4000年の歴史を持つ中国には、多くの故事やそれに由来する「四字熟語」がたくさんあります。これは人類の叡智の結晶と言っても過言ではありません。
「自然」「風景」を表す四字熟語もたくさんあります。そこで5回に分けてご紹介したいと思います。
最初は「自然を愛でる」四字熟語です。
1.中秋玩月(ちゅうしゅうがんげつ)
仲秋の夜に月を見て楽しむ宴会を催すこと。
「中秋」は仲秋のことで、仲秋は秋を三分割した中の月のことで、陰暦八月十五日のこと。
「玩月」は月を見ること。または、愛でること。
「仲秋翫月」とも書きます。
2.煙霞痼疾(えんかのこしつ)
自然の風物をこよなく愛すること。また、隠居して自然と親しみながら生活すること。
「煙霞」はもやと霞のことから、自然の風物のこと。「痼疾」は長く治らない病気、持病。
自然を愛でる心が極めて深いことを、長く治らない持病にたとえた言葉です。
「烟霞痼疾」とも書きます。
3.吟風弄月(ぎんぷうろうげつ)
自然の風月を友として詩歌をうたうこと。また自然の風景を題材に詩歌を作ること。また、心静かに楽しみ、さっぱりして俗気がないことの形容。
「吟風」は風に吹かれながら詩歌を吟じること。「弄月」は月を眺めて楽しむこと。
「風に吟じ月を弄(もてあそ)ぶ」と訓読します。
4.泉石膏肓(せんせきこうこう)
人里から離れて、自然を愛し、その中で暮らすことに病みつきになること。
「泉石」は泉水と石ということから、自然の景色や、自然そのもののこと。
「膏肓」は心臓の下、横隔膜の上の部分のことで、ここは病気になると治療のための鍼も薬も届かないために、治すことが出来ない場所とされています。
自然を愛好することにはまりこみ、もはや癒しがたい病気といえるほどになることから。
5.淵明把菊(えんめいはきく)
風流をこの上なく愛する人のたとえ。
「淵明」は人の名前で、東晋の詩人の陶淵明のこと。「把菊」は菊の花を摘むこと。
九月九日の「重陽の節句」に祝いの酒がなく、することがないので菊の花を摘んでいると、郡の長官の使いが酒を持ってきたので、陶淵明は喜んで飲み干して、酔って家に帰ったという故事から。
6.風光明媚(ふうこうめいび)
自然の眺めが清らかで美しいこと。また、そのさま。
「風光」は自然の眺め・景色。「明媚」は清らかで美しいさま。
7.遊山玩水(ゆうざんがんすい)
山や川などの美しい自然の景色を見て、自然を楽しむこと。
「玩」は満足するまで楽しむこと。
「山に遊びて水を玩(もてあそ)ぶ」と訓読します。
「遊山」は「游山」とも、「玩水」は「翫水」とも書きます。