1.両手をまっすぐに広げた長さと身長は(ほぼ)同じ
身長と手を広げた長さには密接な関係があります。 不思議なもので、両手を水平に、 横いっぱい広げた長さは大体、身長と同じ長さなのです。ただし10cm程度の誤差はあります。 手を広げた長さから、身体の中心で分けると身長の半分になります。
このことは、昔からよく言われている話ですが、もちろん平均的な人に比べて「手の長い人」や「手の短い人」がいるなど個人差があり、また成長過程にある子供の場合は必ずしも一致しません。
2.尋(ひろ)は両手を広げた長さの単位
「尋(ひろ)」は、日本の古い慣習的な長さの単位で、「両手を広げた長さ」をもとにしています。
語源は、縄のようなものを両手で「ひとひろげ」「ふたひろげ」と測ったことによります。
「八尋殿(やひろどの)」「千尋縄(ちひろのなわ)」などと使われています。
日本固有の単位ですが、表記の「尋」の字は中国の古典『説文』に「度人之両臂為尋八尺也」とあるのによっています。
しかし、中国では周以後、制度上使っていません。日本では丈、尺、寸の制度を採用した後も引き続いて使用され、大化の「薄葬令」の墓の外部寸法も尋で表されています。
尋はもっぱら海で用いられていましたので、1872年(明治5)太政官(だじょうかん)布告で六尺(約1.818メートル)と定め、陸上の間(けん)と統一しました。
ちなみに、欧米で使われている長さの単位に「ヤード」「エル(キュビット)」「フィート」も人間の身体の一部の長さを元にしています。
このように、「人間の身体部位を基準に定められた単位」を「身体尺(しんたいじゃく)」と言います。手軽な単位として世界各地で自然発生的に生まれましたが、後に個人差をなくすために、より客観的な基準に置きかえられました。単位名の一部に身体尺に由来するものが残っていますが、多くは本来の長さとは異なっています。
3.「両手をまっすぐに広げた長さ=身長」という常識に疑問を持った小学生の研究
「朝日新聞デジタル」(2020年2月9日付け)に、次のような記事がありました。
「腕を広げた長さと身長は同じ」ってホント? そんな疑問を探究した熊本県天草市の小学生2人の研究が、国内外から1万点を超える応募があった自由研究作品コンクールで入賞しました。
素朴な疑問の探究に取り組んだのは、同市立本渡北小5年の岡部文香さん(11)と松本望愛(のあ)さん(11)。
研究テーマは「縦横ぴったり人間は誰だ!~身長と腕を広げた長さを比べよう」です。
それが本当か、年代で違いがあるかなどについて、乳幼児から60歳まで141人からデータを取って分析しました。その結果、年代別では、園児は身長の方が腕を広げた長さより長いが、大人になるほど、腕を広げた長さの方が長くなることがわかりました。
この研究結果を、一般財団法人理数教育研究所が全国の小中高生から募った「算数・数学の自由研究作品コンクール」に応募。今年度の審査委員特別賞を県内で唯一受賞しました。日常生活や社会で感じた疑問を算数・数学を用いて探究し、リポートの内容を競うこのコンクールには、国内外から1万7821点の応募があり、14点が入賞しました。
2人は4日、同小であった「北っ子の集い」で全校児童の前で研究内容を発表。発表後、「調べるのは大変だったけど、全国までいけてよかったです」などと話したそうです。