日本語の面白い語源・由来(こ-④)小芥子・ご多分に漏れず・狛犬・悉く・小春日和・此れ見よがし

フォローする



こけし

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.小芥子(こけし)

こけし

こけし」とは、東北地方の郷土玩具です。ろくろ挽きの木製人形で、丸い頭に円筒状の胴からなります。

こけしの語構成は「コ(小)+ケシ(芥子)」で、頭部だけに髪を残した子供の髪型が芥子の実に似ていることからで、古くは「芥子坊主」や「お芥子」などとも言いました。

ケシの実

こけしの語源には、「子消し」や「子化身(けしん)」に由来する説もありますが、全く根拠がありません。

その他、木を削って作ることから「こげし(木削子)」や、木の削り屑を意味する「こけら(杮)」の「こけ」に、「おとこ衆」「こども衆」などに使われる「衆」が変わった「し」がついたものとする説もあります。

2.ご多分に漏れず(ごたぶんにもれず)

ご多分に漏れず

ご多分に漏れず」とは、例外ではなく、他と同じようにという意味です。「ご他聞に漏れず」や「ご多聞に漏れず」と書くのは誤りです。

多分」は、「大部分」「大多数」の意味です。

大多数の人が漏れなく付き従うという意味から、ご多分に漏れずは「他の大部分と同じように」「世間並み」「予想通り」という意味になりました。

「ご(御)」が付かない「多分に漏れず」の例が古く、「ご(御)」が付いて「ご多分に漏れず」となったのは、「多分(大多数)」が「世間様」というニュアンスで捉えられたためと思われます。

3.狛犬(こまいぬ)

狛犬

狛犬」とは、社寺などに置かれる一対の獅子や犬に似た獣の像のことです。

狛犬は古代インドやエジプトで、守護獣として獅子(ライオン)の像を置いたのが起源といわれます。
それが中国・朝鮮半島を経て日本に伝わったことから、「高麗(高句麗)」の犬ということで「高麗犬(こまいぬ)」と呼ばれるようになったというのが定説となっています。

その他、狛犬の語源には、魔除けに用いたことから「拒魔(こま)」の犬とする説もあります。

日本では、平安時代に向かって右側が口を開けた「阿形」の獅子、左側が口を閉じた「吽形」の狛犬で「阿吽」を表すようになり、鎌倉時代以降に一般化しました。

現代では、両者共に「狛犬」と呼び、形は阿吽共に獅子が一般的です。

4.悉く(ことごとく)

悉く

悉く」とは、残らず、全て、皆のことです。

悉くは、「すっかり」「残らず」「全部」を意味する副詞「ことごと(悉)」に接尾語「く」がついた語です。

「ことごと」は上代から見られる語で、「事」を重ねて物事のすべてを表した「事事」に由来します。

同様に「事」を重ねた言葉には、「大袈裟である」「仰々しい」を意味する形容詞「事々しい」があります。

「ことごとく」は平安以降に見られる語形で、はじめは漢文訓読系の文章で用いられました。

5.小春日和(こはるびより)

小春日和

小春日和」とは、初冬のあたかも春のような穏やかで暖かい日和のことです。

さだまさし作詞作曲で、山口百恵が歌った「秋桜(こすもす)」の歌詞でもよく知られていますね。

小春を「春先」の意味と誤解し、春先の暖かくなり始めた頃に「小春日和」を使う人が多いですが、春に使うのは誤用です。

「小春」は、旧暦10月(新暦の10月下旬から12月上旬頃)の異名です。

この頃には、穏やかで暖かい日が続き、あたかも春のようであることから「小春」といいます。

そのため、小春日和は11月頃の穏やかで暖かい天気の意味となります。

小春日和のほか、「小春空」や「小春凪」など「小春」のつく言葉は、冬の季語です。

6.此れ見よがし/是見よがし(これみよがし)

これ見よがし

これみよがし」とは、これを見よといわんばかりに、得意になって見せつけたり、当てつけがましくしたりするさまのことです。

これみよがしの「がし」は接尾語です。

古くは「かし」と清音で、文末にあって相手に念を押す気持ちを表す助詞でしたが、近世に「がし」と濁音化し、命令文に付いて強い願望を表すようになりました。

つまり、「これみよがし」は「これを見てほしい」というのが原義です。