「杏」にまつわる面白い話。「杏」という漢字の成り立ちも紹介

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杏・女優

1.「杏」にまつわる面白い話

「杏」と言えば若い方は、渡辺謙の娘で女優の杏(あん)(本名は「渡辺杏(わたなべあん)」)(1986年~ )をまず思い浮かべるでしょうが、私は室生犀星の「杏っ子(あんずっこ)」と森鴎外の娘で随筆家の小堀杏奴(こぼりあんぬ)(1909年~1998年)、そして「昇り竜のお銀」という女賭博師が当たり役の女優・江波杏子(えなみきょうこ)(1942年~2018年)(下の写真)を思い出します。

江波杏子

「杏」は俳句で「夏」の季語ですが、アンズの花は「春」の季語です。

・山梨の 中に杏の 花ざかり(正岡子規)

「あんず」を表す漢字としては「杏」と「杏子」がありますが、本来は「杏」だけで樹木のアンズを指し、「杏子」はその実を表します。

そして「あんず」と読むのは、本来は「杏子」の方で、「子」には「ず」という音読みがあるのです。つまり、「あんず」とはアンズの実を指す言葉で、それが後に樹木そのものを指すようになったので、「杏」だけでも「あんず」と読むようになったわけです。

漢字の「杏」の本来の読み方は「あん」ですが、これは「唐音(とうおん)」と呼ばれる鎌倉時代ごろ以降に日本にもたらされた中国語の発音から変化した音読みです。

奈良時代から平安時代の初めごろに伝わった中国語に基づく「呉音(ごおん)」の音読みは「きょう」です。

アンズの種子は生薬「杏仁(キョウニン)」として咳止め等に使われます。

「杏仁豆腐」というおなじみの中華料理のデザートがありますね。一般的には「あんにんどうふ」と呼んでいますが、これは正式には「きょうにんどうふ」と読みます。

テレビCMでもおなじみの「杏林製薬(きょうりんせいやく)」(キョーリン製薬)という会社があります。会社名の「杏林」は、単に「アンズの林」という意味だけでなく、「医者」という意味もあります。

これは、古代中国の神仙董奉 (とうほう) が、多くの人の病気を治し、治療代の代わりに杏の木を植えさせたところ、数年で林になったという「神仙伝」董奉の故事に基づいています。

2.「杏」という漢字の成り立ち

杏・漢字の成り立ち

会意兼形声文字です(木+口)。「大地を覆う木」の象形(「木」の意味)と「口」の象形(「種類、口」の意味)から、木の一種「あんず(バラ科の落葉高木)」、「ぎんなん(いちょうの木の実)」を意味する「杏」という漢字が成り立ちました。

3.「杏」とは

アンズの実アンズの花

杏(杏子)(あんず)は、バラ科サクラ属の落葉小高木です。別名は「唐桃(からもも)」です。

英語名の「アプリコット(apricot)」で呼ばれることもありますね。

「杏色(あんずいろ)」は、杏の実のような「赤味がかった黄色」のことで、JISの色彩規格では「やわらかい黄赤」とされています。

中国から日本へ渡来した時期は古く、平安時代は薬用植物として栽培されていました。アンズの種子は生薬「杏仁(キョウニン)」として咳止め等に使われます。

実は初夏に黄熟し、7月頃に収穫されます。果肉は酸味が強いため、生食用のアンズは稀であり、ジャム・シロップ漬け・果実酒・ドライフルーツなどの加工品として利用されます。



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