君子はなぜ「豹変」するのか?なぜ「豹」なのか?漢字の成り立ちから読み解く

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君子豹変

主張や態度が急にがらりと変わることを「君子豹変」あるいは「豹変する」とよく言いますが、なぜ「君子は豹変する」のでしょうか?

また、なぜ「豹」という動物の漢字が使われているのでしょうか?

草原の豹

今回は「豹」という漢字の成り立ちから読み解いていきたいと思います。

1.「君子豹変」とは

「君子豹変」とは、「君子が世の中の変化を察知してすばやく自分を変えていける、つまり過ちを犯しても改めて善に戻ることができるのは、ひょうの皮のまだら模様のように非常にはっきりしているということ」です。転じて、現在では「(要領の良い人は)主張や態度が急にがらりと変わること」を言います。また、その「無節操ぶりを非難する言葉」です。

「君子」は教養や徳の高い立派な人、人格者のこと。「豹変」は豹の毛が季節の変化に応じて抜け変わり、季節によってひょうの斑文(まだら模様)が美しくなることから、君子も時代の変化に応じて自分を迅速かつ的確に変えていくべきだというのが本来の意味で、転じて主張や態度などが急に変わることを言います。

儒学の経典「易経」に「君子豹変す、小人は面 (つら/おもて)を革 (あらた)む 」とあります。

「君子は時の変わるのに応じて自分の誤りはきっぱり改め、豹の毛皮が秋に一変し、紋様が移り変わるようにする。小人はそういうときは、表面的に態度を改め、君子の言うとおりに従えばよい。」という意味です。

後段については、「小人とよばれる人物は、物事の本質・真相が理解できないため、うわっつらだけを改め、表面だけを変化させる」という解釈もあります。こちらの方が説得力があるように私は思います。

幕末から明治にかけてや、太平洋戦争の戦前と戦後にかけて、要領よく「君子豹変」して成功した人もいましたが、従来の体制や考え方に「洗脳」されてしまってその呪縛から脱却できず旧体制に殉じて、時代の変化に置き去りにされた人もたくさんいたことでしょう。

「豹変」した人が果たして「君子」だったのか、私には疑問が残ります。

2.「豹」という漢字の成り立ち

豹という漢字の成り立ち

「豹」は「会意文字」(豸+勺)です。

「獣が背を丸くして獲物に襲いかかろうとする」象形と「物をすくい取ったひしゃく」の象形(「掬う」の意味ですが、ここでは「明らか」の意味)から、「黒くて丸い、はっきりした模様が飛び散っているひょう」を意味する「豹」という漢字が成り立ちました。

「豹変」に「豹」という動物の漢字が使われているのは、「豹」には黒くて丸い、はっきりした模様が飛び散っており、それが季節に応じて毛が抜け変わり鮮やかになるからだったのです。

余談ですが、島国の日本では、獰猛な獣といってもせいぜい「熊」「狼」「猪」くらいです。しかし中国は大陸だけあってアフリカだけでなく中央アジア・東南アジアにも生息する「豹」や「虎(ベンガル虎)」もいたのです。秀吉の朝鮮出兵(文禄・慶長の役)の時の加藤清正の「虎退治」の話もあるように、朝鮮半島にも虎がいました。

3.「彪」という漢字の成り立ち

彪という漢字の成り立ち

ところで、「豹」と同じ音の「彪」という漢字があります。

この「彪」は、「豹」という動物を指すのではなく、「の皮の模様、まだら模様」のことです。

「彪」は「会意文字」(虎+彡)です。「とら」の象形と「長く流れる豊かで艶やかな毛」の象形から、「虎の毛・皮の模様」を意味する「彪」という漢字が成り立ちました。

私などは「彪」という漢字を見ると、「林彪」(*)という中国の政治家の名前を思い出します。

(*)林彪(りんぴょう)(1907年~1971年)は毛沢東の軍師で、文化大革命において多くの軍幹部を失脚に追い込み、毛沢東の後継者に指名されていましたが「毛沢東暗殺計画」が露見し、ソ連へ亡命する途中、モンゴル上空で乗っていた飛行機が墜落して謎の死を遂げました。

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