意外と知らない物や現象の名前(その2)ランドルト環・サインポール・バラン・雷紋・鯨幕など

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ランドルト環

前に「意外と知らない物の名前や現象の名前」の記事を書きましたが、まだまだ面白い例がありますので(その2)としてご紹介します。

1.視力検査の「C」マーク

日本では、視力検査と言えば「C」のようなマークの切れ目の方向を答える検査方法が一般的ですね。このマークは「ランドルト環(Landolt ring)」(ランドルト氏環)と言います。

スイスの眼科医エドムント・ランドルト(1846年~1926年)によって開発されたもので、彼の名前がそのまま名称となっています。

2.床屋の目印の赤白青が回転しているアレ

サインポール

赤白青の三色の縞模様(レジメンタル・ストライプ)がクルクルと回転する理髪店を示す細長い円柱形の看板は、「サインポール」と呼ばれています。ただしこれは和製英語で、英語では「barber’s pole」または「barber pole」と呼ばれます。

「有平棒(あるへいぼう)」「三色ねじり棒」という別名もあります。

「サインポール」の由来については次のように諸説あります。

(1)12世紀のヨーロッパでは、理容師が外科医を兼ねていた(「床屋外科」と称した)ため、赤は動脈、青は静脈、白は包帯を表しているという説

ただし、この説に対しては、血管に動脈と静脈の2種類があることが発見されたのは17世紀なので、12世紀に血管を赤と青で分けて表示したというのは歴史上考えられないとの指摘があります。

(2)瀉血の際に使用した棒(患者の手に握らせる杖)が原型とする説

(3)1815年の「ワーテルローの戦い」で、フランス国旗を巻き付けた棒が野戦病院に立てられたのが起源とする説

3.お弁当のおかずの仕切りに使う緑色のギザギザのアレ

バランバラン(植物)

お弁当のおかずの仕切りに使う緑色のギザギザのアレは「バラン(ハラン)」です。これは本来は右の写真のような「葉蘭」という観葉植物を、弁当のおかずの仕切りに使用したもので、以前はよく庭に植えられていました。

私が子供の頃に住んでいた古い家にもたくさん植わっており、遠足の時の弁当の仕切りによく使っていました。

4.ラーメンの丼の縁に描かれたナルトマーク

雷紋ラーメン鉢のナルトマーク

ラーメンの丼の縁に描かれたナルトマークは「雷紋(らいもん)」と言います。

「雷紋」は直線が次々と曲折していく幾何学模様で、古くから陶器、漆器、金工、木彫、建築などに用いられており、「稲妻紋」とも言います。

5.食パンの袋の留め具

クロージャー

食パンの袋を閉じる留め具(クリップ)は、「バッグ・クロージャー」(または単に「クロージャー」)と呼びます。なお、業界では「クィックロック」と呼んでいるそうです。

ただし、海外では一般に「ブレッドクリップ」や「ブレッドタブ」と言うそうです。

この「バッグ・クロージャー」は、そもそも食パンの袋を閉じるためではなく、1952年頃に「リンゴの袋」を簡単に閉じるために考案されたものだそうです。

6.プチプチ

気泡緩衝材

ワレモノなどを包んであるプチプチのことは、「気泡緩衝材」(気泡緩衝シート)と言います。潰しだすと何だか気持ちよくなって、止めらなくなった経験はありませんか?

これはアメリカのエアー・プロダクツ社がプールシート用に製造したのが始まりです。1957年に2人の技術者が「簡単に清掃できる壁紙」を作るため、紙の上に布地の模様をつけたビニールをかぶせた壁紙を開発しようとしましたが、その際に誤ってビニールに気泡ができてしまったことから誕生しました。

7.葬式などの時に張られる白黒の幕

鯨幕

葬式などの時に張られる白黒の幕は、「鯨幕(くじらまく)」と言います。

「鯨幕」は葬儀などの凶事に使う幔幕で、黒と白の布を一幅ごとに交互に縫い合わせ、上下に黒布を横に渡した幕です。

鯨の黒い皮と白い脂肪との連なりに似ているところから、この名前がつきました。

8.トイレ詰まりに使うスッポン

ラバーカップ

トイレの排水口や風呂場・台所の流し台の排水管などが詰まった時に使うスッポン(パッコン)は、「ラバーカップ」と言います。「吸引カップ」「通水カップ」とも呼ばれます。

9.爪の根元の白い部分

爪半月

爪の根元の白い部分のことは「爪半月(そうはんげつ/つめはんげつ)」と言います。

爪の根元にある乳白色で不透明な三日月状の部分で、「小爪(こづめ)」とも言います。

小指の爪半月は腎臓や小腸、心臓の機能と関りがあり、薬指の爪半月は生殖機能やリンパ系の機能と深い関りがあります。中指の爪半月は脳の機能や循環器系と深い関りがあります。人差し指の爪半月がなくなったり、ほとんど見えない時は、胃腸や膵臓が機能不全を起こしているか、上部呼吸道で何らかの慢性疾患が発症している危険があるそうです。親指の爪半月は肺と脾臓に密接に関わっています。

このように爪半月の状態から健康状態や病気の発症している兆候がわかると言われています。

10.アイスクリームを盛り付ける際に使うスプーン

ディッシャー

アイスクリーム(ジェラート)を盛り付ける際に使うスプーンのことは「ディッシャー」と言います。よくビュッフェ形式のパーティーなどで、好みのアイスクリーム(ジェラート)を各自で取り分ける時に使いますね。

私は初めてこの「ディッシャー」に出会ったとき、うまくアイスクリーム(ジェラート)を取れなくて困った経験があります。

11.立ちくらみ

眼前暗黒感

急に立ち上がった時などに、目の前が急に暗くなる感じがする立ちくらみは「眼前暗黒感」と言います。「めまい」の一種で、原因は脳の虚血状態(血流が悪くなる状態)です。

12.ラバーペンシル錯視

ラバーペンシル錯視

鉛筆を振ると鉛筆がグニャグニャ曲がって見える現象のことを「ラバーペンシル錯視」(Rubber Pencil Illusion)と言います。

誰もが鉛筆をゴムのように柔らかくできます。鉛筆の端のほうを2本の指でつかんで上下に揺らすだけです。硬いはずの鉛筆が波のように揺らいで見えるでしょう。

この「ラバーペンシル錯視」は、目の錯覚から生じています。

光が目に入ると、その刺激は網膜にある受容体(信号変換器)によって信号に変換されます。そして変換された信号は神経に沿って脳に渡され処理されます。

ただし、脳に渡される情報は動画ではなく画像です。目で撮影された連写画像が脳に送られ、脳がその連写画像を繋げて動画のように私たちに見せているのです。

つまり私たちの目と脳のメカニズムは「パラパラ漫画」のようだといえるでしょう。

当然、1秒あたりの処理画像数が多ければ多いほど、私たちが感じ取る映像は滑らかになり、実際に起こっている現象をより正確に感じ取ることができます。

ちなみに2016年の調査によると、人間は毎秒50~100フレームを処理しますが、一部の鳥類は毎秒145フレーム、イエバエは毎秒270フレーム以上、最速のハエは毎秒400フレームも処理できるそうです。

つまり、人間の映像処理能力は他と比べるとそれほど高くないため、「ラバーペンシル錯視」のような錯覚が起きるのです。

13.扇の骨がバラバラにならないように止めておくための金具

扇の要

扇の骨をとじ合わせるために、その末端に近い部分に穴をあけてはめ込む楔(くさび)のことを「要(かなめ)」(「扇の要(おうぎのかなめ)」)と言い、鯨の骨や金属で作ります。

比喩的に、「ある物事を支える最も大切な部分や事柄、人物」のことも「要」と言い、「組織の―となる人」「肝心―」のように用います。

「蟹 (かに) の目」とも呼ばれます。確かに蟹の目によく似ていますね。

蟹の目

漢字 の「要」は当て字で、「かなめ」の 語源は、この金具が蟹の目のようであるところから、「かにのめ」と呼ばれ、それが「かのめ」「かなめ」へと変化しました。

「かなめ」に変化したのは、金具なので「金目」という意味解釈が加わったと考えられます。
「かなめ(金具)」が無いと扇がバラバラになるため、「かなめ」は「物事をまとめる中心」「要点」を意味するようになりました。

14.金魚すくいの時に使う道具

金魚すくいのポイ

これは「ポイ」と言います。

「ポイ」の名前の由来については、①金魚をポイポイと掬うからという説と、②紙が破れたらポイッと捨てるからという説があります。

15.茶碗を乗せる小さい皿形の台

茶託

湯茶の入る茶碗の下に敷く受け皿のことを、「茶托(ちゃたく)」と言います。茶托は煎茶(せんちゃ)などを供するときに用いられます。

もっとも、茶を飲む時に絶対に必要なものというわけではないため、日常生活においては使われないこともあります。

逆に、客を接待する際には相手に対する敬意を表すための礼儀として用いられることが多いようです。

コースター

「コースター」との違いは、「コースター」は、冷たい飲み物を置く時に使用され、グラスの表面が結露し水滴が流れ落ちてテーブルが濡れるのを防いでくれます。

一方、「茶托」は、温かい飲み物を置くときに多く使用されます。茶托は保温性が高く、お茶が冷めてしまうのを防いでくれます。

ソーサー

紅茶やコーヒーなどを供するためのカップにも「ソーサー」と呼ばれるものがありますが、茶托とは起源が異なります。「ソーサー(saucer)」は、カップの下に置かれる受け皿のことで、洋食器では本来、マグカップを除く全てのカップにソーサーが付属します。

天目台

なお、抹茶(まっちゃ)を飲む茶碗には使いませんが、茶道では「天目台(てんもくだい)」という道具があります。なお「天目台」が、煎茶道では「茶托」に変化しました。