前にも「面白い社名」の記事を書きましたが、「社名」は創業者の理念やルーツ、あるいはアイデアが詰まったものが多いものです。今回も面白い由来のある社名をいくつかご紹介します。
1.江崎グリコ(Glico)
大正時代に、後にGlicoの創業者となる江崎利一は、佐賀で薬種業を営んでいました。ある日漁師たちが牡蠣(かき)の煮汁を捨てるのを目にします。
「牡蠣にはエネルギー代謝に大切なグリコーゲンが多く含まれている」という過去に読んだ記事を思い出しました。
「栄養豊富な煮汁を捨てるなんてもったいない。何とか活かせないだろうか?」
最初は薬への利用を考えたそうですが、それよりも病気の予防が第一と、子供たちの健康づくりに活用することを決めました。
「『国民の体位向上』に貢献したい。そのためには子供たちが喜んで食べてくれるものがいい」
このひらめきで、グリコーゲンの入った栄養菓子「グリコ」が誕生し、社名にも取り入れられたそうです。
私は、若い頃に江崎利一氏の「自伝」を読んだことがあります。「グリコーゲンの事業化を考えていた頃、彼の長男がチフスにかかり医者も匙を投げるほど衰弱したので、医者の許可を得て牡蠣エキスを試飲させたところ病状が快方に向かい、食欲も出、体力も回復してきたと」と書かれてあったように記憶しています。
2.DHC
DHCは現在、化粧品やサプリメントを製造販売していますが、設立当初は「大学翻訳センター」という社名で、「大学の研究室向けの翻訳業務サービス」を行っていました。
その後、天然成分にこだわった基礎化粧品の製造を手掛けるようになり、「大学(D)・翻訳(H)・センター(C)」の頭文字を取ってDHCという社名に変更しました。
3.アシックス
総合スポーツ用品メーカーであるアシックスの社名は、古代ローマの作家ユウェナリスが唱えた「健全なる精神は健全なる身体に宿る」という言葉に由来します。
この言葉はラテン語で「Mens Sana in Corpore Sano」と言いますが、「 Mens(精神)」を「Anima(生命)」に置き換え、「 Anima Sana in Corpore Sano」とし、その頭文字を取って「ASICS」にしたそうです。
4.ナリス化粧品
ナリス化粧品は、大阪に本社を置く訪問販売の化粧品メーカーです。「ナリス」は英語の「Nourishment」(滋養を与える)が由来です。
私は若い頃、ナリス化粧品の村岡満義社長が論語を解説する「私と論語」というラジオ番組をよく聞いていました。朝礼の社長講話のような感じだったと記憶しています。
5.エスビー食品(S&B)
エスビー食品は1923年(大正12年)に「日賀志屋(ひがしや)」として創業し、日本で初めて国産カレー粉を販売した会社とされています。
国産カレー粉の製造に成功した日賀志屋は、1930年(昭和5年)に「ヒドリ印カレー粉」という商品名で発売しました。
「ヒドリ印」は、「社運が、日が昇る勢いであるように、また鳥が自由に大空を駆け巡るように、自社製品が津々浦々まで行き渡るように」との願いを込めて、「太陽」と「鳥」を図案化したもので、ヒドリ印をカレー粉の商標としました。
翌年には、そのヒドリ印に「太陽(SUN)」と「鳥(BIRD)」の頭文字である「S&B」を併記して商標とし、1949年(昭和24年)には社名を「ヱスビー食品」としました。
6.フマキラー
殺虫剤の大手メーカーの「フマキラー」は、1890年創業の薬種商「大下回春堂」が発祥ですが、1963年に世界初の電気蚊取「ベープ」を開発し、世界にその名を轟かせました。
「フマキラー」という社名には、「蠅と蚊の殺し屋」という意味が込められています。
「fly(フライ)」(蠅)の「フ」と「 mosquito(モスキートー)」(蚊)の「モ」に、「 killer(キラー)」(殺し屋)の「キラー」を付けたものです。ただし、「フモキラー」ではなく語感のよい「フマキラー」になりました。