日本語の面白い語源・由来(その2)面白い、面黒い、下らない、いただきます

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語源いただきます

前に「おもちゃ」などの語源についての記事を書きましたが、日本語の語源にはほかにも面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

1.面白い(おもしろい)

古語では「面白し」ですが、現代の「面白い」とほぼ同じ意味で使われていました。語源については、次の説が有力です。

「面」は目の前を意味し、「白い」は明るくはっきりしていることを意味します。そこから、目の前が明るくなった状態を指すようになり、目の前にある景色の美しさを指すようになります。

さらに転じて、「楽しい」や「心地よい」などの意味を持つようになり、明るい感情を表す言葉として広義に使われるようになったということです。

「昔、火を囲んで話をしていたところ、面白い話になると皆が一斉に顔を上げ、火に照らされた顔が白く浮かび上がったところから」という説もありますが、これは「面」と「白い」から作られた後世の俗説です。

2.面黒い(おもくろい)

これは「面白い」と「つまらない」の相反する両方の意味で使われた言葉です。

近世江戸の通人や職人は「面白い」という意味で使い、俳句や川柳では「つまらない」という意味で使われました。江戸時代の十返舎一九の滑稽本「東海道中膝栗毛」でも「こいつ面黒いと、かの下駄を履きて湯の中へ入り・・・」などと使われています。

「面白い」という意味の方は、「面白い」の「白」をもじって「黒」にし、「面白い」をしゃれているのです。「つまらない」という意味の方は、「白」を「黒」にすることで正反対の意味を表したもので、普通に考えられる表現です。

3.下らない(くだらない)

「下る」には、高い所から低い所へ移るという意味のほかに、通じるといった意味を示す場合があり、今でも排便が快調なことを「お通じがある」などと言いますし、腹を下すという表現もあります。それを「ない」で否定して、「意味がない」「筋が通らない」などの意味となり、「取るに足りない」の意味に転じたものです。

他には、上方から関東に送られる物を「下りもの」と言い、その中でも清酒は灘や伏見が本場であるため「下り酒」と呼ばれていました。反対に関東の酒は味が落ちるため「下らぬ酒」と言われ、まずい酒の代名詞となり、転じて現在の意味になったとする説があります。ただし、「下りもの」と呼ばれる以前から「下らぬ」という言葉は使われていたため、俗説です。

また、日本に農作を伝えたのは現在の朝鮮にあたる百済(くだら)の人々で、百済の人々を頭の良い人としていたため、頭が悪く話の通じない人を「百済ではない人」と呼び、略して「くだらない」となったとする説もあります。しかしこれは信憑性がないように私は思います。

さらに他の説では、仏教に「ダラ」という九つの教えがあり、その教えが一つもない行為を、「クダラがない行動」と言ったことから、「くだらない」に転じたとする説もあります。

私は仏教に詳しくないのでよくわかりませんが、「曼荼羅(まんだら)」「陀羅尼経(だらにきょう)」「補陀落渡海(ふだらくとかい)」などと関係があるのでしょうか?

4.いただきます

「いただきます」は、「食事を始める時の挨拶の言葉」や「物を買う時の言葉」です。

「いただき」は動詞の「頂く・戴く」の連用形です。山や頭の一番高い所を「頂(いただき)」(山頂、頭頂)と言うように、本来「いただく」は頭上に載せることを表す言葉です。

中世以降、上位の者から物をもらう際に、頭上に載せるような動作をしたことから、「いただく」に「もらう」という意味の謙譲用法が生じたのです。

やがて、上位の者からもらった物や神仏に供えた物を飲食する際にも、頭上に載せるような動作をして食事をしたことから、「飲食をする」という意味の謙譲用法が生まれ、食事を始める際の挨拶として「いただきます」と言うようになったのです。

ところで、英語には「食事を始める時に必ず言う挨拶の言葉」としての「いただきます」に相当する言葉はありません。「うわー、美味しそう!食べましょう!」(It looks delicious.Let’s eat!)(It looks very yummy.Let’s eat!)などと言って料理をほめることはあるようですが・・・

やはり日本人の「いただきます」には、「食事の提供者」や「農業・労働・調理に関わった人」への感謝の心が込められていると思います。そして、広くは「食材となった命への感謝」も含まれていると言ってもよいと思います。

「ごちそうさまでした」という「食事が終わった時に必ず言う挨拶の言葉」も、「いただきます」と同様に「食事の提供者」や「農業・労働・調理に関わった人」への感謝の心、「食材となった命への感謝」も含まれている日本語独特の言葉で、英語にはこれに相当する言葉はありません。