1.最近の日本は「亜熱帯化」しているのか?
今日7月23日は、暦の上では「大暑」で、本当に暑い日が続いています。「土用の丑の日」でもあります。
ところで最近の日本の夏は、最高気温が「30度以上35度未満」の「真夏日」は「少し暑い程度」で、「猛暑日」(35度以上)が当たり前になって少しも驚かなくなりました。
最高気温が25度以上30度未満が「夏日」、35度以上が「猛暑日」とされていますが、将来は40度以上を「酷暑(こくしょ)日」とでも定義して使用する必要があるような気がします。
更に10年後くらいには45度以上になる日も出て来るかもしれません。そうなれば45度以上を「極暑(ごくしょ)日」または「亜熱帯日」、50度以上を「熱帯日」としてはどうでしょうか?
現在でも、百葉箱の中の温度計は39度でも、日中にアスファルトの道路に立てば、体感温度は45度以上はあり、50度近い日もあるのではないかと思います。
ちなみに、世界気象機関に公認された観測史上「世界最高気温記録」は、1913年7月10日にアメリカ・カリフォルニア州の砂漠地帯にあるデスヴァレー(死の谷)のファーニスクリークで記録された56.7度です。
団塊世代の私が小学生の頃(60年くらい前)は、夏休みにプールからの帰り道、焼けつくような暑さで、家に帰ってかき氷を作って食べた記憶がありますが、せいぜい30~31度くらいだったように思います。
2.「猛暑」「酷暑」「激暑」「炎暑」「極暑」「溽暑」の意味と違い
夏の盛りによく使われる言葉に、「猛暑」や「酷暑」といったものがありますが、ほかにも似たような言葉として、「激暑」「炎暑」「極暑」「溽暑」といったものがあります。この6つの言葉は、一体どのように違うのでしょうか?
(1)「猛暑」(もうしょ)
「猛暑」とは、「激しい暑さ」という意味の言葉です。気温がいちじるしく高いことで、文字通り「猛烈な暑さ」を言います。読み方は「もうしょ」で、「この夏は異常な猛暑だった」「猛暑で外に出るのがおっくうだ」「こう猛暑続きだと、熱中症対策が欠かせない」のように使われます。
「猛暑」の「猛」の字は、「ののしる犬」を表しており、「たけだけしい」「きびしい」の意味を持ちます。「暑」の字は、「太陽がものを煮るほどあつい」という意味を表しています。
「猛暑」という言葉自体に「何℃以上」という数値の定義はありませんが、「猛暑日」は「日中の最高気温が35℃以上の日」と、気象庁によって定められています。一方「酷暑」との主な違いは、後述するように予報用語として認められていない点にあります。
(2)「酷暑」(こくしょ)
「酷暑」とは、「ひどく暑いこと」「真夏のきびしい暑さ」といった意味の言葉です。やはり気温が高く、暑さがいちじるしいことを指しています。読み方は「こくしょ」で、「毎日酷暑が続く」「酷暑の候、貴社いよいよご盛栄のこととお慶び申し上げます」などのように使われます。
「酷暑」の「酷」の字は、「酒のアルコール度がひどい」を表しており、「ひどい」「きびしい」の意味を持ちます。
「酷暑」もやはり、きびしい暑さを表す言葉で、明確な数値の定義はありません。ただ、「酷暑日」という言葉は、以前マスコミで「最高気温が35℃以上の日」を指して使われていました。これによって「酷暑」の語が広まったという経緯があります。しかし、気象庁が同様の日を「猛暑日」と定義して以降は、「酷暑日=猛暑日の俗称」という位置づけに変わりました。
一般的には「酷暑」の方が「猛暑」より暑いというイメージもあるようですが、実質的な意味の違いはありません。ただ、予報用語としては「酷暑」が正式である点で、「猛暑」と使い分けることもできます。
(3)「激暑」(げきしょ)
「激暑」とは、文字通り「はげしい暑さ」という意味の言葉です。暑さの程度がいちじるしいことを言います。読み方は「げきしょ」で、「劇暑」と書かれる場合もあります。「こんな激暑では体がもたない」「激暑の影響で電力需要が急伸している」のように使われます。
「激暑」の「激」の字は、「水」「たたく」の象形から成り、「程度が普通の状態をはるかに超えている」の意味を表します。
「激暑」もまた、「ひどい暑さ」を意味する点では、「猛暑」や「酷暑」と違いはありません。具体的な数値の定義がない点も同様です。ただ、「激暑日」のような使い方がされず、言葉自体の使用例も少ない点は、「猛暑」などとの違いとなっています。
(4)「炎暑」(えんしょ)
「炎暑」とは、「真夏の焼け付くような暑さ」という意味の言葉です。読み方は「えんしょ」ですが、古くは「えんじょ」とも読まれました。「炎暑はますます激しくなっている」「炎暑で熱中症が相次いだ」のように使われます。
「炎暑」の「炎」の字は、「燃え上がるほのお」の象形から成り、「ほのお」「もえる」「熱い、暑い」の意味を持ちます。
「炎暑」も明確な温度の定義はなく、漠然と暑さがはげしいことを指す点で、「猛暑」などと違いはありません。ただ、「炎暑」には「ギラギラとした日差しの強さ」のニュアンスが含まれる点が、他とは微妙に違う特徴となっています。また、「炎暑日」などと使われることもありません。
(5)「極暑」(ごくしょ)
「極暑」とは、「きわめて暑いこと」「夏の暑さの盛り」という意味の言葉です。読み方は「ごくしょ」で、「極暑の中での屋外作業は体にこたえる」「今日も極暑なので、水分補給はこまめに行うように」のように使われます。
「極暑」の「極」の字は、「屋根の最も高いところ」を表し、「きわみ」の意味を持ちます。
「極暑」もやはり、「猛暑」などと同様に、明確な数値による定義はありません。主な意味合いも他の語と同様ですが、日差しがない場面でも使えるという点は、「炎暑」との違いとなっています。ただし、実際の使用例は少なく、一般的にはあまり認識されない語となっています。もちろん、「極暑日」という言葉もありません。
(6)「溽暑」(じょくしょ)
「溽暑」とは、「蒸し暑いこと」「蒸し暑さ」を指す言葉です。
「蒸し蒸しする暑さ」という「湿度の高さにウェイトを置いた言葉」で、前記の5つの言葉とはニュアンスが異なります。「蒸暑(じょうしょ)」「溽熱(じょくねつ)」も同じ意味です。
「溽」は訓読みで「むしあつい」と読みます。(普通は「蒸し暑い」と書きますが)
「溽暑」は「夏の季語」で、「陰暦六月の異称」でもあります。