火山と言えば、ハワイ島のキラウエア火山(上の写真)が有名ですが、今年11月下旬には同じハワイ島の「マウナロア火山が38年振りに噴火した」(下の写真)というニュースがありましたね。
日本でも2014年に御嶽山が噴火しました。この時は噴火警戒レベル1(平常)の段階で噴火したため、火口付近に居合わせた登山者ら58名が死亡、行方不明5人で、日本における戦後最悪の火山災害となりました。
桜島(下の写真)も最近よく噴火しています。また、「富士山が近いうちに噴火する」という話もよく聞きます。
ところで火山はなぜ噴火するのでしょうか?また富士山は本当に近いうちに噴火するのでしょうか?
今回はこれらについてわかりやすくご紹介したいと思います。
1.火山はなぜ噴火するのか?
「噴火」は、火山の地下あるマグマが地球内部の圧力によって上昇し、地表に噴き出す現象です。
マグマの体積が増えると、地表に出ようとする力が働きます。 マグマが地表に出ようと上昇することで、さらに圧力が下がるため、この現象が加速度的に進行。 マグマが一気に火道を上昇して、火口を押し開いて噴火するのです。
マグマが地中の「マグマだまり」にあるとき、水蒸気は周りの圧力でマグマの中に溶けたままです。 そこに、下から新しいマグマがやってくると、溶けていた水蒸気が泡になります。 マグマの中に泡がどんどん溜まって、は溢れて溢れて噴き出してしまう。 これが噴火の仕組みです。
「火山」とは、地球の内部にたまったマグマが噴き出してできた山です。そのうち、過去1万年以内に噴火した火山や、現在も活発に活動している火山を「活火山」と呼びます。
日本にある活火山の数は、世界の活火山の約7%に当たる111です。約200万年前から現在までに日本列島で生まれた火山の数は350ほどと言われています。
こうした火山の場所を地図で確認すると、プレート(厚さが約100kmの硬い岩盤)が隣り合ったプレートの下に潜り込む「海溝」(千島海溝、日本海溝、伊豆・小笠原海溝、相模トラフ、南海トラフ)と平行に連なっていることがわかります。どうやら、噴火にはプレートの沈み込みが関係しているようです。一体、どんなことが起きているのでしょうか?
日本の近くでは、海側のプレートが陸側のプレートの下に潜りますが、このとき海側のプレートは海水を大量に含んだ状態で沈み込みます。すると、その水分などの働きで地球内部のマントルの一部が溶けて、マグマになります。
マグマの密度は周りの岩石より小さいため、地表に向かって昇っていきますが、地表から深さ5~20kmの場所で留まって「マグマだまり」を作ります。マグマだまりに下から新しいマグマが入ってくると、その圧力でマグマは押し出されて「火道」とよばれる通り道を昇り出します。マグマが地表近くまでやって来ると、周りの岩盤が圧力に耐えられずに壊れ、マグマや火山灰が地表へ出て来るというわけです。
噴火には、ドカーンと爆発するものもあれば、比較的穏やかなものもあります。噴火の勢いを決める要素はいくつかありますが、その1つが“気泡”だと考えられています。
詳しく言うと、マグマだまりから火道へ出るとマグマにかかる圧力が下がるため、マグマに溶け込める水蒸気や二酸化炭素、二酸化硫黄などの量が減って、それらがガスとなって発泡します。マグマが昇るにつれてさらに圧力は下がり、気泡の体積は大きくなっていきます。そして、気泡をたくさん含んだマグマが地表近くまで到達すると、一気にマグマが噴き出し、激しい噴火が起きるのです。
このことから、気化しやすい成分がマグマに含まれているいると爆発的な噴火が起きやすい、といえます。
2.富士山の噴火の歴史
富士山(3776m)は高さと山体の大きさに於いて日本最大の活火山です。富士山は最近10万年で急速に大きくなったと考えられており、その意味では「若い火山」に分類されます。
現在見えている山の外観は約1万年前から噴火活動を開始した「新富士火山」であり、その下に約70万年前から活動していた「小御岳(こみたけ)火山」と約10万年前から約1万年前に噴火した「古富士火山」があると言われています。
(1)「新富士火山」以前の活動
①約10万年前まで、先小御岳火山・小御岳火山
富士山の周辺一帯は数百万年前から火山活動が活発であったことが知られています。その中で約70万年前、現在の富士山の位置に「小御岳(こみたけ)火山」が活動を始めました。その頃は南東にある愛鷹山(あしたかやま)の活動も活発で、二つの大きな活火山が並んでいました。
現在この火山の頭部が富士山北斜面5合目(標高2,300m)の小御岳付近に露頭しています。
②約10万年から約5,000年前まで、古富士火山 (星山期)
小御岳火山がしばらく休止した後、約10万年前から新たな活動時期に入りました。この時期を「古富士火山」と呼びます。古富士火山は爆発的な噴火が特徴で、大量のスコリア(岩滓)・火山灰や溶岩を噴出し、標高3,000mに達する大きな山体を形成していきました。古富士火山の山体は宝永山周辺等富士山中腹にかなり認められます。約2万年前に田貫湖岩屑なだれを生じました。
③氷期と泥流
北東麓側で富士相模川泥流(1万7,000年前から1万4,000年前)などの火山泥流が複数回発生しました。当時は氷期で、最も寒冷化した時期には富士山における雪線(夏季にも雪が消えない地帯の境界)は標高2,500m付近にあり、それより高所には万年雪または氷河があったと推定され、山頂周辺の噴火による火山噴出物が雪や氷を溶かし大量の泥流を生じる融雪型火山泥流を発生させたと推定されています。
④関東ローム層
東京周辺には、関東ローム層と呼ばれる褐色の細かい砂質の土が広がっています。これは古富士火山から飛んできた火山灰が主体の土です。同時期には箱根山も大量の火山灰を大規模に噴出させていましたが、箱根の火山灰は白っぽく、古富士火山の火山灰は褐色なので見分けが付きます。
(2)「新富士火山」の活動
新富士火山の噴火では、溶岩流・火砕流・スコリア・火山灰・山体崩壊・側火山の噴火などの諸現象が発生しており、「噴火のデパート」と呼ばれています。大別すると山頂噴火では爆発的な噴火となり、山腹割れ目噴火では溶岩流を噴出させています。また、岩屑なだれ、山体崩壊、火山泥流も生じています。
- ①新富士火山旧期 (富士宮期):紀元前1万5,000年頃から紀元前6,000年頃まで
- 山頂噴火と山腹噴火。断続的に大量の玄武岩質溶岩を噴出。流動性が良く遠くまで流れる傾向があります。この時期に噴火した溶岩は最大40kmも流れており、南側に流下した溶岩は駿河湾に達しています。
- 紀元前9,700年頃(約11,700年前)、三島溶岩流。紀元前6,500年頃(約8,500年前)、山梨県大月市まで流れた猿橋溶岩。紀元前6,000年頃(約8,000年前)、馬伏川岩屑なだれ。
- ②新富士火山旧期 (須走-a期):紀元前6,000年頃から紀元前3,600年頃まで
- 富士黒土層を形成。須走-a期は活動が低調であったと考えられており、富士宮期以前を古期富士火山、須走-a期以降を新期富士火山とする考えもあります。
- ③新富士火山中期 (須走-b期):紀元前3,600年頃から紀元前1,500年頃まで
- 現在の円錐状の山体を形成。ほとんどが玄武岩からなります。
- ④新富士火山旧新期前半 (須走-c期):紀元前1,500年頃から紀元前300年頃まで
- 噴火様式が「山頂・山腹からの溶岩流出」から「山頂山腹での爆発噴火」に移行しました。紀元前1,300年頃の噴火で大室山と片蓋山が形成。紀元前900年頃、御殿場岩屑なだれが発生。
- ⑤新富士火山旧新期前半 (須走-d期):紀元前300年頃から現在まで
新富士火山の火山灰は黒色が多い。新富士火山の噴火は地層的にも新しく、また8世紀以後には日本の古文書に富士山の活動が記載されており、噴火について貴重なデータを提供していますが、噴出源および年代が明らかになっていない溶岩流も多くあります。
しかし成果もあり、2001年から2003年に行われたスコリア丘のトレンチ調査によれば、9世紀の貞観噴火では割れ目噴火が多く発生し、山頂を挟み南北両山腹で溶岩を噴出し溶岩流を流下させていました。
諸説ありますが、古記録によれば新富士火山の噴火は781年以後16回記録されています。噴火は平安時代に多く、800年から1083年までの間に10回程度、1511年等に噴火や火映等の活動があったことが、複数の古文書の分析や地質調査から明かとなっています。
一方、文書によっては、1560年頃、1627年、1700年に噴火活動があったとされていますが、信頼性は低いものです。また噴火の合間には平穏な期間が数百年続くこともあり、例えば1083年から1511年まで400年以上噴火の記録がありませんが、記録文書が散逸し残されていないだけで、噴火活動自体がなかったとは断言できません。実際に、1435年から1436年には火炎が見えたとの記録が残っています。
864年貞観噴火と1707年宝永噴火の噴出物の化学組成は玄武岩質でほぼ同じです。しかし、噴火様式は大きく異なり、864年貞観噴火が溶岩流で、1707年宝永噴火はプリニー式噴火の爆発的噴火でした。この2つの噴火様式を分けたのは、マグマの脱水過程、噴火機構に違いがあったものと考えられています。
1707年の「宝永大噴火」以後、富士山では大規模な火山活動はありませんでしたが、江戸時代末期から、昭和中期にかけて、山頂火口南東縁の荒巻と呼ばれる場所を中心に噴気活動がありました。
この活動は1854年の安政東海地震をきっかけに始まったと言われており、明治、大正、昭和中期に掛けての期間、荒巻を中心とした一帯で明白な噴気活動があったことが、測候所の記録や登山客の証言として残されています。
この噴気活動は明治中期から大正にかけて、荒巻を中心に場所を変えつつ活発に活動していたとされます。活動は昭和に入って低下し始めましたが、1957年の気象庁の調査においても50℃の温度を記録していました。その後1960年代には活動は終息し、現在山頂付近には噴気活動は認められていません。
しかしながら、噴気活動終了後も山頂火口や宝永火口付近で地熱が観測されたと記録されています。以上のように、富士山がつい近年まで噴気という火山活動の諸形態の一つを続けていたという事実は、富士山が現在も息づいている活火山である証拠です。
3.今後、富士山はいつごろ噴火するのか
日本は狭い国土に活火山が集中する火山大国です。なかでも、特に警戒されている火山が、富士山です。過去に何度も噴火をした活火山で、いつ噴火してもおかしくありません。2021年3月、富士山噴火のハザードマップが17年ぶりに改定され、火山被害が、より速く、より広範囲にわたることがわかってきました。いつか必ずおとずれるともいわれる富士山の噴火。そのときに備え、どうすればいいのでしょうか?
「富士山は必ず噴火します。富士山は非常に若い活火山なんです。人間に例えたら10歳とか20歳ぐらい。これからもっと活発化すると思ったほうがいい」。こう話すのは火山噴火予知連絡会の元会長で、山梨県富士山科学研究所所長の藤井敏嗣さんです。
富士山の最後の噴火は今から約300年前の江戸時代、1707年の「宝永噴火」。それ以来噴火していません。一方で5,600年前から今までに噴火した回数は180回を超えていて、平均で30年に1回噴火していたことがわかっています。
「その10倍の期間休んでいるということは、次に来る噴火は大きなものになる可能性があると思わなければいけない。そのために備えておいたほうがいいです」と藤井さんは警鐘を鳴らしています。
火口がたくさんあるのは富士山の特徴のひとつです。これは日本列島を作っているプレートの運動と関係しています。
富士山はユーラシアプレートという大陸プレートの上にのっています。そこへ南東の方からフィリピン海プレートが北西に向かって動いて、富士山がのっているプレートを押しています。両方から押された中心の弱いスポットへ、マグマが地下からこの隙間を埋めるように上がってきます。この方向に火口が集中しやすいのです。火口が出来る場所はマグマの上がり方によって変わり、どこに出来るかはわかりません。
ただし現代では火山を観測している各指標から「前兆」を捉えることができます。
富士山は気象庁により24時間体制で監視対象となっている『常時観測火山』に指定され、火山性地震、火山性微動、火山ガスの濃度、火口部の高温化、地殻変動、磁力変化などを総合的に分析され、噴火の前兆として捉えています。
噴火の前兆(火山の活動)は、数ヶ月前から始まって噴火に至ることもあれば、噴火せずにそのまま休止状態なこともあります。岩手県の岩手山は1998年9月3日に555回の火山性地震を観測しましたが、噴火には至りませんでした。
したがって、標準的な火山噴火プロセスを経て噴火に至る場合は、気象庁がすぐに反応して市民に知らせますし、噴火警戒レベルが引き上げられる可能性が高いでしょう。
しかし様々な観測指標に変化が少なかったり、変化が落ち着いてしまった場合は、2019年8月7日の浅間山噴火のように「前兆なしの突発的な噴火パターン」もありえます。
富士山の噴火が浅間山のようなパターンで、なおかつ、富士山への登山で噴火に備えるとすれば、入山前に避難経路や気象庁の火山活動状況は最低限確認しておきましょう。
登山中の噴火については2014年の御嶽山噴火や、2018年の草津白根山噴火のような状況が想定されます。
ANNが報じた下記の記録映像にもあるように登山中の噴火に直面すると、噴石の飛来を警戒しつつ物陰への退避や火山灰の吸入を抑えるなど、被害を軽減する装備を携行する必要がでるほか、とっさの判断・行動を迫られます。
ヘルメット程度では防げない大きめの噴石の飛来に関しては、一個人の装備などでは対応ができません。まだ富士山は整備が進んでおりませんが、草津白根山のように火山シェルター、退避壕が設置がされれば避難経路上のどのあたりになるか、併せて確認しておきましょう。
4.火山の噴火による影響・被害
ひとたび火山が噴火すると、大きな被害が発生する場合があります。主な火山災害の要因として、噴石、火山灰、火砕流、火山泥流、溶岩流、火山ガス、空振などがあります。
(1)火山灰
噴火によって放出される固形物のうち、直径2ミリ以下の小さな粒を火山灰といいます。火山灰は、風に乗って100キロ以上運ばれることがあります。火山灰によって、目やのどにダメージを与えたり、農作物に被害をもたらしたりするほか、自動車の運転や航空機、建物などに影響を与えます。
(2)火山泥流 、融雪型火山泥流
斜面に降り積もった噴石や火山灰が、雨水等によって流れ下る現象で、土石流と類似の現象です。石や火山灰が堆積しているところでは、数ミリ程度の雨でも発生しやすいです。また、積雪時には斜面の雪が融かされ、融雪型火山泥流が起きることがあります。
火山泥流や融雪型火山泥流は、高速で斜面を流れ下り、ふもとに大きな被害をもたらします。噴火後に雨が予想されるときは、川の近くや谷の出口に近づかないようにしましょう。
(3)火砕流
噴石や火山灰、火山ガスが混合した状態で、山肌に沿って流れる現象です。数百度以上のものが100㎞を超える速度で流れる場合もあり、破壊力が大きく、被害の大きな火山災害のひとつです。
(4)溶岩流
1000℃を超える液体の溶岩が地表を流れます。溶岩流の流れる速さは、人の歩く速度程度と言われ、通過域にある森林や建物を焼失、埋没させてしまいます。
(5)火山ガス
火山ガスの主成分は水蒸気ですが、二酸化硫黄や硫化水素といった物質も含まれています。
人体に有害な物質が含まれる場合には、気管支などの障害や中毒によって死亡する場合があります。
(6)噴石
噴火によって火口から吹き飛ばされる大きさの岩石を噴石と呼んでいます。火山に関する情報では、「大きな噴石」および「小さな噴石」に区分しています。
「大きな噴石」とは、直径20から30センチメートル以上の、風の影響をほとんど受けずに弾道を描いて飛散する噴石のことを指します。「火山弾」は噴出したマグマが空中で固まったものです。
「小さな噴石」とは、直径が数センチメートル程度の、風の影響を受けて遠方まで流されて降る噴石です。「火山礫」も含まれます。中には、いわゆる「軽石」もあります。
(7)空振
火山から離れた場所でも、安心はできません。2011年、鹿児島県の新燃岳 (しんもえだけ)の噴火では、大気の振動が数キロ先のガラスを割りました。「空振」と呼ばれる現象で、ガラス片によるけが人も出ています。