ドイツ語由来の「外来語」(その3:サ行)ザイル・シャーレ・シュプレヒコール・ゼミナール・ゾル他

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ザイル

古来日本人は、中国から「漢語」を輸入して日本語化したのをはじめ、室町時代から江戸時代にかけてはポルトガル語やオランダ語由来の「外来語」がたくさん出来ました。

幕末から明治維新にかけては、鉄道用語はイギリス英語、医学用語はドイツ語、芸術・料理・服飾用語はフランス語由来の「外来語」がたくさん使われるようになりました。

日本語に翻訳した「和製漢語」も多く作られましたが、そのまま日本語として定着した言葉もあります。たとえば「科学」「郵便」「自由」「観念」「福祉」「革命」「意識」「右翼」「運動」「階級」「共産主義」「共和」「左翼」「失恋」「進化」「接吻」「唯物論」「人民」などです。

ドイツ語由来の外来語(ドイツ語から日本語への借用語)は、江戸時代は蘭学を通して、明治時代は欧米列強の近代的な技術を取り入れる過程で日本へ伝わり、日本語として定着しました。日本語になった単語の分野は、法学、医学、化学、物理学から、音楽、登山、スキーまで多岐にわたります。

そこで今回は、日本語として定着した(日本語になった)ドイツ語由来の「外来語」(その3:サ行)をご紹介します。

1.ザイル(Seil)

「ザイル」は、登山用のロープのことです。

岩壁や氷雪上の登降、その他墜落やスリップの危険のある悪場において、パーティの安全を確保するために互いの体を結び合います(アンザイレン)。

第二次世界大戦前は大麻・マニラ麻製の2種でしたが、1950年ころからナイロン製・テトロン製が多く用いられるようになりました。長さは30〜40mのものが多いようです。

ザイルの利用により,オーバーハングなどの「ロッククライミング」(岩登り)や氷壁登攀(とうはん)は大きく前進しました。

2.シャーレ(Schale)

「シャーレ」はドイツ語で「皿」を意味するSchaleに由来します。ドイツの細菌学者ペトリ(Julius Richard Petri)が発明したので「ペトリ皿」とも呼ばれています。

3.シュッツシュタッフェル(Schutzstaffel)

「シュッツシュタッフェル」(略号:SS)は、ドイツの政党「国民社会主義ドイツ労働者党」の組織であり、主に第一次世界大戦時の将校や指揮官などの退役軍人で構成されていました。

いわゆる「ナチスの親衛隊」のことで、総統アドルフ・ヒトラーを護衛する党内組織(親衛隊)として1925年に創設されました。ドイツ語でSchutzが「護衛」「防護」、Staffelが「梯団」「梯隊」を意味します。

4.シュトルム・ウント・ドランク(Sturm und Drang)

「シュトゥルム・ウント・ドランク」 とは、18世紀後半にドイツで見られた革新的な文学運動です。

この名称は、ドイツの劇作家であるフリードリヒ・マクシミリアン・クリンガーが1776年に書いた同名の戯曲に由来しています。時期は、1767年から1785年までとする見方が多いですが、1769年から1786年、もしくは1765年から1795年とする見方もあります。

古典主義や啓蒙主義に異議を唱え、「理性に対する感情の優越」を主張し、後のロマン主義へとつながっていきました。代表的な作品として、ゲーテの史劇『ゲッツ・フォン・ベルリヒンゲン』(1773年)や小説『若きウェルテルの悩み』(1774年)、シラーの戯曲『群盗』(1781年)や悲劇『たくらみと恋』(1784年)などがあります。

日本では「疾風怒濤(しっぷうどとう)」と和訳されたために「嵐と大波」という意味で理解されることも多いですが、ドイツ語から直訳するならば「嵐と衝動」です。

5.シュプレヒコール(Sprechchor)

シュプレヒコールはドイツ語で「話す」を意味するSprechchorに由来します。元々は古代ギリシャの合唱劇や演劇で「交互に朗読すること」を指したそうです。現在ではデモや集会などで人々が同じフレーズを一斉に繰り返す行為のことを指します。

6.シュラフ(Schlaf)・シュラフザック(Schlafsack

「シュラフ」とは、ドイツ語で「寝袋(ねぶくろ)」を意味する「シュラフザック」の略語です。袋状の携帯用寝具で、キャンプや登山などの際にテント内で使用される他、防災用品としても用いられます。英語ではスリーピングバッグ(sleeping bag)と呼びます。

7.シュルント(schrund)・ベルクシュルント(Bergschrund)

「シュルント」とは、ドイツ語で「氷河または雪渓と山腹との間にできたすきま」を意味する「ベルクシュルント」の略語です。ベルク(Berg)は「山」という意味で、シュルント(Schrund)というのはクレバスのことです。

英語やフランス語では「クレバス」(crevasse)と言います。こちらの方が馴染み深い言葉ですね。

8.ゼミナール(Seminar)

「ゼミナール」は、ドイツ語で「演習、研究室」を意味するSeminarに由来します。

語源をさかのぼると、ラテン語のseminarium(苗床、養成所)という言葉に由来します。sēmenは種、-āriumは場所を意味します。

英語もドイツ語も同じスペルのseminarですが、英語のseは「セ」、ドイツ語のseは「ゼ」になるので、発音はそれぞれ異なります。

研修・講習や講演会の場合は、一般に「セミナー」と言いますが、大学で、教授の指導のもとに、学生が研究、発表、討論する授業形式は、「ゼミ」と言います。予備校の名前にも「代々木ゼミナール」というのがありますね。

9.セレン(Selen

「セレン」は、元素記号がSe である原子番号34の元素です。カルコゲン元素の一つで、ヒトの必須元素の1つでもあります。

10.ゾル(Sol

「ゾル 」は、分散系の一種で、液体を分散媒とするコロイドです。分散質には固体・液体・気体がありますが、狭義には固体を分散質とするものに限ることもあります。また、ゾルをコロイド溶液とも言いますが、真の溶液ではありません。

液体分散媒のコロイドであるゾルに対し、固体分散媒のコロイドを「ソリッドゾル」、気体分散媒のコロイドを「エアロゾル」と言います。また、分散媒自体の物性は液体であっても、分散質のネットワークにより流動性を失い固体のように振舞うコロイドもあり、それらはゾルではなく「ゲル」と呼ばれます(「ソリッドゾル」を「ゲル」に含めることもあります)。

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