イェール大の入学選考でアジア系と白人が人種を理由に黒人と「逆差別」される怪

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イェール大学

<2021/3/22追記>欧米人のアジア人に対する差別意識が根強いことを示す事件が発生

一時白人警官による黒人容疑者射殺事件や絞殺事件を契機として「黒人差別反対運動」のスローガン「Black Lives Matter」が声高に叫ばれました。

しかし最近アメリカジョージア州で、アジア系女性ら8人が白人の男に銃撃され死亡する事件が発生しました。これは、「欧米人のアジア人に対する差別意識が根強い」ことを示す象徴的な事件のように私は思います。

アメリカの名門大学の一つのイェール大学の入学選考で、「アジア系アメリカ人」と「白人」が「人種を理由に差別を受けていた」とアメリカ司法省が認定したとの報道がありました。

アメリカ司法省は2020/8/13、イェール大学の入学選考をめぐる調査結果を発表し、大学側が法律に違反して人種や民族的ルーツを理由に志願者を差別し、「学生の人種の構成比率を調整していた」と認定しました。

学業成績が同じ場合、合格する可能性は黒人と比べて1/10~1/4しかなかったそうです。これは人種を理由とする「逆差別」と言っても過言ではないと思います。

ちなみに、アメリカ司法省は、2018年8月にも、ハーバード大学の入学選考でのアジア系アメリカ人(中国出身のジョーン・シェン氏の長男)に対する差別を認定しています。訴えたのはNPO「公平な入学選考を求める学生たち」(SFFA)です。

ただしボストンの連邦地裁は、2019年10月に「人種に基づくいかなる悪意の証拠もなかった」との判決を出しています。

1.アメリカ司法省が調査に乗り出した理由

「アジア系アメリカ人で作る団体」が、アメリカの大学の入学選考をめぐって、「学業成績ではアジア系の志願者の得点が高いにもかかわらず、人物評価の面で人種を理由に低い評価を受けている」と訴え、司法省が2年前から調査を行っていたものです。

2、イェール大学が学生の人種の構成比率を調整していた理由(推測)

2018年に、東京医大が「入試で女子の得点を一律に減らし、男子の合格者が7割以上になるように操作していた」問題が発覚しましたが、同様の不正操作と思われます。

これについては、当事者でないので推測の域を出ませんが次のような理由ではないかと思います。

(1)「積極的差別是正措置」(米:affirmative action / 英:positive discrimination )

積極的差別是正措置」とは、「少数派の人種や女性など歴史的・社会的に不利な処遇を受けて来た集団を優遇することで、状況を改善する措置」のことです。

アメリカでは1961年に、ケネディ大統領が連邦事業受注者の人種差別を禁じる大統領令を出したのが最初です。

その後、「少数派人種の優遇枠として導入が進みましたが、「白人への逆差別」との批判が出て、入学選考をめぐる1978年の連邦最高裁判決で、「人種枠設定は違憲」とされました。ただし、「同レベルの候補者がいる場合に人種を考慮することは認める」という不徹底で中途半端なものでした。

このように、アメリカの大学では「人種枠の設定」は違憲ですが、「選考で人種を考慮することは認められている」ため、「実質的に人種枠がある状態」となっているようです。

「SFFA」によると、総じてアジア系アメリカ人は「大学進学適性試験」(SAT)で好成績を収める傾向があり、アジア系の大学受験者は増えているのに、2006年~2014年の合格者に占めるアジア系の割合は、18~20%とほぼ一定だと指摘しています。他人種の割合も変化がなく、実質的に人種枠があると追及しています。

(2)「黒人差別に反対する団体」からの圧力と「レピュテーションリスク」

アメリカでは以前から根強い「黒人差別」が続いており、つい最近も白人警官の必要以上の暴行によって黒人容疑者が死亡する事件が起き、「Black Lives Matter(通称:BLM)」(黒人の命は大切)という非暴力的な市民的不服従を唱える団体を中心に大規模な抗議行動がありました。

このような社会風潮の中で、近年急速に台頭してきた多くのアジア系アメリカ人の成績優秀者によって、大学の合格者に占める黒人の割合が急低下すれば、これに対する反発や抗議が強まり、「レピュテーションリスク」が高まると考えたのではないでしょうか?

(3)「黒人差別に反対する団体」からの寄付

日本の東京医大の裏口入学問題のような、イェール大学教授と黒人志願者の保護者との間で不正な金のやり取りがあったとすれば大問題ですが、黒人差別に反対する団体から大学への多額の寄付などがあったのではないでしょうか

(4)欧米人のアジア人に対する根強い差別意識

①黄禍論

「黄禍論」とは、「黄色人種脅威論」とも呼ばれる人種差別の一種で、19世紀後半から20世紀前半にかけて、ヨーロッパ・北アメリカ・オーストラリアなどの白人国家において現れました。

日清戦争における日本による中国大陸への軍事的進出をきっかけにして、同様に中国大陸に進出していたロシア・ドイツ・フランスに広まった政策思想です。

今は韓国人も対象になっているかもしれませんが、近代の黄禍論の主な対象は中国人と日本人でした。アメリカで1882年に制定された排華移民法、1924年に制定された排日移民法などはその表れです。

ちなみに岡倉天心(1863年~1913年)は、その英字論文で「White Disaster(白禍)」という言葉を挙げ、「軍隊とキリスト教の宣教活動を伴った西洋の帝国主義が他国の生活文化を侵蝕している」と喝破しています。

これはヨーロッパでも読まれ、日本でも「東洋の覚醒(日本の覚醒)」として出版されています。

②スポーツにおける日本人に対する差別

日本人が良い成績を出すようになると、必ずと言っていいほど「日本人に不利になるようなルール改定」が行われて来ました。

「人種の坩堝(るつぼ)」と呼ばれるアメリカでは、人種問題は「黒人差別」だけでなく「アジア人差別」もあり、「白人逆差別」、「行き過ぎた黒人優遇」の問題もあるということです。

今後は日本人も、中国人や韓国人と同様に「アメリカにおけるアジア人に対する根強い差別」に反対する立場を明確にしていくべきだと思います。