今年の夏も猛暑日が続いており、「コロナ対策」以上に「熱中症対策」が必要になっていますね。
ところで「ヒートアイランド対策」として、駅前広場などに「ドライミスト」を設置するところも増えてきましたが、最近注目されているのが「フラクタル日よけ」です。
そこで今回は、「フラクタル日よけ」について、わかりやすくご紹介したいと思います。
1.「フラクタル日よけ」とは
(1)「フラクタル」とは
「フラクタル」とは、規模の尺度を変えても同じ形が現れる自己相似の構造のことです。フランスの数学者B.マンデルブローが名づけた幾何学の概念です。
一例は樹木。幹の枝分かれは小枝の分岐にそっくりで、さらに葉脈の広がりにも似ています。山の稜線や海岸線などにも同様の構造があります。
こうした輪郭の複雑さの度合いを表すのが、「フラクタル次元」です。面上に描かれた輪郭は複雑になるほど1次元(直線しか存在しない空間)から2次元(多角形や円のように平面的な広がりを持つ空間)に近づきます。
(2)「フラクタル日よけ」とは
「フラクタル」は自然界が長い年月をかけてつくりだした構造で、葉脈の模様、樹木の枝分かれ等、図形の部分と全体が自己相似になっている幾何学の概念です。
フラクタル構造を用いてつくりだした「金属製フラクタル」による「フラクタル日よけ」は、放熱効果が高く、周囲の気温に対して日よけ自体の温度が極端に上がらないのが特徴です。
かつ、明るさを確保しつつ、暑さを感じる赤外線の放射量を低下させる効果があります。さらに、強風がフラクタルを通過するとフラクタル構造により、そよ風程度になる減風効果も兼ね揃えています。
これらの性能は電気などのエネルギーを使わずに設置するだけで、その効果が得られ、
様々な分野で活躍できる可能性を持っています。
ただし、クーラーのように積極的に冷やす効果はありません。「雨よけにならない」ことが最大の弱点です。小雨であれば自然の木陰と同様にさほど気になりませんが、大雨の場合はずぶ濡れになりますので、注意が必要です。
都市部の「ヒートアイランド現象」や温暖化が世界共通の課題となり、気候変動による大型台風の発生など異常気象によって引き起こされる人や住環境、生態系への影響が顕著になってきている現在、「金属製フラクタル」が持つこれらの性能で、「持続可能な開発目標SDGs)」の実現も可能となります。
なお、この製品は京都大学大学院人間・環境学研究科教授 酒井敏氏および株式会社ロスフィーの特許により、株式会社オズ・ワークが商品化したものです。
2.京都大学大学院人間・環境学研究科による「フラクタル日よけ」の紹介
「フラクタル日よけ」は、自然の知恵を借用した全く新しい形の日よけです。
普通の日よけと違い、隙間だらけの不思議な構造をしています。 このスカスカの構造が、木陰のような涼しく爽やかな空間を創り出します。自然の樹木は、長い時間をかけて、よりよい形を見つけ出しながら進化してきました。自然は気まぐれです。気まぐれな自然に対処するため、樹木は様々な知恵を持っています。一方、人類は高度な思考能力で科学技術を急速に進歩させました。しかし、我々はまだ彼ら(樹木)の知恵を完全に理解していません
気まぐれな自然に対処するためには、あまり複雑で精緻な方法は役に立ちません。想定外の変化が起こると全くお手上げになってしまうからです。自然と付き合うには、なるべく簡単で単純な方法がよいのです。その代わり、多少の不都合には目をつぶるおおらかさが必要ですが、多分、樹木はそんな作戦をたくさん持っているのだと思います。
このフラクタル日除けは、そんな樹木の知恵を一つだけ拝借しました。物言わぬ彼らから知恵を教わるのは結構大変ですが、我々もちょっとだけ彼らに近づいたかもしれません。
フラクタル日よけは自然の樹木と同じで雨風を完全に防ぐことはできませんし、クーラーのように積極的に冷やすこともできません。あくまで自然体です。自然は完璧を目指しません。暑い日も寒い日もありますが、フラクタル日除けは極端な暑さ寒さを和らげてくれます。極端な変化を防いでくれれば、自然の変化を楽しむ余裕も生まれます。そんな心の余裕を持って自然を眺めてみませんか?