前に「日本に古くからある花の漢字名」をどう読むかをご紹介する記事を書きましたが、今回は最近種類も豊富になってきた洋花(外来の花)を日本名で漢字でどう書くか(和名)をご紹介したいと思います。
名前は知らなくても、見かけたことのある花も多いと思います。百花繚乱の画像とともにお楽しみください。
今回は「あ行」の花をご紹介します。
1.洋花(外来の花)のカタカナ名
(1)あ行
①アンスリウム、②アゲラタム、③アカンサス、④アガパンサス、⑤アジュガ、⑥アスター、⑦アベリア、⑧アネモネ、⑨アルストロメリア、⑩アルメリア、⑪アンモビウム、⑫インパチェンス、⑬エーデルワイス、⑭エキザカム
2.洋花(外来の花)の漢字名(和名)
(1)あ行
①アンスリウム:大紅団扇(おおべにうちわ)/大団扇(おおうちわ)
「アンスリウム」の仲間は、熱帯アメリカから西インド諸島に約600種が分布します。
「アンスリウム(Anthurium)」という名前は、ギリシャ語の「anthus(花)」と「oura(尾)」に由来します。
美しく着色するのは、「仏炎苞(ぶつえんほう)」と呼ばれる部分で、花はひも状の部分(肉穂花序:にくすいかじょ)に多数つきますが、小さくて目立ちません。
長期間楽しめっる苞を観賞する鉢花として栽培されるほか、観葉植物として楽しむ種類もあります。
和名の「大紅団扇(大団扇)」とは、うまく付けたものだと思います。
②アゲラタム:霍香薊(かっこうあざみ)/大霍香薊(おおかっこうあざみ)
「アゲラタム」は、爽やかな涼感のある淡いブルーの花色と、ふんわりとしたソフトな質感が魅力の花です。
「アゲラタム(Ageratum)」という名前は、ギリシャ語の「ageratos(不老)」に由来し、長い花期や鮮やかな花色が長い間保たれることにちなむと言われています。
和名の「霍香薊(かっこうあざみ)」は、葉がシソ(紫蘇)科の「霍香(かっこう)」(下の左の画像)に似て、花が「薊(あざみ)」(下の右の画像)に似ていることに由来します。鳥の「郭公(かっこう)」とは無関係です。
③アカンサス:葉薊(はあざみ)
「アカンサス」が、濃緑色で光沢のある大きな葉を広げて雄大な花穂を伸ばした姿には、力強い存在感があります。
「アカンサス(Acanthus)」という名前は、ギリシャ語の「acanth(とげ)」と「anthus(花)」に由来します。
和名の「葉薊」は、葉が「薊(あざみ)」に似ているために付けられました。
アザミに似た形の葉は、古代ギリシャ以来、建築物や内装などの装飾のモチーフとされます。特にギリシャ建築様式の一種「コリント式」(下の画像)は、アカンサスを意匠化した柱頭を特色としています。また、ギリシャの国花にもなっています。
④アガパンサス:紫君子蘭(むらさきくんしらん)
「アガパンサス」は南アフリカ原産で、爽やかな涼感のある花を多数咲かせ、立ち姿が優雅で美しく、厚みのある革質の葉が茂る様子には力強さも感じられます。
「アガパンサス(Agapanthus)」という名前は、ギリシャ語の「agape(最高の愛)」と「anthus(花)」に由来します。
和名の「紫君子蘭」は、花が「君子蘭」(下の画像)というヒガンバナ科の花に似ていることと、花色が紫であることに由来します。
⑤アジュガ:西洋十二単(せいようじゅうにひとえ)
「アジュガ」は春に唇形の小花を無数につけるシソ(紫蘇)科の宿根草です。公園などの林床や、シェードガーデン(日陰や半日陰の庭)の植栽には欠かせない植物です。
「アジュガ(Ajuga)」という名前は、ギリシャ語の「a(無)」と「jugos(束縛)」に由来します。花の形が2枚の唇形の花びらからできているものの、筒状の咢との境目がないことによります。
和名の「西洋十二単」は、日本の野生種である「十二単」(下の画像)という花に似ていて、北ヨーロッパ原産であることから付けられました。
⑥アスター:蝦夷菊(えぞぎく)
「アスター」は、中国北部原産の半耐寒性の一年草で草丈は30cm~100cmに達し、茎は直立し葉は細長い楕円形で白い毛が生えています。
属名の「Callistephus」は「美しい花冠」を意味し、花の美しさにちなんでいます。
「アスター(Aster)」という名前は、ギリシャ語の「aster(星)」に由来します。
和名の「蝦夷菊」は、北海道が原産地ではありませんが江戸時代に渡来し普及したことから「江戸菊」が転訛したとする説や、蝦夷の気候のように寒冷な地域の方がよく育つことから名付けられたとする説があります。
⑦アベリア:花衝羽根空木(はなつくばねうつぎ)
「アベリア」は、6月~11月ごろに小さく可憐に咲き乱れる白い花をつけます。街路樹のある歩道によく植えられていますね。
「アベリア(Abelia)」という名前は、中国で植物を採集したイギリスの医者で博物学者のクラーク・エイブル(Clarke Abel)(1789年~1826年)にちなんで付けられました。
和名の「花衝羽根空木」は、花は「空木(うつぎ)」(下の画像)に似ていて、花が咲き終わった後のプロペラのように広がる5枚の咢の姿がお正月に遊ぶ羽根つきの羽根「衝羽根(つくばね)」に似ていることから付けられました。
⑧アネモネ:牡丹一華(ぼたんいちげ)/花一華(はないちげ)/紅花翁草(べにばなおきなぐさ)
「アネモネ」は、ヨーロッパ南部から地中海東部沿岸地域が原産のキンポウゲ(金鳳花)科イチリンソウ(一輪草)属の多年草です。
「アネモネ(Anemone)」という名前は、ギリシャ語の「anemoi(風)」に由来します。
ギリシャ神話の中に、美少年アドニスが流した血からこの植物が産まれたとする伝説があり、まれに「アドニス」と呼ぶこともあります。
古くから人との関りが深く、原生地から各地への伝播には、十字軍や巡礼者が関わっており、神話や伝説にも多く登場します。
和名の「牡丹一華」「花一華」はイチリンソウ(一輪草)属であることに由来します。「紅花翁草」は、キンポウゲ(金鳳花)科オキナグサ(翁草)属の多年草「翁草」(下の画像)と花姿が似ていることによるものです。
⑨アルストロメリア:百合水仙(ゆりずいせん)/夢百合草(ゆめゆりそう)
「アルストロメリア」は、南米原産の球根花です。多彩な花色と花びらに入る独特の模様が織りなす個性的な美しさが好まれ、切り花として多く流通しています。
花束やフラワーアレンジメントでも人気です。日本へは明治時代から大正時代に伝来しました。
「アルストロメリア(Alstroemeria)」という名前は、南米大陸でこの種を発見したスウェーデンの植物学者リンネ(1707年~1778年)が名付けたものです。
リンネには、長年にわたって支え続けてくれた親友がいました。その友情と恩義に報いる意味で、親友の名前「アルストレーマー(アルストロメール)」にちなみ、アルストロメリアと名付けたのです。
和名の「百合水仙」「夢百合草」は、花姿が「百合(ゆり)」(下の画像)に似ているために付けられたものです。
⑩アルメリア:浜簪(はまかんざし)
春になると丸い花を咲かせる「アルメリア」は、花がかんざしのような見た目をしているため、日本では「はまかんざし」と呼ばれます。
「アルメリア(Armeria)」という名前は、ケルト語で「ar mor」(海に近い、海岸に)という意味で、原産地で自生している場所が海岸・浜など海の近くであることに由来です。
英語名も「海のナデシコ」という意味で「sea pink」と呼ばれ、和名も「浜簪(はまかんざし)」と全て海に関連した名前になっています。
⑪アンモビウム:貝細工(かいざいく)
「アンモビウム」は、オーストラリア原産のキク(菊)科カイザイク(貝細工)属の一年草です。花はごく小さく、またそれほど密にも咲かないため主役になる花ではありませんが、ドライフラワーとして切り花によく利用されます。
花弁のように見える白い部分は、花ではなく総苞(花序の基部に多数の苞が密集したもの)で、中心の黄色い部分が花です。
この白く光沢のある総苞が、「貝の内面のように見える」ことから、「貝細工」と呼ばれます。
余談ですが、和名では「貝細工」と呼ばれますが、「帝王貝細工(ヘリクリサム)」(下の画像)はムギワラギク(麦藁菊)属で別属です。
「アンモビウム(Ammobium)」という名前は、ギリシャ語の「ammos(砂)」と「bios(生活)」を語源とし、砂地などに自生することにちなむと言われています。
⑫インパチェンス:アフリカ鳳仙花(あふりかほうせんか)
「インパチェンス」は熱帯アフリカ原産で、初夏から秋まで咲く一年草です。日当たりの悪い場所でもよく育ちます。
「インパチェンス(Impatiens)」という名前は、ラテン語の「impatient」に由来し、「我慢できない」という意味です。これは、インパチェンスの熟した莢に触れると、鳳仙花(下の画像)と同じように弾けて種が広範囲に散らばるためで、その様子を「我慢できない」と表現しているのです。
インパチェンスや鳳仙花は「爆発植物」と呼ばれるのですが、このような植物の面白い生態については「花は恥ずかしがり屋だが開花の瞬間を目撃した奇跡。植物の生育分布拡大戦術」という記事に詳しく書いています。ぜひご一読ください。
⑬エーデルワイス:西洋薄雪草(せいよううすゆきそう)
「エーデルワイス」は、ヨーロッパの高山や亜高山に生える高山植物で、キク(菊)科の多年草です。草丈は10~20cmで、全体が白色の軟毛に包まれています。
夏の頃、茎頂に6~10個の頭状花をつけ、その下に白毛をかぶった包葉が数枚、星形について花弁のように見えます。
「エーデルワイス(Edelweiss)」という名前は、ドイツ語で「高貴」を意味する「エーデル(edel)」と「白」を意味する「ヴァイス(weiss)」を合わせてできました。
和名の「西洋薄雪草」は、日本の「薄雪草」(下の画像)に似ているので付けられました。
私は、ジュリー・アンドリュース主演の映画「サウンド・オブ・ミュージック」(1965年公開)で彼女が美しい声で「エーデルワイス」を歌っていたのが今も印象に残っています。
⑭エキザカム:紅姫竜胆(べにひめりんどう)
「エキザカム」は、リンドウ(竜胆)科エキザカム属の花です。全体がこんもりと盛り上がるように成長し、小さな花をたくさんつけます。
青紫色の丸い花弁と、濃い黄色の雄しべとのコントラストが最大の特徴で、コンテナなどで大人気の花です。
「エキザカム(Exacum)」という名前は、ギリシャ語の「ex(外)」と「ago(追い出す)」から来ています。なぜ「外へ追い出す」という意味の名前が付けられたのかは、はっきりわかっていませんが、毒などを取り除く効果があると想像されていたことによるようです。
和名の「紅姫竜胆」という名前は、竜胆(下の画像)の花色に似ていることに由来します。