「育英資金」の現状と問題点をわかりやすくご紹介します

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あしながおじさん

1.日本の奨学金制度

成績優秀ながら、経済的な理由から修学が困難な学生に奨学金を貸与するために、1943年(昭和18年)に「大日本育英会」(後の「日本育英会」で、現在は他の育英会と合併し「独立行政法人日本学生支援機構」となっています)が作られました。いわゆる「奨学金制度」の一つです。

2.アメリカの奨学金制度

私の高校の同級生の中に、AFSという奨学金制度を利用してアメリカに1年間留学した女生徒がいました。このAFSは、世界大戦中に傷病兵の救護輸送に携わったアメリカのボランティア組織「American Field Service(アメリカ野戦奉仕団)」の活動に起源を持っています。

また、私が学んだ大学には、終戦後間もない頃に「フルブライト留学生」としてアメリカに留学した経験を持つ教授がいました。この「フルブライト奨学金」は、1946年にフルブライト上院議員によって、「世界各国の相互理解を高める」目的で設立されたものです。

3.日本育英会の奨学金制度の問題点

私が大学生の1970年前後は、授業料が安かった(国立大学の場合、年間12,000円)からかも知れませんが、奨学金を受けている苦学生は、少なかったように思います。「奨学金受給者率(大学昼間部)統計」によると、1992年度は22.4%でしたが、2016年度には48.9%と約半分に達しています。

現在、日本で問題になっているのは、「日本育英会」から奨学金を借りた人が、奨学金の返済が出来ず、「延滞が急増」していることです。

「奨学金は返済不要」と思っていた人も多かったのではないでしょうか?私も、この問題が表面化するまでは漠然とそう思っていました。実際、諸外国の「奨学金」は、通常「給付」(返済不要)ですが、日本の「奨学金」は、ほとんどが「貸与」(返済必要)だそうです。

「延滞急増」の第一の原因は、学費の高騰です。1970年ころは、国立大学の年間授業料は、12,000円でした。それが2016年には535,800円となっています。インフレ率をはるかに超える高騰です。

次に、かつての高度成長期と違って、現在は「正規雇用」の正社員が減って「非正規雇用」の契約社員・派遣社員・パート・アルバイトなどが多くなりました。そして、インフレ率はかつてほどではなくデフレが長く続きましたが、その代わり賃金の上昇も望み薄です。

奨学金の返済延滞で「自己破産」した人が「大学に行ったことを後悔している」と話しているとの記事を読んだことがあります。2016年度までの5年間で、約15,000人が「自己破産」したそうです。

そこで、2014年4月からは、年収200万円以下の場合には、延滞があっても「返済猶予」が認められるようになりました。

また、2018年度から一定の「厳格な条件」のもとに、「給付型奨学金」が実施されることになりましたが、基本は依然として「貸与型奨学金」です。

「ローン地獄」や「カード地獄」と同様な「奨学金返済地獄」をこれ以上増やさないために、「貸与型奨学金の無利子制度」の検討など、制度の改善を早急に実現してほしいものです。

2019年5月に、低所得世帯を対象に、大学など高等教育を無償化する「大学等修学支援法」が成立し、2020年4月から「授業料の減免ならびに返済不要の給付型奨学金支給」が実現することになりました。文部科学省は約75万人が支援を受けられると見込んでいます。

4.国立大学授業料の高騰問題

それにしても、今の国立大学の授業料は高過ぎます。他の私立大学に合わせてどんどん値上げしたのかも知れませんが、異常な高騰です。独立行政法人である「国立大学法人」にも、ぜひご検討をお願いしたいと思います。

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