「縦割り110番」の取り組み姿勢に疑問

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縦割り110番

菅義偉首相は16日の就任後初の記者会見で、「国民が縦割り行政について情報提供できる『縦割り110番』の検討を河野太郎行政改革担当大臣に指示した」と明らかにしました。

首相は河野氏に「国民の皆さんからこんなことが現実に起きている、そうしたこと(情報)を参考にしたらどうだと指示した」と説明しました。

首相は「縦割り、既得権益、前例主義、こうした問題のあることについては、すべて河野大臣のところで対応する。私は規制改革をこの政権のど真ん中に置いている。これは大臣と首相でしっかりやっていきたい」と決意を述べました。

しかし、菅政権が打ち出したこの「縦割り110番」については疑問が多いと私は思います。

1.「国民の声を聞くというのは無責任な丸投げ

「国民の声を聞く」と言うと聞こえがいいですが、国民は「縦割り行政」の弊害や実態をよく知る立場にはありません。

せいぜい市役所や区役所の窓口での「連携の悪さ」「情報連絡・情報共有の不徹底」ぐらいが関の山ではないでしょうか?

国民の中で「縦割り110番」について具体的な提言が出来るとすれば、各省庁にまたがる許認可申請を必要とする業者など中央官庁と接点のある企業ぐらいではないかと思います。

2.縦割りの弊害を熟知しているのは「官邸」のはず

そもそも「縦割り、既得権益、前例主義の弊害」をよくわかっているのは、中央省庁に働く官僚たちですが、彼らは自分たちの官庁の縄張りや既得権益を守ることに汲々としているため、「内部告発のような縦割り110番に情報提供をするはずがありません

縦割りの弊害を熟知しているのはズバリ「官邸」のはずです。ですから「縦割り110番」というのは、「国民に丸投げする無責任なやり方」です。

3.首相官邸からまず「具体的な問題点を提示」すべき

7年8カ月も官房長官を務めて「縦割り行政の弊害を身を以て痛感している」菅首相がまず具体的な問題点を提示して、河野行革大臣に対策の検討を指示するのが筋です。

4.河野大臣から「それらの問題点を解決するための対策を熟考して提示」すべき

首相からの具体的な問題点の提示を受けて、河野行革大臣はそれを解決するための対策を熟考し、その結果を国民に提示するのが筋です。

「縦割り110番」に頼っているだけでは、「縦割り行政の弊害打破」は大して期待できません。いろいろと理屈をこねて「縦割り行政の弊害」の手の内を隠そうとする官僚に鋭く切り込んでいくのは、まさに河野大臣に期待される仕事です。

菅義偉首相が本気で「縦割り行政の弊害打破」を考えておられるのであれば、上に述べたような手順でまず「具体的な問題点」を国民の前に提示していただき、河野大臣が「実効性のある対策」を策定し、その突破力・破壊力で画期的な成果を挙げてほしいと思います。