私は今年72歳を迎える団塊世代です。私たちは人生の半分以上にあたる40年間を「昭和時代」に生きてきました。
そのため、歌について言えば「昭和歌謡」にどっぷり漬かっていた世代です。
1970年代ころからは自ら作詞・作曲する「シンガーソングライター」が多くなりましたが、それ以前はプロの「作詞家」「作曲家」によって多くの昭和歌謡が作られて来ました。
BSテレ東で毎週金曜夜8時から放送されている「武田鉄矢の昭和は輝いていた」という昭和歌謡の紹介番組があり、私も時々見ています。
ところで最近、「昭和歌謡のカバー」が盛んに行われたり、あいみょんがココアシガレットという「昭和の駄菓子」を手に持った写真をインスタグラムに投稿したところ、ココアシガレットの人気が再燃するなど「昭和が見直されている(昭和再評価?)」ように感じます。
今や「昭和もレトロ感覚」になったのかもしれませんね。
1.昭和歌謡の人気復活
(1)昭和歌謡のカバーが大人気
女優の橋本愛がYouTube「THE FIRST TAKE」で歌った太田裕美の「木綿のハンカチーフ」のカバーは、昨年のクリスマスの投稿後、歌声と表現力が多くの人々の心に響き、今年2月時点で260万回再生を超える大反響を呼びました。
3月24日リリースのトリビュートアルバム「筒美京平SONG BOOK」に収録されるそうです。
2月19日の「ミュージックステーション 恋うた3時間スペシャル」でも披露して大変話題となりました。
この曲は1番から4番までの歌詞で、恋人との哀しい別れのドラマを見事に表現していることも人気の秘密なのでしょう。
このほかにも「昭和歌謡のカバー」が大人気となっています。
昭和歌謡のカバーベスト10の曲名とカバー回数は次の通りです。
①坂本九の「見上げてごらん夜の星を」(176回)
②中島みゆきの「糸」(87回)
②かぐや姫の「なごり雪」(87回)
④荒井由実の「やさしさに包まれたなら」(84回)
⑤美空ひばりの「川の流れのように」(77回)
⑥荒井由実の「ひこうき雲」(68回)
⑥久保田早紀の「異邦人」(68回)
⑧松田聖子の「赤いスイートピー」(65回)
⑨荒井由実の「卒業写真」(61回)
⑩喜納昌吉の「花~すべての人の心に花を~」(60回)
(2)「武田鉄矢の昭和は輝いていた」というテレビ番組
これは昭和時代を扱う「歴史情報番組」です。
激動の昭和時代を象徴する「人」「モノ」「できごと」から、毎回一つのテーマをピックアップし、当時の映像や写真とともに関係者とのスタジオトークで昭和の魅力を発掘するものです。
歌謡曲特集が比較的多く組まれ、2~3時間スペシャルも頻繁に放送されています。
今や「昭和は遠くなりにけり」で昭和時代を知らない平成生まれの世代も多くなりました。かつては「戦争を知らない子供たち」と呼ばれた私たちのような世代が「昭和の語り部」になったような感があります。
(3)プロの作詞家・作曲家が作り上げた「昭和歌謡」
最近の歌は「テンポが速い」上に、「歌詞が意味不明(ないし聞き取れない)」ものが多いですが、昭和歌謡は人の心を揺さぶるようなドラマ性のある歌詞が多かったように思います。
それは偏(ひとえ)にプロの作詞家・作曲家が作り上げたものだったからではないかと思います。もちろん中には、マンネリズムを感じさせるような歌もありましたが・・・
作詞家としては、星野哲郎や阿久悠が代表です。作曲家としては、古賀政男・遠藤実・市川昭介・船村徹・三木たかしなどがいます。
(4)昭和時代のシンガーソングライターの歌
①小椋佳
銀行員との二足の草鞋で活躍した彼は「シクラメンのかほり」が大ヒットしましたが、美空ひばりに提供した「愛燦燦」や、梅沢富美男に提供した「夢芝居」も名曲です。
②谷村新司
元アリスのメンバーですが、ソロ活動の一環として発表した「昴」は彼の代表曲です。山口百恵に提供した「いい日旅立ち」も良い曲です。
③河島英五
彼は48歳の若さで亡くなりましたが、「酒と泪と男と女」や「時代おくれ」はなかなかの名曲です。彼は男の強さや哀しさ、優しさ、父親としての心情を見事に歌いあげました。
私は、彼が「高槻まつり」のゲストで来て、小学校のグラウンドで「酒と泪と男と女」を熱唱するのを見ましたが、その後ほどなくして亡くなりました。
2.あいみょんの「ココアシガレット」写真投稿
若者の「昭和レトロブーム」は、富士フイルムの使い捨てカメラ「写ルンです」が皮切りとなって爆発的に広まったようです。樹木希林さんのテレビCMが懐かしいですね。
若手のシンガーソングライターのあいみょん(1995年~ )が、昔懐かしい駄菓子である「ココアシガレット」(オリオンの看板商品で、70年のロングセラー)を右手に持った写真を、2019年2月にインスタグラムに投稿したところ、ココアシガレットの人気が再燃したそうです。
私のような団塊世代にはとても懐かしい駄菓子ですが、彼女にとっては、「レトロ感覚でかわいい」と感じたのか、あるいは「今までに見たこともない面白いもの」だったのかもしれません。
ネット上には、「ココアシガレットなつかしい」「あったなあこの駄菓子」「タバコかと思った」「ココアシガレット? おしゃれ」など、昭和世代から平成生まれの若者にまで反響が広がって同商品は再ブレイクし、一時は品薄状態になったそうです。
オリオン社は、今年春には「ココアシガレットアイスバー」という新商品を発売するそうです。
最近の若者が「昭和レトロ」に魅力を感じる気持ちを表す若者言葉は、「エモい」だそうです。これは、「エモーショナル(emotional)」に由来する「感情が動かされた状態」「感情が高まって強く訴えかける心の動き」を意味しています。
「不便なもの」や「時間をかけること」に魅力を感じるようです。私などは「麦飯」や「サバの缶詰」を嫌というほど食べさせられ、不便で貧しい昭和時代にどっぷり漬かって生きてきたので、「ノスタルジー(郷愁)」は感じますが、「不便で貧しい時代にはもう戻れない」というのが正直な気持ちです。
3.「昭和スポット巡り」というブログ
昭和中期の暮らしぶりを再現した自宅「昭和住宅資料館」を紹介したり、全国各地の昭和が体感できるスポットを探し求め、その写真を紹介しレポートする平山雄氏のユニークなブログ「昭和スポット巡り」があります。平山氏は1968年(昭和43年)生まれです。
我々団塊世代以上に「昭和愛」の強い方のようです。確かに昭和のものは、レコードにしても何にしても「温(ぬく)もり」というか「癒されるような懐かしさを覚える温かみ」があったように思います。
今では少なくなった「純喫茶」に香る「昭和レトロ」は、2000年代生まれの「Z世代」には新鮮で、非日常の魅力を感じるようです。