「宇宙ゴミ掃除をビジネスにする話」ダイスケ氏の小説と岡田光信氏のビジネス!

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宇宙ゴミ

<2022/7/28追記>中国製ロケットの大型ブースターがまたも地球に落下か?

7月24日、中国は長征5号Bロケットの打ち上げに成功し、建設中の天宮宇宙ステーションに設置される実験モジュール「問天」を送り出しました。

しかし、実験モジュールを軌道に乗せる大型ブースターロケットは、遠くない将来、「制御不能」な状態で地表に落下することになそうです。

簡単にいうと、23トンの10階建ての高さのロケットが、地球の上空を旋回しながら徐々に地表へと向かって落ちてきています。最終的には地表に衝突し、海洋その他遠隔の安全な場所に着地させるために操作する方法はありません。

天文学者のジョナサン・マクダウェルはTwitterで、第一段ロケットが軌道に到達したことを確認しました。これはつまり、ロケットに報告されていない設計変更がなされていない限り、今はただ漂流し、地球に落ちる待つばかりであることを意味しています。ロケットのエンジンに再点火することは不可能なので、安全な再突入軌道に誘導する方法はありません。

マクダウェルはさらに、ロケットは崩壊する可能性が高く、「過去の経験に基づくと、大量の長さ30メートルのデブリ(瓦礫)が時速数百キロメートルで地表に激突するだろう」と付け加えました。

これは中国の宇宙計画ではありふれた慣行になりつつあります。2021年5月にも同じタイプのロケットで同様のことが起こっています。そのときの打ち上げロケットは、最終的には海に落下しました。中国最大のロケットを2020年に打ち上げたときは、西アフリカにデブリの雨を降らせたが負傷者はありませんでした。

そしてわずか数カ月前の2022年4月、同じ長征ファミリーの小型ロケットが、制御不能のまま計画外の再突入を果たし、インドの一部にデブリを撒き散らしました。

重力の支配下にある制御不能な物体の残骸がどこへ行くかを予測することは極めて困難です。大ざっぱにいえば、宇宙デブリは赤道の南北41.5度あたりの地表に落ちます。これはロサンゼルス、ニューヨーク、シドニーなどいくつかの巨大都市が安全ではないことを意味しています。

それでも、落ちてくる「宇宙ゴミ」で人が怪我をする確率は無視できるほど小さいものです。わかっている限り、人類が軌道に何かを打ち上げてきた60年の間に起きたことはありません。

しかしながら現在、軌道にはかつてないほど大量の物体が存在しており、最近のある研究は10年の間に制御不能な再突入による犠牲者が出る確率は10%であると警告しています。

1.宇宙ゴミとは

世界各国が宇宙開発を進める中、ロケットや人工衛星の残骸である「スペースデブリ」(宇宙ゴミ)が大きな問題となっています。

現在、宇宙空間には、「人工衛星などの壊滅的破壊」につながる10cm以上の宇宙ゴミが2万個、「宇宙ミッションの終了」につながる1cm以上の宇宙ゴミが50万~70万個、「衛星の故障など」につながる1mm以上の宇宙ゴミが1億個以上存在すると考えられています。

余談ですが「宇宙ゴミの危険性を端的に説明するシミュレーションモデル」が「ケスラーシンドローム」です。提唱者の一人のNASAのケスラーにちなんで、こう呼ばれています。

いかに広大無辺の宇宙とは言え、「ゴミだらけ」というのが率直な感想です。今まで掃除をして来なかったのですから、当然と言えば当然ですが・・・

2.日本政府の取り組み

日本政府は、2019年3月に対策を検討する「関係省庁タスクフォース」を開始しました。宇宙ゴミ除去には、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のような宇宙機関だけでなく民間も参画し、「宇宙ゴミ除去サービス」を「日本発のビジネス」にするとともに、宇宙ゴミの除去で世界の宇宙利用を活発にすることを目指しています。

JAXAは、宇宙ゴミ除去システムの開発に向け、宇宙ゴミの観測や将来予測、衝突回避や除去などの研究開発を進めています。

その中で、川崎重工業(株)とともに、ロケットの上段を除去対象にした宇宙ゴミ除去サービスの技術実証を目指しています。

一方、民間や大学などが開発を進める小型衛星については、民間主導での宇宙ゴミ除去が進むと考えられています。「日本発の宇宙ベンチャー」である「アストロスケール社」(本社:シンガポール、社長:岡田光信氏)は、宇宙ゴミ除去実証衛星「ELSAーd(エルサディー)」の2020年初頭打ち上げを目指しています。

3.「宇宙ゴミ掃除をビジネスにする話」という小説を書いたダイスケ氏

「小説家になろう」に掲載されているオンライン小説(SF小説)です。

私はド素人なので詳しいことはよくわかりませんが、この小説では、「レーザー光線」で、宇宙ゴミ(デブリ)を掃除する構想、切手サイズの超小型軽量「ピコサット(切手衛星)」などの斬新な発想を具体的に描いています。

また、この小説では現行の軌道上のデブリの除去方法としては、大別して次の3種類があると紹介しています。①押し出す、②キャッチする、③キャッチして減速させる

「押し出す」方式の代表は「レーザー」で、かなり小さいデブリが対象です。

「キャッチする」方式は、ややサイズの大きいデブリが対象で、「ロボットアーム」「ネット」「磁石」「接着剤」などです。

「キャッチして減速させる」方式は、小さいデブリが対象で、「軌道上に気体や砂を撒く」「ゼリー状の物質を撒く」などです。

私は、小松左京のSF小説「日本沈没」も、発売当初は「科学的根拠が本当にあるのか?」と疑念を持って見ていましたが、阪神淡路大震災・東日本大震災・大阪北部地震などを経験すると、その考えを改めざるを得ませんでした。

このダイスケ氏の小説についても、私は現時点で適切な評価を下すことはできませんが、宇宙デブリについてかなり詳しく勉強しておられることはよくわかりました。ダイスケ氏は、本業を別に持っていて「副業」として小説を書く今流行の「ハンドメイド作家」なのでしょうか?

4.「宇宙ゴミ掃除」をビジネスにすることを本気で考える岡田光信氏

岡田光信氏(46歳)は東大農学部卒で、大蔵省主計局勤務のあと、マッキンゼーアンドカンパニーで経営コンサルタントを務め、独立して現在は「アストロスケール社」のCEOを務めています。

同社は、宇宙ゴミを除去することを目的とした宇宙ベンチャーです。

彼は15歳の時に、NASAのジュニアプログラムに参加しましたが、その時憧れの「日本人初の宇宙飛行士」の毛利衛さんから「宇宙は君達の活躍するところ」という手書きの激励メッセージをもらい、30年越しで「宇宙に関わる夢」を実現したわけです。

同社は、「漂う宇宙ゴミを衛星に付いた磁石で捕まえ、一緒に大気圏で燃やして宇宙ゴミを除去する技術」を開発したそうです。

5.「宇宙ゴミ掃除ビジネス」の難しさ

「宇宙ゴミ問題」はかねてから指摘されていますが、誰も手を付けていない「ブルーオーシャン」(競争のない未開拓市場)です。その原因は、以下のような難しい問題があるためです。

(1)宇宙ゴミを除去したことの「証明」と「検証」が困難

(2)どこの国の宇宙ゴミかの判別が困難(というよりも不可能)

(3)宇宙開発をしている国々(主に米ロ)から資金を集める以外は、商業化は困難

このような「宇宙ゴミ除去サービス」というか「宇宙ゴミ掃除プロジェクト」は、やはり、米中ロが先頭に立ってやるべき話だと思います。日本がシャカリキになる話ではありません。

いくら日本が真面目に取り組んでも、無責任なトランプ大統領や習近平主席、プーチン大統領は、植木等の「無責任男」よろしく、日本に対して「こつこつやる奴ぁ、ご苦労さん!」と言うだけでカネも人も出さないで、日本が馬鹿を見るだけに終わるような気がしてなりません。

6.宇宙開発競争の歴史

1960年代、アメリカのケネディ大統領(1917年~1963年、大統領在任期間:1961年~1963年)とソ連のフルシチョフ首相(1894年~1971年、首相在任期間:1953年~1964年)の時代、米ソの「宇宙開発競争」は熾烈を極めていました。

最初はソ連がリードしていました。「世界初の有人宇宙飛行」としてボストーク1号に単独搭乗したガガーリンは「地球は青かった」という名言を残しました。

一方、アメリカは1969年に、アームストロング船長ら3名の乗ったアポロ11号が「世界初の人類の月面着陸」に成功し、宇宙開発競争は頂点を迎えました。アームストロング船長は「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」(That’s one small step for a man,one giant leap for mankind.)との名言を残しました。この「月面着陸一番乗り」は故ケネディ大統領の悲願だったと言われています。

その後、1972年のアポロ計画終了により、「宇宙開発競争」は下火となっていましたが、世界の覇権を狙う中国が2019年1月に月の裏側への無人探査機着陸に成功させたことから、米中ロの宇宙開発競争が再燃してきたように見えます。

中国の習近平主席は地球上の覇権だけでは飽き足らず、宇宙をも征服しようとしているのでしょうか?月面に有人軍事基地を作って、月を不法占拠しようというのでしょうか?

そろそろ狂気じみた「宇宙開発競争」に終止符を打つべき時ではないでしょうか?


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