日本語の面白い語源・由来(い-③)一本槍・糸を引く・一緒くた・市松人形・一言居士

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一本槍

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.一本槍(いっぽんやり)

槍試合

一本槍」とは、目標や手段や態度を一つに絞り、終始それで押し通そうとすること、唯一の得意技のことです。

一本槍には、文字通り一本の槍の意味や、槍一突きで勝負を決めることを表す以外に、一本の槍しか持たない下級武士の意味もあります

そのような武士は、一本の槍で敵を倒す以外に方法がありません

たった一つの武器で戦うところから、一本槍は、ただ一つの方法や手段、唯一の得意技の意味や、それらで終始押し通すことを意味するようになりました。

余談ですが、「七本槍(しちほんやり)」という言葉があります。これは、昔、合戦の時に槍で巧名を立てた七人の勇士のことです。特に「賤ヶ岳(しずがたけ)の七本槍」(*)は有名です。

(*)1583年(天正11年)に起きた「賤ヶ岳の戦い」(近江国伊香郡(現:滋賀県長浜市、旧:伊香郡木之本町)の賤ヶ岳付近で起きた羽柴秀吉と柴田勝家の戦い)で、豊臣方で功名をあげた以下の7人の若武者のこと

  • 脇坂安治(わきざかやすはる)
  • 片桐且元(かたぎりかつもと)
  • 平野長泰(ひらのながやす)
  • 福島正則(ふくしままさのり)
  • 加藤清正(かとうきよまさ)
  • 糟屋武則(かすやたけのり)
  • 加藤嘉明(かとうよしあきら/よしあき)

余談ですが、講談に「長短槍試合」というのがあります。これについては、「豊臣秀吉の人たらしの極意がよくわかる長短槍試合という講談」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。

2.糸を引く(いとをひく)

糸を引く

糸を引く」とは、裏で指図して他人を操ることです。

糸を引くは、見物人から見えないよう、陰から糸を引っ張って操り人形を動かすところから出た言葉です。

なお「糸を引く」という言葉は、綿や繭などから糸を引き出して紡ぐことや、腐った食品など粘り気が出て糸を引いた状態、影響などが長く続いて絶えないことなどにも用いられますが、これらの意味で使う「糸を引く」は操り人形とは関係ありません。

余談ですが、関連記事として「黒子と二人羽織と傀儡」という記事も書いていますので、ぜひご覧ください。

3.一緒くた(いっしょくた)

いっしょくた

一緒くた」とは、雑多な物事をひとまとめにすること、秩序なく一つになっていること、同一視することです。「ごちゃまぜ」とも言います。

一緒くたの「くた」は雑多な物事をまとめることから、「がらくた」の「くた」と同じく、「ゴミ」を意味する「あくた(芥)」の「くた」とする説が定説となっています。

しかし、「揉みくちゃ」を「揉みくた」とも言うことから、オノマトペ(擬態語)の「くちゃくちゃ」の「くちゃ」が変化した「くた」からとも考えられます

「くちゃくちゃ」は食べ物を噛む音を表すほか、しわしわであるさまや物事が乱れていさまも表します。

なお、私のこのブログのタイトルも「団塊世代の我楽多(がらくた)帳」としていますが、自分としては決して「ゴミ」のようなものとは考えておりません。

読者の皆さんに「現在多くの日本人が正しいと思っている常識の中にはたくさんの誤りがあること(たくさんの「嘘」があること)」に気付いてもらったり、「面白くて役に立つ有益な情報」を提供しているものと自負しています。

私が記事で「嘘」と書いているものの中には、皆さんにとって俄かには信じがたい事柄もあるでしょう(例えば「明治天皇が即位直後に暗殺されて、長州出身の大室寅之祐という人物にすり替わったという話」「GHQの闇・天皇制の闇・国際連合の闇の話」など)が、私は真面目に調べて書いているつもりです。

4.市松人形(いちまつにんぎょう)

市松人形

市松人形」とは、木くずを練り固め、胡粉を塗り、手足が動くように作られた人形のことです。着せ替えや抱き人形として遊ばれました。

「東人形」、「京人形」とも呼ばれ、京阪地方では『いちまさん』の愛称で親しまれています。

市松人形の語源は、江戸中期の歌舞伎役者 佐野川市松に似せて作られたからとする説が定説となっています。

その他、市松人形の語源には、次のような多くの説があります。

市松人形が元々は男児の人形であったといわれること、人形の名品は京で作られていたこと、佐野川市松が若衆形・女形を演じるようになったのは、京から江戸へ下った後であることなどから、京の舞台で子役として人気を得ていた頃の市松に似せたとする説

佐野川市松が着たことで広まった市松模様(石畳模様)の衣装を着せたことから、「市松人形」と呼ばれるようになったとする説

当時は「市松」という名前の子が多かったからや、親孝行な市松という子の姿を模したとする説

私が子供の頃に住んでいた明治20年代に建てられた京町家にも、古い市松人形がありました。曾祖母のものだったのかもしれません。

5.一言居士(いちげんこじ)

一言居士

一言居士」とは、何事につけ何か言わないと気が済まない人のことです。「いちごんこじ」とも言います。

一言居士の「居士」は元は仏教語で、梵語の「gŗhapati」に由来します。

古代インドでは資産家の家長を指し、中国では学徳が高くても仕官しない人を「居士」と言いました。

日本では在家で修行する男子を言い、江戸時代頃から、男性の「戒名」の下に付ける敬称となりました。

近代に入ると、ある性質を持った人に対し、親しみや軽いさげすみの意味を込めて「◯◯居士」と呼ぶようになり、何かにつけひとこと言わないと気が済まない人を「一言居士」と言うようになりました。

現代では、TwitterやFacebookなどのSNSに盛んに意見投稿する人も、「一言居士」と言えますね。