トランプ暴露本や黒人差別問題でトランプ大統領の再選に黄色信号点灯か?

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2020年アメリカ大統領選挙

2016年の大統領選挙では当初は「泡沫候補」に近い存在で、自分自身も当選するとは思っていなかった節もあるアメリカのトランプ大統領ですが、2020年11月の大統領選挙に勝利して2期目を目指す意欲満々のように見えます。

しかし、マティス国防長官やティラーソン国務長官、バノン上級顧問、マクマスター大統領補佐官などの閣僚・側近の辞任や解任が相次ぎ、つい最近ではトランプ大統領の無能さを暴露したボルトン元大統領補佐官の「ボルトン回顧録」という暴露本が出たり、黒人差別問題への白人至上主義的な対応が批判されたりして、共和党支持者の支持率も低下し、逆風が続いているように見えます。「トランプ暴露本」は初週で78万部の売り上げを記録し、100万部も視野に入っているそうです。

最近の世論調査(日本経済新聞2020年6月22日の記事)では、民主党の大統領候補のバイデン元副大統領支持率(50.1%)トランプ大統領支持率(41.3%)を上回っており、現職のトランプ大統領の再選確実とは言えない「黄色信号」の情勢です。

ツイッターでは、相変わらず強気な発言が続いているようですが、皆さんは気になることがありませんか?

それは、トランプ大統領に解任されたり辞任した元側近や元閣僚、トランプ大統領に批判的な共和党の有力議員らが「トランプ大統領に代わる共和党候補者をなぜ擁立しないのか?」ということです。

1.トランプ大統領に代わる共和党候補者はいないのか?

2020年米大統領選挙に共和党から立候補したのは、現職のトランプ大統領以外に4人いました。

ロッキー・デ・ラ・フェンテ(実業家)、マーク・サンフォード(元サウスカロライナ州知事、前サウスカロライナ州選出下院議員。2019年11月12日撤退)、ジョー・ウォルシュ(元イリノイ州選出下院議員。2020年2月7日撤退)、ウィリアム・ウェルド(元マサチューセッツ州知事。2020年3月18日撤退)ですが、3人がすでに撤退表明済みです。残っている一人は「泡沫候補」と見られます。

トランプ大統領に代わる共和党候補者がいないのは、有力な対抗馬がおらず党内予備選挙もないためです。2020年8月24日~27日の共和党全国党大会(ノースカロライナ州シャーロット)で、共和党の正式な正副大統領候補を指名しますが、大統領候補者にトランプ大統領が選ばれるのは確実な情勢です。

アメリカの大統領選挙は「現職有利」と言われています。アメリカの大統領の任期は4年で、最大2期まで務めることができます。

その結果、現職大統領が1期目を終えて次の選挙に臨む時は、「現職VS挑戦者」という構図になり、現職大統領にとっては実質的に「信任投票」になるのです。

「現職有利」の大きな理由は次のようなものです。

(1)「アメリカ大統領」という圧倒的な肩書と知名度

(2)党内予備選挙が無いため、早くから準備に取り組めること

(3)4年間の実績をアピールできること

それにしても、トランプ大統領を「無能呼ばわり」したりする元側近や元閣僚が多いのには驚かされます。腹いせもあるかもしれませんが、ある程度真実が含まれているように思います。

しかし「(敵対政党である)民主党のバイデン候補に投票する」と明言する黒人で共和党のパウエル元国務長官は、「黒人差別反対」という立場があるとはいえ、「敵に塩を送る」ような利敵行為を平気でするのは、真意を測りかねます。「共和党への裏切り行為」というか、「民主党への寝返り」のように見えますが、本人は「次の選挙には民主党から出馬すればよい」という節操のない考えなのでしょうか?

2.過去再選を果たせなかった3人の大統領

戦後に限っても、過去3人が再選を目指したものの1期目だけで大統領を退任しています。

(1)共和党フォード大統領(1976年)

フォード大統領は、もともとはニクソン大統領時代の副大統領でした。しかしニクソン大統領がウォーターゲート事件によって1974年に辞職しました。そのためフォードは「繰り上がり」で大統領になりました。

フォードは政治家としての評判は良かったのですが、オイルショックやベトナム戦争終結による経済不況が続き、共和党に対する不信感が強くなっていました。

その結果、1976年の大統領選挙で民主党のカーター候補に敗れ、再選できませんでした。

(2)民主党カーター大統領(1980年)

現職のフォード大統領に勝利し、戦後初めて現職に勝利した大統領になりました。就任当初こそ人気がありましたが、イラン革命やスリーマイル島原発事故など国内外の問題への対応の失敗が続きました。

そして、支持率急落のきっかけとなったのがイランアメリカ大使館人質事件です。イラン革命の結果、親米国家から反米国家となったイランでは、暴徒化した学生などがアメリカ大使館を占拠し、外交官やその家族を人質に立てこもる事件が発生したのです。

アメリカは軍事力による人質救出作戦を実施しますが失敗し、カーター大統領は強い批判を受けることになったのです。

そして1980年の大統領選挙で共和党のレーガン候補に惨敗しました。

(3)共和党ブッシュ(父)大統領(1992年)

いわゆる「パパ=ブッシュ」です。レーガン政権で副大統領を務めるなど政治家としてのキャリアは抜群でした。そして1988年の大統領選挙に出馬して見事に当選します。

任期中は、パナマ侵攻、冷戦終結、湾岸戦争と主に外交・軍事面で成果を上げました。特に湾岸戦争での圧勝で支持率は急上昇し、89%という歴代最高の支持率を記録しました。

しかし、湾岸戦争後にアメリカが景気後退期に入り、国民も10年以上続いた共和党政権からの変化を望む声が強くなり、1992年の大統領選挙で民主党のクリントン候補に敗れました。

3.トランプ大統領は再選されるか?

もともと歴代大統領の中でも支持率が低いトランプ大統領で、かつてはロシア疑惑、シャーロッツビル事件、モラー報告書、大統領弾劾裁判などさまざまな苦境に直面し、それらを乗り越えてきたものの、最近はコロナ対応での感染拡大阻止の失敗、黒人差別問題、ボルトン元大統領補佐官の暴露本、中国への再選支援依頼疑惑、コロナ禍による景気悪化など逆風が続いています。外交面でも米朝首脳会談を行ったものの北朝鮮の核開発は止められませんでした。

今年11月の大統領選挙の結果がどうなるのか、大いに注目したいと思います。