<2023/5/17追記>私は「Microsoft Bingのチャット」(無料)を試してみました。
パソコンにある「Microsoft Bingのチャット(無料)」(「BingChat」「BingAI」とも呼ばれます)も「ChatGPT(無料プラン)」と似たようなAIなので、対話型AIがどんなものかを知るにはこれを使って色々質問して、その回答の正や出来・不出来を確認してみるのも面白いと思います。
私が試してみた限りでは、おおむね無難な回答でした。しかし、一部特殊な分野で私が詳しく知っている事項についての質問には正確性を欠く回答もありました。
3月31日付けでロイターによる次のような報道がありました。
イタリア当局は31日、米マイクロソフトが出資する新興企業「オープンAI」が開発した人工知能(AI)「チャットGPT」へのアクセスを一時停止し、膨大なデータ収集が個人情報保護法に違反する可能性があるとして調査を開始したと発表した。ユーザーの年齢確認にも不備があると指摘した。
欧米諸国でチャットGPTの使用を禁止するのはイタリアが初めて。
チャットGPTを運営するオープンAIが20日以内に対応措置を講じない場合、年間売上高の4%を上限とする罰金が科される可能性がある。
オープンAIからのコメントは得られていない。
31日夕時点では、イタリアのユーザーはまだアクセスできる状況にある。
当局の広報担当者は、決定を通知したのは31日朝であり、同日中のアクセス遮断は実質的に不可能だったが、4日1日までには遮断する予定だと述べた。
現時点でチャットGPTの利用ができないのは、中国本土や香港、イラン、ロシア、アフリカの一部。これら地域ではオープンAIのアカウントが作成できない。
イタリアのほか、ドイツやフランスでも規制論が浮上しています。
国内の大学でも、チャットGPTなどのAIについて対策が進んでいます。上智大は「リポートや学位論文で無許可の使用を認めない」、東京大学は「AIのみを用いたリポート作成は認めない」などとしています。
これに対して、ひろゆき氏は4月9日、自身のTwitterを更新し、
これからは社会に出たら、ChatGPTを使いこなす能力がデスクワークで重要になります。時代に逆行してChatGPTを使わせないようにする教育機関。 学校では「化粧禁止」なのに社会人になった途端に「化粧は社会人の身だしなみ」とか180度変わる現象に似てる、、、
と、読売新聞の「チャットGPT、学生の利用に対策…上智大『論文使用なら厳格な対応』」という記事を引用し、投稿しています。
河野太郎デジタル大臣は、4月4日の会見でチャットGPTに触れて次のように述べ、中央省庁での文書作成に活かせないか検討を始める考えを示しました。
まったくでたらめなものができ上がる場合もあるが、役立つ部分は多い。懸念がクリアされれば、積極的に考えたい。
(正確性などの)課題をクリアしないと、なかなかすぐに活用するわけにはいかない。
4月10日には、OpenAIのサム・アルトマンCEOが来日し、岸田総理大臣と面会した後、次のように語っています。
岸田総理と素晴らしい面会を行いました。この技術のプラス面について、そしてマイナス面をどのように軽減していくかについて議論しました。日本が取り入れてくれるのはうれしいことで未来についても話しました
西村経済産業相は4月11日、懸念が解消された場合には、国会答弁の作成などで活用を検討する考えを示しました。
西村氏は閣議後の記者会見で「機密情報の取り扱いなどの懸念点が解消された場合には、国家公務員の業務負担軽減のために活用する可能性を追求していきたい」と述べました。
活用例として国会答弁を挙げ、「いくつか試してみたが、国会答弁のような形にはできあがってくるので、最新のデータに基づいて作ってもらえればかなり負担が軽減される可能性はある」と話しました。
このように最近チャットできるAI「ChatGPT」がいろいろと話題になっています。
前に「人間型ロボットアンドロイドのリアルさは本物の人間と見紛うほど!」という記事を書きましたが、「ChatGPT」は、今までの会話型ロボットに比べてどのように進化したのでしょうか?
前に「AI化となくなる仕事」という記事を書きましたが、人間の仕事を奪うような可能性もある「優れモノ」なのでしょうか?
また「ChatGPT」のメリット・デメリットは何なのでしょうか?
そこで今回は「ChatGPT」について、わかりやすくご紹介したいと思います。
1.「ChatGPT」とは
チャットできるAI「ChatGPT」とは、イーロン・マスクやマイクロソフトが出資するOpenAI(*)が開発して公開した人工知能チャットボット(ロボット)です。
(*)OpenAI(オープンエーアイ)は、2015年12月に設立された営利法人OpenAI LPとその親会社である非営利法人OpenAI Inc. からなるアメリカの人工知能(AI)の開発を行っている会社。人類全体に利益をもたらす形で友好的なAIを普及・発展させることを目標に掲げ、AI分野の研究を行っています。
高度なAI技術により、人間に話すように会話で質問することで人口知能が答えを返してくれるサービスを提供するロボットです。
ChatGPTのGPTとは「Generative Pretrained Transformer」の略で、大量のテキストデータから言語学習を行い自然言語処理を用いたテキスト生成が可能な言語モデルです。
最初にGPTが登場したのは2018年で、ここから少しずつ改良を加えられ、現在のモデルはGPT-3(インターネット上の大量のテキストデータを参照・学習した人工知能)の後継でフリーのベースとなっているのはGPT-3.5で、有料サービスのChatGPT PlusのベースとなっているのはGPT-4(2023年3月14日発表)です。
(1)特徴
①アクティブユーザー数が急増
USBの調査によると「ChatGPTがローンチ(サービス開始)してからわずか2ヵ月で月間アクティブユーザー(*)数が1億人に突破した」と推計されています。
(*)ある一定の期間に「Webサイトにアクセス」「パソコンやスマートフォンでシステムを起動」などの行動を起こしたユーザー
アクティブユーザー数が1億人を突破しているサービスには日本でも有名なSNS「TikTok」や「Instagram」があげられますが、アクティブユーザー数1億人を突破する期間として「TikTokはローンチから約9か月」「Instagramはローンチから2年半」を要しています。
②無料でも利用可能
OpenAI上から登録する必要はありますが、ChatGPTは基本的に誰でも無料で使うことができます(尚ChatGPTには、月額20ドルで利用できる「ChatGPT Plus」というプランも用意されています)。
無料と課金プランの違いに関しては課金プランの「ChatGPT Plus」の方がアクセスしやすかったり応答時間が短かったりすることです。
加えて「ChatGPT Plus」であれば新機能を使うこともできるため(無料プランでは使えない)「GPT-4」を利用することも可能です。
③様々な質問に回答できる
ChatGPTで回答できる内容は多岐にわたり、SNS上では「こんな内容も答えてくれるのか」「思ったより分かりやすい文章がきて驚いた」など、ChatGPTに関する良い口コミも多く見受けられます。
(2)活用例
- レシピに関する質問に回答できる
- 言語の意味を問う質問に対し辞書のように回答できる
- ユーザーの悩み事に対しアドバイスを行える
- プログラミング(記述やコードなど)にまつわる質問に対し回答できる
- 記事執筆を行える
- Excelで使用する関数にまつわる質問に回答できる
- 翻訳に関する質問に回答できる
- 詩や歌詞づくりを依頼すると実際に行ってくれる
- 小説の執筆を行ってくれる
- 読書感想文を手掛けられる
- クイズやなぞなぞなど、ゲームの内容を企画できる
- 文章の要約、添削、校正、変換といったライター業務を行える
- 自社製品やサービスに関する問い合わせに対応するカスタマーサポート
- 自動文章校正
- 市場調査
2.「ChatGPT」のメリット
(1)時間短縮につながる
ChatGPTを用いれば自身で考える手間を省くことができます。
検索エンジンと比べ、知りたい情報を入力すると即座に回答してくれるため、自身で情報を探す必要がなく、時間を短縮することができます。
例えば、記事構成や企画、クイズ、ゲームの作成など、自身で考えると比較的時間がかかるものでもChatGPTなら即座に考案してくれます。
内容の整合性に注意する必要はありますが、ChatGPTが教えてくれた内容を企画の土台として使えば大幅に時間を削減できます。
(2)幅広いジャンルの膨大なデータからの情報収集に使える
ChatGPTはインターネット上にある膨大なテキストデータを学習したAIチャットです。自身が属する業界以外の分野に関する知識も豊富に備えているため、情報収集先として活用しやすいといえます。
(3)悩みを相談できる
ChatGPTは友人や同僚に相談するような悩みについても回答してくれます。
高い自然言語処理能力を持ち、過去のやりとりを記憶してその情報をもとに回答をしてくれるので、人間が書いたようななめらかな文章で回答してくれます。
そのため、人に相談するかのように自身の悩みを打ち明けると、原因や対策を回答してくれます。
検索エンジンで対策を調べるよりも人間味があるので、悩みの解決に繋がる可能性が高いです。
リアルで相談しづらいことも、ChatGPTに相談することでよいアドバイスを貰える可能性もあります。
3.「ChatGPT」のデメリット
OpenAIはテキスト生成モデルの「GPT-2」の頃から「人間を超えたAIを開発してしまったのであまりにも危険」などという誇大広告とも言える主張を繰り返してきましたが、AI研究の専門家によると、「それほどすごくない」そうです。
(1)必ずしも正解ではない
ChatGPTに質問をすると流暢な回答が返ってくるため「正しい内容」であると認識しがちです。
しかし、正確性に欠ける情報や文章が混ざっている場合もあるため注意が必要と言われています。
ChatGPTは大量のテキストデータを学習することで、自然言語処理の能力を獲得しますが、それでもすべての文章を完全に理解することは難しいため、正確性に欠ける情報や文章が生成されることがあるのです。
確実に正確な情報が欲しい場合は、ChatGPTに頼りすぎずに、念のためご自身で調べる必要があると言えるでしょう。
ただし「正確性」の問題は、「Wikipedia」(世界中のボランティアの共同作業によって執筆及び作成されるフリーの多言語 インターネット百科事典)についても言えることではあります。
(2)専門性の高い質問には答えられない
ChatGPTは回答幅が広い一方で、専門性の高い質問には返答できない場合があります。
幅広い内容に対応できるChatGPTですが、なんでもかんでも回答出来る訳ではない点は押さえておく必要があります。
ChatGPTは、機械学習で習得したデータをもとにユーザの質問に回答します。
そのため、十分に学習できない内容を質問している場合や明確に答えがない質問をしている場合、支離滅裂な回答が返ってくることがあります。
またChatGPTは、2021年までの情報を元に作られているので、それ以降の情報には対応していない場合があるので注意が必要です。
(3)人間のような創造性・独自性がない
「独創性」と言い換えてもよいかもしれませんが、人間にはそれぞれの個性があり、創造性・独自性を持っています。
しかし、ChatGPTを使って詩や小説のような文章を書かせても、一応「それらしいもの」が出来上がりますが、「独創性」はありません。
盗作音楽や小説の盗作のような「盗作・盗用」や「ハゲタカジャーナル」のような粗悪学術誌に掲載される薄っぺらな学術論文にもある「コピペ論文」と似た問題がありそうで、すでに上智大学や東京大学では「ChatGPTを使用したレポートや論文は認めない」方針を打ち出しています。
(4)不確かな情報や誤った情報が拡散される危険性がある
人間が作成したような自然な文章を生成することが可能なので、悪用される危険性があります。
正確性の乏しい情報や文章を大量にインターネット上に発信してしまった場合、自然な文章なので人間が作った文章と判別が難しくなってしまいます。
SNSやインターネットが普及した現代では、不確かな情報があたかも事実のように流れてしまうことで、世間が混乱してしまう恐れがあります。
(5)「サイバー攻撃」などの犯罪に利用される危険性がある
カナダの情報セキュリティ会社のブラックベリーは、Chat GPTが「サイバー攻撃」に悪用される可能性についてアンケートを実施し、その結果を発表しました。
今年の1月に実施されたこのアンケートには北米、イギリス、オーストラリアのIT専門家約1500人が参加し、その中の78%が「Chat GPTによると認められるサイバー攻撃が今後2年以内に起きる」と回答しました。
Chat GPTの場合、基本的に不適切な要求は拒否するように学習させていますが、特定のコードを書かせたりすることは十分可能であるため、悪性ウイルスを作るためのコード作成など、サイバー攻撃に利用される懸念があるということです。
①フィッシングへの悪用
Chat GPTは自然な対話を実現できるため、サイバー犯罪者がユーザーから情報をだまし取るために利用される可能性があります。
例えば、「スピアフィッシング」と呼ばれる攻撃手法があります。ターゲットとなる人物のプロフィールを調査し、そのターゲットに狙いを絞ってフィッシング詐欺を図る攻撃です。ターゲットの情報を基に、Chat GPTで巧妙に作られたフィッシングメールを送り付ける事例が報告されています。
②悪性コードの作成
Chat GPTを使えば、ビジネスに役立つプログラムのコードを生成することもできます。
その反面、悪意のある人物によって悪性コードを作成するために利用される可能性も否定できません。Chat GPTを用いて自動的に悪性コードを作成し、システムに侵入するための脆弱性を突く、といった攻撃への注意も喚起されています。
③「クレジットマスター」というクレジットカード不正利用に使われる恐れ
クレジットカードの不正利用には、「スキミング」や「フィッシング詐欺」といった手口があります。これらの手口は、現在利用しているクレジットカードが対象です。
一方「クレジットマスター」は、使用状況にかかわらず、全てのクレジットカードが攻撃対象となり得ます。
「クレジットマスター」とは、他人のクレジットカード番号を特定する不正行為です。攻撃者はクレジットカード番号の規則性を悪用し、他人のカード番号を割り出します。取得したクレジットカード番号は、通販サイトやオンライン決済で不正利用されます。カードを盗んだり不正に読み取ったりする作業が不要なため、誰しも被害に遭う恐れがある手口です。
クレジットマスターはクレジットカード番号の以下の規則性を突き、カード番号を特定します。
- 国内のクレジットカード番号は16桁
- 先頭6桁の「BINコード」はカード発行会社の固有番号
- 残り10桁は個人番号
- 有効期限は主に3〜5年
- セキュリティコードは3桁または4桁
通販サイトの中には、クレジットカードの「氏名」の入力が不要なサイトが数多くあります。そうしたサイトの決済画面で「生み出したカード番号」と「有効期限」「セキュリティコード」を総当たりし、正しい組み合わせを特定する仕組みです。
この正しい組み合わせを特定する「総当たり」に、Chat GPTが使われる恐れがあるのです。
④風評被害につながる恐れ
Chat GPTは、人工知能を用いた自然な対話を可能にするため、不適切な発言や情報を拡散する可能性があります。例えば、Chat GPTが人種差別的な言葉を使用すると、その情報が拡散され、社会的な風評被害を引き起こす可能性があります。
Chat GPTの安全性を確保するためには、精度をさらに高め、悪用される可能性を最小限に抑えるための努力を続けなければなりません。 そして、利用者としては常に情報の正確性や悪用の可能性にも気を遣っていかなければなりません。
(6)人間のような論理的思考力・判断力や倫理性はなく限界がある
Chat GPTは便利なツールですが、限界も指摘されています。まず、Chat GPTはあくまでも自動応答のためのツールであり、人間と同様の論理的思考力や判断力は備えていない、という点です。
そのためChat GPTには限界があり、複雑な問題には対応できない可能性は否定しきれません。
また、Chat GPTが生成する応答には、誤った情報や不適切な発言が含まれる恐れもあり、倫理的な問題にも今後対応していかなければなりません。
(7)著作権法違反や個人情報保護法違反になる恐れもある
AIが学習するデータの取り扱いを巡っては、著作権法違反や個人情報保護法違反になる可能性もあります。