東京五輪2020は、「小池都知事と森組織委員会会長との経費負担や会場問題をめぐる確執」「JOCの竹田元会長の贈賄騒動」「桜田義孝五輪担当大臣の失言による辞任」「新国立競技場の設計やり直し」「大会エンブレムの選定やり直し」「1年延期決定」「森組織委員会会長の女性蔑視発言による辞任」「橋本新会長の過去のセクハラ問題」「大会ボランティアの辞退」「聖火リレーランナーの辞退」「島根県知事による聖火リレー中止発言」「全日本柔道連盟幹部によるパワハラ問題での山下JOC会長の謝罪」など何かとゴタゴタ続きでギクシャクして来ました。
そして東京オリンピック開幕まで4ヵ月余りとなった時点で、今度は「東京オリンピック・パラリンピック開閉会式の企画・演出の統括役の佐々木宏氏の辞任」という事態が起きました。
麻生副総理兼財務大臣がいみじくも「呪われた五輪」と発言し物議を醸しましたが、そう言われてもおかしくない状況になって来ました。
1.開閉会式の企画・演出の統括役の辞任は4度目
開閉会式の企画・演出の統括役の辞任は、佐々木宏氏が初めてではありません。組織委員会は2017年12月に企画・演出チームのメンバー8人を発表しました。当初は映画監督の山崎貴氏が中心的役割を担うと見られていましたが、まとまりを欠き、2018年7月に狂言師の野村萬斎氏を総合統括とし、山崎氏を五輪、クリエイティブディレクターの佐々木氏をパラの担当に据える体制にしました。しかしそれでも「軋轢」が生じていたようです。
これまで公表されてきませんでしたが、2019年には実質的な五輪の仕切り役は「執行責任者」に就いた振付家のMIKIKO氏へと再度変更しました。
2020年1月には演出チームのクリエイティブディレクターの菅野薫氏が所属する電通内でのパワハラ行為で懲戒処分を受けた問題で辞任しました。
2020年3月に新型コロナウイルス禍で大会が1年延期になると、今度は森氏の信頼が厚かった佐々木宏氏が五輪とパラの両方を見る形へと移行しました。そこでMIKIKO氏は組織委員会に辞意を伝え、昨年12月にチームはついに解散しました。結局佐々木氏に意思決定が一本化されることになったのですが、昨年3月の「演出グループ内での意見を出し合うLINEでの思い付きの提案」が、「タレントの渡辺直美さんの体型などの容姿を侮辱するようなメッセージだった」と今回「文春オンライン」によって報じられ、引責辞任に追い込まれました。
しかも、彼のこの提案はグループ内で否定され、撤回されたものでした。
2.今回の佐々木氏の引責辞任の真相とは?
1年以上も前の「演出グループ内での内輪の意見交換」の件がこの時期に出てきたのは、演出グループ内で佐々木氏に反感を持つ人物が文春にリークした(秘密を洩らした)としか考えられません。
これは「演出家同士の権力争い」のようなものです。それに「スクープが欲しい文春が乗った」というのが真相でしょう。
佐々木宏氏は優れた演出家だと思います。東京五輪開幕まで1年となった2020年7月23日、大会組織委員会は午後8時から開会式会場の国立競技場で「一年後へ。一歩進む。~+1メッセージ~TOKYO2020」と題するセレモニーを実施し、白血病からの復活を期す競泳女子の池江璃花子さんが世界へ向けてメッセージを発信しましたが、この演出も佐々木氏でした。
そしてマスコミは渡辺直美さんの次のようなコメントを絶賛しました。
表に出る立場の渡辺直美として、体が大きいと言われる事も事実ですし、見た目を揶揄されることも重々理解した上でお仕事をさせていただいております。実際、私自身は、この体型で幸せです。なので今まで通り太っている事だけにこだわらず、『渡辺直美』として表現していきたい所存でございます。しかし、ひとりの人間として思うのは、それぞれの個性や考え方を尊重し、認め合える、楽しく豊かな世界になれる事を心より願っております。
これは、「東京五輪に否定的で、できれば実施を阻止したい勢力」や「人権保護運動家」、「女性運動家」などが「自分たちに都合の良い問題にすり替えている」のではないでしょうか?
3.今の日本社会はマスコミに振り回されて「不寛容社会」に陥っている
アイデアを忌憚なく出し合うグループ内での議論も、オフレコではなく批判の対象になるのであれば、自由にものが言えない窮屈な場となり、当たり障りのないつまらない平凡な案しか出て来ない結果となるでしょう。
そして、「文春オンライン」や「文春砲」が「ペンの力(ペンの暴力?)」によって、権力者やトップを引きずり下ろすのは、国民大衆には一見胸のすくような痛快さを感じさせますが、大局的に見て国民の利益になっているのかは、疑問があります。
我々国民は「物事の本質」をよく見極める必要があり、いたずらにマスコミに振り回されるべきではないと思います。