花食者や盗蜜者などの奪う昆虫と、騙し花や擬態花で対抗する花との壮絶な戦い

フォローする



ウメバチソウ

前に「花と昆虫のしたたかで素敵な関係は、自然の神秘を感じさせる不思議なもの」という記事を書きましたが、まだまだ不思議なことがあります。

1.「ご褒美」をあげずに花粉だけ運ばせる「騙し花」

花の多くは、受粉のために花粉の運搬を昆虫に依存しています。「送粉者」である昆虫は、ハチ目、ハエ目、チョウ目、コウチュウ目の4目で、9割以上の動物媒植物種の受粉を担っています。相互に必要な存在ではありますが、実は両者の間で騙し合いが起きているのです。

花と昆虫の間では、私たちの知らないところでさまざまな駆け引きが行われています。報酬(花蜜など)を提供せずに昆虫を騙すことで送粉を達成する植物もいれば、花蜜などの花の資源を利用しておきながら、送粉にほとんど寄与しない昆虫もいます。片方が片方を一方的に搾取する関係があるのです。

(1)一般的餌擬態花

報酬をほとんど渡さず、昆虫を騙すことで送粉を達成する花のことを「騙し花」(「無報酬花」)といいます。たとえば、ウメバチソウの花(冒頭の画像)は、ほんのわずかしか花蜜を分泌しません。その代わりに偽の餌を目立つように提示する(花粉を持たない仮雄しべの先端にキラキラ光る黄色い粒をたくさんつけるが、この粒に栄養的価値はない)ことで、ハエやハナアブがこの粒を花蜜か花粉だと勘違いして訪花します。これが「一般的餌擬態花」です。

(2)ベイツ型擬態花

また、無報酬花のなかには、「報酬を多くもっている特定の植物種に花の色や形を似せることで送粉者を引き寄せる」ものもいます。このような花のことを「ベイツ型擬態花」といいます。

南アフリカに生息するディザというラン科の植物は、花蜜をもたない無報酬の花をつけますが、その花の色は地域によって異なります。その地域に生育する報酬花の花の色に似せることができるのです。

(3)性的擬態花

特定の昆虫種のメスが放出する性フェロモン(異性の性的興奮を誘発する化学物質)に似た匂いを放出したり、花の一部を昆虫の姿に似せたりすることで、交尾にやって来るオスを騙して誘い、受粉を達成するものが「性的擬態花」です。

(4)産卵基質擬態花

コンニャクやザゼンソウの花のように、腐肉臭や糞臭など人からすれば臭(くさ)い匂いを出す花があります。

これは死肉や糞にたかる虫たちの「産卵基質」(卵を産みつけるもの)の匂いに擬態することで、虫たちを騙して誘い込み、受粉を達成しているのです。

2.「花食者」「盗蜜者」などの奪う訪花者

(1)花食者

一方、「花弁や子房など、花の一部や全部を食べるために花を訪れる訪花者」のことを「花食者」と言います。キク科の頭花の上で、他の花頭に移動することなく吸蜜し続けるカメムシや、花に滞在したまま花粉を食べるダニがこれにあたります。

また、アリは一部の植物種にとって重要な送粉者でもありますが、実は多くの昆虫が嫌がる存在なので、アリがいると他の訪花者はその花を避けてしまいます。植物種にとって厄介な存在でもあるのです。

「花食者」は、花を壊すことや、胚珠や種子、花粉を損なうことを通じて、植物の利益を直接的に侵害する訪花者だと言えます。

(2)盗蜜者

花蜜を採餌しておきながら、送粉にほとんど寄与しない訪花者」のことを「盗蜜者」と言います。

「盗蜜者」は、花を壊したり胚珠や種子、花粉を損なうわけではありませんが、花蜜を消費することで花の魅力を低下させ、送粉者となりうる他の訪花者たちが来る回数が減ることで、植物の利益を間接的に侵害する訪花者だと言えます。



シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする