てんとう虫(英語名ladybird)の名前の由来は?幸運の象徴と呼ばれる理由は?

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テントウムシ

てんとう虫は「幸運を呼ぶ」とも言われる小さな昆虫ですが、名前の由来をご存知でしょうか?

また、英語では鳥でもないのにladybird(またはladybug、ladybeetle)と言いますが、その由来をご存知でしょうか?

そこで今回は、てんとう虫の和名と英語名の由来と「幸運の象徴」と呼ばれる理由について、わかりやすくご紹介したいと思います。

1.てんとう虫の名前の由来

ナナホシテントウ

「てんとう虫」は、甲虫目に含まれるグループで、日本では180種類ほどが知られています。

半円形の形をしたものが多く、「ナナホシテントウ」などは幸せを運ぶ虫としても有名です。

食性は種類によって様々で、肉食、草食、菌食性などがいます。肉食のものではアブラムシなどの農業害虫を好んで食べる「ナミテントウ」などの種類などもいることから、益虫として重宝されています。

上の写真は、最もポピュラーな「ナナホシテントウ」です。

なお和名では、「ナミテントウ」(下の写真)一種を指して単に「てんとう虫」と呼ぶ場合もあります。

ナミテントウ

てんとう虫は漢字で「天道虫」と書き、「天道」は「太陽」のことです。
この虫は枝などの先端まで登って行って、行き場がなくると上に向かって飛び立つ習性があります。

それを見た民衆は、お天道様(太陽)に向かって飛んでいったのだと考え、「天道虫」の名がつけられたといわれます。

てんとう虫の漢字には、「天道虫」の他に「紅娘」と「瓢虫」があり、いずれもこの虫の姿をたとえたものです。
「紅娘」は、紅色で小さいところから。
「瓢虫」の「瓢」は、「ひょうたん」のような形をしているところからです。

ところで、戦後日本では動物(昆虫を含む)や植物の名前を漢字で表記せずにカタカナ表記するようになったために、名前の由来がわかりにくくなっています。

これについては、「動物の名前は漢字で書くほうが想像しやすく、名前の由来もわかる!」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。

私は個人的には、「天道虫(テントウムシ)」あるいは「テントウムシ(天道虫)」と表記するか、「天道虫」という漢字にルビを振るように変更すべきだと思っています。

2.ladybird(またはladybug、ladybeetle)という英語の名前の由来

聖母マリア

聖母マリア

てんとう虫は英語では「ladybird」、「ladybug」、「ladybeetle」などと呼びます。よく目にするものは前の2つです。ところでなぜ「lady」という、「女性」を表す単語が使われているのでしょうか?

実はこの「lady」は一般的には貴婦人の意味ですが、キリスト教では聖母マリア(the Virgin Mary)のことを指すのだそうです。聖母マリアは「Our Lady」とも呼ばれます。

聖母マリアは赤いマントを着用していました。実際絵画でも聖母マリアは赤いマントを着ているものが多いようです。

てんとう虫の英語名はその色にちなんだとされています。そういった意味からか、海外、特にキリスト教圏においてはてんとう虫は大切にされています

birdと付くのは、太陽に向かって飛び立つ様子から「鳥」という名が付いたのでしょう。bugは小さな虫という意味で、beetleはてんとう虫もカブトムシと同じ「甲虫類(こうちゅうるい)」だからです。

余談ですが、「ナナホシテントウ」の7つの斑点は、「聖母マリアの7つの喜びと7つの悲しみ」(*)を重ね合わせたという説もあるそうです。

(*)これは、新約聖書に記された聖母マリアの生涯の出来事の中から、特に意味深い喜びと悲しみのそれぞれ7つの場面を選び出したものです。

合計14の場面はマリアが現れる宗教上重要な意味をもっており、特に絵画の上で愛好されるテーマとなってきました。

「7つの喜び」とは、「受胎告知」「エリザベト訪問」「キリストの誕生」「東方三博士の礼拝」「神殿奉献」「博士たちとの論議」「戴冠」です。

「7つの悲しみ」とは、「シメオンの預言」「エジプトへの逃避」「博士たちとの論議」「十字架の道行き」「磔刑」「十字架降架」「昇天」です。

「聖母マリアの七つの悲しみ」は、カトリック教会の信心業の中でも普及しているものです。カトリック教会における共通した宗教画として、聖母マリアが悲しみにくれて涙を流し、7つの矢に心臓を貫かれ、しばしば流血している姿(「悲しみの聖母」)が描かれます。

悲しみの聖母

3.「幸運の象徴」と呼ばれる理由

ところで、てんとう虫は「幸せを運んでくれる虫」「幸運の象徴」などと言われています。なぜそのように言われるのでしょうか?

理由を調べてみると、やはり上記のように聖母マリアと関係づけられていることが幸運の象徴と言われるゆえんのようです。

また、実際、害虫の被害に苦しんでいた農民たちがマリアさまにお祈りをささげたところてんとう虫がたくさん集まってきて害虫を駆除してくれた、という言い伝えもあるようです。

昔は駆除する薬などもなかったでしょうから、てんとう虫のような虫は貴重だったのでしょう。そういったところから、てんとう虫は幸運の象徴、と呼ばれるようになったのですね。

そこから、「てんとう虫が体にとまると幸運が訪れる」などのジンクスが生まれることとなりました。特に結婚や恋愛に関する幸運について言われることが多いようです。

そういえば結婚式の余興などの定番、「てんとう虫のサンバ」にもてんとう虫が出てきますが、この言い伝えから作られたのかもしれませんね。

また、てんとう虫をモチーフにしたアクセサリーをつけると幸せになれる、といういわれもあります。てんとう虫はよく見かける虫ではありますが、今後原っぱなどで見かけたらもしかしたらラッキーなことが訪れるのかもと嬉しくなってしまいますね。