかったため、「う」と表記されたもので、実際の発音は「ねんねん」だったそうです。鎌倉時代になると表記も発音と同じ「ねんねん」となりました。

猫は奈良時代に中国から伝わり、寺の経本をかじるネズミ対策として飼われるようになり、平安時代には愛玩動物となりました。「ねうねうと鳴く子」ということから「ねこ」となったという説があります。

「にゃーにゃー」という表現は江戸時代以降になってからです。

なお、英語では「mew」(ミュー)または「meow」(ミャオウ)というのが一般的です。



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