以前から不思議に思っていることの一つに、「サケやウナギはどうやって生まれた川に再び戻って来ることができるのか?」というのがあります。またその前提としての「戻って来たサケやウナギは本当にこの川で生まれたとどうして確認できるのか?」ということもあります。
1.サケやウナギが生まれた川に再び戻って来ることができる理由
川で生まれて海で暮らし、1300~1400kmの長旅の後、繁殖のために生まれた川に戻って来る(母川回帰)というのは非常に不思議で、その能力には驚かされます。
一つの説は「匂い説」です。ただ、1300km以上も距離がある生まれ故郷の川の匂いがわかるというのは説得力に欠けます。
そこでもう一つの説は、「太陽コンパス説」です。サケの体内には、渡り鳥が持っているのと同じようなコンパスがあり、鮭はこのコンパスに従って回遊や移動をしていると考えるのです。「太陽コンパス」とは、「動物が体内時計に基づいた時刻の感覚と太陽の位置から一定の方位を知り、目的地に到達できる能力」のことです。
更にもう一つの説は、「磁気コンパス説」です。サケの頭部を解剖したところ、磁鉄鉱の結晶(磁石)が発見されたそうです。「磁気コンパス」とは、「動物がこの磁石を利用して方位を確認し、目的地に到達できる能力」のことです。
結論としては、GPS並みのこれら3つを利用して、サケは生まれた川に戻って来るようです。
2.サケやウナギが生まれた川に再び戻って来たと確認できる根拠
(1)標識放流・脂鰭カット
これは、サケの稚魚に「標識」(直径1mm以下のシャープペンシルの芯のような長さ数ミリのタグを打ち込む方法。または耳石に年輪のような痕跡を卵の時に付ける方法)を付けたり、「脂鰭を一部切り取り」(カットして)放流し、当該魚が戻って来たかどうかを確認する方法です。サクラマスなどの商品価値の高い魚はこのような方法が取られているようです。
(2)回帰率調査
サケにしても稚魚は小さいので(1)の方法は困難な場合があるので、シロザケについては、この「回帰率調査」しか行われていないようです。
いずれにしても、過去に鮭の遡上が途絶えた河川において、放流事業を行うと、数年後には遡上が確認される事例が数多くあり、この事実は信用してよさそうです。
なお、回帰する魚においては、時に「迷い」という「他の河川に遡上してしまう変わり者」が出るようです。しかしそれが種の存続に重要な役割があるのだとも言われています。
このように見て来ると、自然界にはまだまだ人知では計り知れない驚異の能力が隠されているようですね。