中島みゆきの「永久欠番」は「方丈記」の「無常観」への反発か?

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中島みゆき

中島みゆき(1952年~ )には、「一期一会」「糸」「時代」「地上の星」「永久欠番」などのように、他のシンガーソングライターとは一味も二味も違った「生と死」や「人生を深く考えさせる歌」が多いように思います。

1.鴨長明の「方丈記」は「無常観の文学」

鴨長明の「方丈記」は、「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし」の書き出しで移り行くもののはかなさを語った後、同時代の災厄についての記述が続き、後半には自らの草庵での生活が語られています。

さらに末尾では草庵の生活に愛着を抱くことさえも悟りへの妨げとして否定しています。

一言で言えば「方丈記」は「無常観の文学」です。 

2.中島みゆきの「永久欠番」は無常観を撥ね退ける「生への執着」

対して中島みゆきの『永久欠番』も「街は回ってゆく 人1人消えた日も 何も変わる様子もなく 忙しく忙しく先へと かけがえのないものなどいないと風は吹く」というように無常観を歌っています。
しかし「方丈記」が無常であるからと執着を否定するのに対し「永久欠番」は「100億の人々が忘れても 見捨てても 宇宙の掌の中 人は永久欠番」と変化する中で消えていった人も唯一無二の存在であると執着を肯定しているところに相違があります。

「無常観」もあると思いますが、それを撥ね退けるような力強い前向きな「生への執着」が感じられます。

この「永久欠番」は「人は誰しも唯一無二の存在である」ということをテーマにした曲ですが、東京書籍発行の中学校用教科書「新しい国語3」に引用されているそうです。

槇原敬之の作詞・作曲でSMAPが歌って大ヒットした「世界に一つだけの花」も、この「永久欠番」からヒントを得たのかもしれません。

3.中島みゆきの歌の特色

世の中の男や女、働く人々などにスポットライトを当てて、その心情を巧みな比喩で表現しています。

また、仏教という宗教色はありませんが、「宇宙」「因縁」「輪廻」「無常観」「生と死」などを想起させる「人生を深く考えさせる歌」が多いのが特色ですね。

私などは「父母未生以前本来の面目は何か」という禅の公案を思い出します。

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