「異なる漢字で、同じ訓を有するものの組み合わせ」を「同訓異字(どうくんいじ)」または「異字同訓(いじどうくん)」と言います。
この「同訓異字」の中でも、意味のよく似た漢字があり、使い分けに迷う場合があります。最近は「平仮名(ひらがな)交じりの文章」も多くなっており、必ずしも漢字で書かなくても、「漢字を知らない」という誹(そし)りを受けることもなくなりました。
そのため、意識的か無意識的かはわかりませんが、「同じ読み方で意味のよく似た漢字」を平仮名で書いてこの問題を避ける人もいます。
しかし、日本人としては、ぜひとも正しい漢字の使い方を知っておきたいものです。
1.はかる
「はかる」という漢字はたくさんあります。「図る」や「謀る」、「諮る」は意味が全く違うので間違いることはあまりないと思いますが、「計測する」という意味の「測る」「計る」「量る」はどれを使えばよいのか迷うこともあると思います。
しかし、冒頭の画像を見ていただけば、一目瞭然だと思います。
(1)測る・計る・量る
「測る」は長さ・高さ・深さ・広さ・程度、「計る」は時間・数、「量る」は重さ・容積をそれぞれ調べる時に使います。
(2)図る
ちなみに、「図る」の意味と使い方は次の通りです。
①物事を考え合わせて判断する。見はからう。「時期を―・る」「敵情を―・る」
②企てる。もくろむ。「自殺を―・る」
③くふうして努力する。「再起を―・る」「利益を―・る」
④うまく処理する。とりはからう。「便宜を―・る」
なお、①と②の意味の場合は、「謀」という漢字も使います。
(3)謀る
「謀る」の意味と使い方は次の通りです。
①はかりごとをする。たくらむ。「悪事を―・る」
②あざむく。たばかる。「さては―・られたか」
(4)諮る
「諮る」の意味と使い方は次の通りです。
相談する。「会議に―・って決める」
2.さがす
「さがす」という漢字には、「探す」と「捜す」があります。この二つの漢字は同じような意味だと思われるかもしれませんが、はっきりと区別できます。
井上陽水の「夢の中へ」という歌では、「探しものは何ですか? 見つけにくいものですか? カバンの中も つくえの中も 探したけれど見つからないのに まだまだ探す気ですか?♪」で始まり、最後の方でも「探すのをやめた時 見つかる事もよくある話で 踊りましょう夢の中へ 行ってみたいと思いませんか?」と「探」を使っています。
また石原裕次郎の「思い出さがし」(作詞・作曲:五輪真弓)や菅田将暉の「まちがいさがし」(作詞・作曲:米津玄師)のようにあえて平仮名を使った歌もあります。ただし「まちがいさがし」の歌詞には「一つずつ探し当てていこう」と「探」を使っています。
(1)探す
「探す」は、欲しいものをさがす、未知のものをさがすという意味で使います。例えば、「運命の人を探す」「宇宙人を探す」などです。
(2)捜す
一方、「捜す」は、見えなくなったもの、今まではあったけれども消えてしまったものをさがす、という意味で使われます。例えば、「iPhoneを捜す」「はぐれた友達を捜す」など。
「探す」は「探索」(または「探査」)、「捜す」は「捜索」(または「捜査」)と覚えておけばよいと思います。
そういう意味で、井上陽水の「夢の中へ」の歌詞で、「探」を使っているのは間違いだと言えます。ただし、この歌で陽水の言いたいことが、「探し物(幸せ)は無理に追い求めるのではなく、自然体で引き寄せるべきものだ」ということであれば、「探」を使うのも間違いではないと思います。