ドイツ語由来の「外来語」(その7:ヤ行~ワ行)リュックサック・ヤッケ・ヨーグルト・ラガー・ワクチン他

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リュックサック

古来日本人は、中国から「漢語」を輸入して日本語化したのをはじめ、室町時代から江戸時代にかけてはポルトガル語やオランダ語由来の「外来語」がたくさん出来ました。

幕末から明治維新にかけては、鉄道用語はイギリス英語、医学用語はドイツ語、芸術・料理・服飾用語はフランス語由来の「外来語」がたくさん使われるようになりました。

日本語に翻訳した「和製漢語」も多く作られましたが、そのまま日本語として定着した言葉もあります。たとえば「科学」「郵便」「自由」「観念」「福祉」「革命」「意識」「右翼」「運動」「階級」「共産主義」「共和」「左翼」「失恋」「進化」「接吻」「唯物論」「人民」などです。

ドイツ語由来の外来語(ドイツ語から日本語への借用語)は、江戸時代は蘭学を通して、明治時代は欧米列強の近代的な技術を取り入れる過程で日本へ伝わり、日本語として定着しました。日本語になった単語の分野は、法学、医学、化学、物理学から、音楽、登山、スキーまで多岐にわたります。

そこで今回は、日本語として定着した(日本語になった)ドイツ語由来の「外来語」(その7:ヤ行~ワ行)をご紹介します。

1.リュックサック(Rucksack

「リュックサック」は、「背に負う袋」の意で、荷物を入れて担ぐための袋です。登山、軍事などその用途は広く日常生活でもよく用いられます。

他の呼び名として、背嚢(はいのう)、リュック、ザック(Sack)、バックパック(米:backpack)、ナップサック(英: knapsack)などがあります。

2.ヤッケ(Jacke)・ビントヤッケ(Windjacke)

エスキモーの上衣であるアノラックと同様のフード付き防風・防寒上衣を指す言葉です。

本来は短い上衣やジャケットを意味するドイツ語ですが、日本では「ビントヤッケ(Windjacke)」つまり英語のウィンドブレーカー (防風衣) の意で、おもに登山用語として導入され定着しました。

スキーや登山に用いられるほか、日常の防寒上衣としても着用されます。

3.ユンカー(Junker

「ユンカー」は、ドイツ・エルベ川以東の地主貴族層のことです。グーツヘルシャフトの領主貴族が19世紀前半に農奴解放などを経て変容し、半封建的農場経営を基盤に第二次大戦まで官僚と軍部の要職を占め、軍国主義・保守主義の中核をなしました。

もともとは「貴族の若旦那」という意味でしたが、やがて貴族の性格、特に貴族の傲岸不遜な態度を批判的に表す言葉として使われることが多くなり、1840年以降頃からエルベ川以東の地主の特色を指す言葉となりました。

余談ですが、佐藤製薬から販売されている栄養ドリンク剤「ユンケル黄帝液」という商品があります。商品名「ユンケル」の由来はドイツ語のユンカー(Junker)で、日本語に意訳すると「貴公子」という意味で、「黄帝」は漢方医学の祖ともされる中国の伝説上の帝王です。

4.ヨーグルト(Joghurt)

「ヨーグルト」は、乳に乳酸菌や酵母を混ぜて発酵させて作る発酵食品の一つです。乳原料を搾乳し利用する動物は専用のウシ(乳牛)だけでなく、水牛、山羊、羊、馬、ラクダなどの乳分泌量が比較的多く、搾乳が行いやすい温和な草食動物が利用されます。

「ヨーグルト」は、ドイツ語のJoghurtに由来し、語源をさかのぼるとトルコ語の「かき混ぜる(yoğurmak)」から派生したyoğurt(ヨウルト) という語に由来します。

ヨーグルトの歴史は古く、約7000年前から食されているそうです。日本では1895年頃に残りの牛乳を利用して製造・販売された記録が残っているそうです。

5.ライヒ(Reich、複数形:Reiche

「ライヒ」は、ドイツ語で大きな領域を持つ国を表す言葉です。

ドイツ語では「国家」を表す言葉として「シュタート(Staat、複数形:Staaten)」も存在しますが、微妙に用法は異なります。

しばしば「帝国」とも邦訳されが、ライヒはドイツの重層性に根差した、弾力性のある複雑な政治体を的確に表現するための言葉で、帝国とも王国とも人民とも訳すことのできない微妙かつ独特な概念です。

「ライヒ」は、ラテン語の rex(王) や Regnum(王国) から派生した語で、元来その規模や権力にかかわりなく一人以上の君主が統治する範囲を指し示す言葉でした。

6.ランタン(Lanthan

「ランタン」は、原子番号57の元素。元素記号は La。柔らかく、展延性がある銀白色の金属で、空気にさらすとゆっくりと錆び、ナイフで切れるほど柔らかくなります。

7.ラガー(Lager)

「ラガー」は、低温で長時間かけて醸造・熟成させたビールのことで、ドイツ語で「貯蔵」を意味するLagerが語源です。

元々ドイツのバイエルン地方で作られていて、秋にビール樽を洞窟の中に「貯蔵」し、翌年の春に取り出すことから「ラガー」と呼ばれるようになったそうです。

反対に、常温・短時間で製造されるものはエール(yale)と言います。

8.レセプト(Rezept)

「レセプト」は、患者が受けた保険診療について、医療機関が保険者(市町村や健康保険組合)に請求する医療報酬の明細書のことです。

医科・歯科の場合には診療報酬明細書、保険薬局における調剤の場合には調剤報酬明細書、訪問看護の場合には訪問看護療養費明細書とも言います。医療機関内では単に「レセ」ということが多いようです。

9.レーベンスラウム(Lebensraum

「レーベンスラウム」とは、地政学の用語で、国家が自給自足を行うために必要な政治的支配が及ぶ領土を指す言葉です。日本語では「生存圏」「生空間」とも訳されます。

「レーベンスラウム」とは国家にとって生存(自給自足)のために必要な地域とされており、その範囲は国境によって区分されると考えられています。ただし国家の人口など国力が充足してくれば、より多くの資源が必要となり、「レーベンスラウム」は拡張すると考えられ、またその拡張は国家の権利であるとされています。また「レーベンスラウム」の外側により高度な国家の発展に必要な経済的支配(必ずしも政治的支配が必要ではない)を及ばせるべきとされる領土を「総合地域」と理論上設定しています。

近年経済の国際化が進んでおり、自給自足の概念は重視されなくなったため、「レーベンスラウム」理論を国家戦略に反映させることはなくなっています。

「レーベンスラウム」という言葉は、国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)党首アドルフ・ヒトラー著書の『我が闘争』の中で言及されました。

10.ルクセンブルク(Luxemburg)

「ルクセンブルク」はベルギー、オランダとともに「ベネルクス」(ベネルクス三国)と呼ばれる国の一つです。

「ルクセンブルク」はドイツ語で「小さな城」という意味があります。10世紀頃に初代のルクセンブルク統治者であるジークフリート(Siegfried)が、現在のルクセンブルクに小さな城を建てたことに由来するそうです。

11.レフ(Reflex)

「レフ」はドイツ語で「反射」を意味するreflex(レフレックス)の略語です。「レフ版」や「一眼レフカメラ」などと使われています。ちなみに「レフ版」とは、写真撮影の時に使う採光用の反射板のことです。

12.ワクチン(Vakzin)

「ワクチン」はドイツ語のVakzinに由来し、語源をさかのぼるとラテン語で「雄牛」を意味するvaccaに由来します。牛の天然痘をヒントにして世界初のワクチンが作られことから命名されました。

13.ワッペン(Wappen)

「ワッペン」はドイツ語で「紋章」を意味するWappenが語源です。現在では装飾や所属を示すために利用しますが、もともと中世ヨーロッパで騎士の盾に描かれていたのが起源といわれています。

英語由来の「emblem(エンブレム)」の方が格好良く感じられるためか、最近は「ワッペン」という言葉はあまり使われないようです。

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