終活より「身を忙しく」する「老活」を勧める帚木蓬生氏の説は、目から鱗!

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老活夫婦写真

自分が元気なうちに自力で手回しよく人生を手仕舞いする準備をする「終活ブーム」が続いて久しいですが、一方で「人生100年時代」を迎えて「健康寿命」を延ばす努力が求められています。

そんな中、2019年11月に公開され話題になった映画「閉鎖病棟」の原作者の帚木蓬生(ははきぎほうせい)氏が2020年4月に出版した「老活の愉しみ」(朝日新書)は、私のような前期高齢者になった団塊世代には、大変示唆に富む本です。副題はズバリ「心と身体を100歳まで活躍させる」です。

1.「老活の愉しみ」とは

老活

不用品処分」「身辺整理・断捨離」「年賀状じまい」「墓じまい」「デジタル資産整理」「葬儀予約」などの「終活」が私のような前期高齢者には身近な問題として感じられる昨今ですが、帚木蓬生氏は、「終活なんて死んだ後で十分」と待ったをかけています。

健康寿命を長くして「不健康期間」を短くし、老いてなお積極的に活動して「100歳現役」をめざす「老活(ろうかつ/おいかつ)」を勧めています。

そのために「身を忙しくする」ことを勧めています。

「外相整えば内相おのずから熟す」これは彼が傾倒する明治・大正の医学者で精神科医の森田正馬氏(1874年~1938年)の教えです。

意味は「内相、つまり心の内は見えないし、心には東西南北も上下もないので、操作しようと思っても難しい。実際に操作できるのは外相、すなわち体であり、行動である。考えすぎて動かないより、行動しているうちに心の方も整ってくる」と言う考え方です。

森田氏は自らも神経質に悩んだ経験を持っており、神経質に対する精神療法として有名な「森田療法」の創始者でもあります。

私は「老い支度」としての「終活」も必要だと思いますが、それに比重がかかり過ぎると、暗い気持ちになって心の不調を招きかねないように思います。やはり「体を動かすこと」は欠かせません。

NHKBSプレミアムの「偉人たちの健康診断」という番組で、永井荷風を取り上げた時、「荷風に学ぶ!長生きする老後生活3か条」が紹介されていましたが、その中の一つに「老後は『キョウイク』と『キョウヨウ』が大事」というのがありました。

これは「教育」と「教養」という意味ではなく、「今日行く」と「今日用」のことです。「今日行くところ」があり、「今日する用事」があることが大切だというわけです。これも「老活」に通じるものだと思います。

2.「老活」とは

「老活」は、帚木蓬生氏が初めて使った言葉ではないようですが、最近使われ出した言葉です。元NHKの名物アナウンサーの鈴木健二氏は2013年に「老活のすすめ」(PHP研究所)を書いていますし、老活を行うためのマニュアルも多数出回っているようです。

Wikipediaにはよれば、老活とは「人間が老後になってから行うことが好ましいとされる活動」または「素晴らしい老後が過ごせるための活動」のことです。

「終活」という言葉が2009年に生まれ、2010年には「新語・流行語大賞」にもノミネートされ、今日のようなブームになるまで広まっていきました。「老活」という言葉も2009年のある人のTwitterに出ていますので、終活という言葉と同時期に誕生したようです。

就活、婚活、って言葉がなるなら、老活、死活ってのもあるのかな?一生活動って嫌だな。。。仮の〆切に追われてあくせくする感じ、しかし、それも現実。。。

3.帚木蓬生氏とは

帚木蓬生

帚木蓬生(本名:森山成彬)氏(1947年~ )は、福岡県出身の小説家で、精神科医でもあります。東京大学文学部仏文科を卒業後、TBSに入社しますが2年で退社し、九州大学医学部に入り直して医者になり、小説も書くようになった変わり種です。彼も団塊世代です。

ペンネームの由来は、「源氏物語」五十四帖の巻名「帚木(ははきぎ)」と「蓬生(よもぎう)」からです。

福岡県中間市で精神科・心療内科医院を開業し、開業医として勤務しながら執筆活動を続けています。医療にかかわる作品も多く、私は認知症患者を扱った「安楽病棟」も読みました。この小説は「安楽死」についての問題提起をしています。