日本語の面白い語源・由来(ひ-⑦)瞳・日・ピラフ・Pコート・びっくり・秘書・枇杷・雛

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瞳

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.瞳/眸(ひとみ)

黒木瞳

「瞳」と言えば、私は黒い瞳が魅力的な女優・黒木瞳さんをまず思い浮かべます。ただしこの芸名は、出身地の福岡県八女市黒木町(くろぎまち)に因んで、同郷の作家・五木寛之さん(八女市出身)が命名したそうです。

」とは、「瞳孔(どうこう)。黒目」のことです。まなこ。目。視線。

瞳の語源には、「ヒトミ(日止視)」と「ヒトミ(人見)」の意味の二説あります。
「日止視」の意味はよく分かりませんが、日光を見た時に見えなくなるという意味とすれば、瞳が見るためのものであるにも関わらず、見えないことを基準に置くのは不自然で考え難いものです。

瞳は人を見るだけのものではないため、「人見」の説もおかしいように思えますが、相手のひとみを正面から見た時、そこには常に自分(人)の姿が写っているため、この説は十分に考えられます。

漢字「瞳」の「童」は「穴を通す」という意味で、「わらべ」や「わらわ」ではありません。

「瞳」の字は「眼球を突き抜ける穴」で「瞳孔」を表しています。

もうひとつの漢字「眸」の「牟」は、「もとめる」「むさぼる」の意味があり、「眸」は「まぶたを押しのけて見る目」の意味があります。

「瞳」が目の中の黒い部分を指すのに対し、「眸」は「見開いた目玉」「目を見開いてよく見る」といった意味を含んでいます。

2.日(ひ)

日

」とは、「太陽。日光。朝から夕まで。昼間。陽。地球が一回自転する間。二十四時間。日数。ひにち。一日。天候。日和」のことです。

日は元々「太陽」を指し、太陽は昇り沈むことから「一日」も表すようになった言葉です。
『名義抄』には「日、陽、火 ヒ」とあり、太陽は燃え盛っているものなので、「火」と同源と考えることができます。

しかし、上代特殊仮名遣いで「日」の「ひ」は「甲類」、「火」の「ひ」は「乙類」であることから、「日」の「ひ」と「火」の「ひ」は別語で、語源は未詳です。

漢字の「日」は、太陽を描いたものです。

「にち」と読むのは「呉音」、「じつ」と読むのは「漢音」です。

3.ピラフ/pilaf

ピラフ

ピラフ」とは、「バターで炒めた米に玉ねぎ・肉・エビなどを入れ、香辛料で調味し、スープで炊いた洋風の飯」です。

ピラフはトルコ料理として有名ですが、米食の盛んな中近東で広く食べられるもので、原産はインドともいわれます。

元々は、ペルシャ語・トルコ語で「煮た米と肉」を意味する「プラウ」や「ピラヴ」と呼ばれる料理でした。

これが、フランス語では「pilau」「pilaf」、英語では「pilaf」、イタリア語やルーマニア語でも「pilaf」と呼び、日本では英語を主にフランス語などから「ピラフ」と呼ぶようになりました。

一種の焼き飯なのでチャーハンと混同されることもありますが、ピラフとチャーハンとの違いは、チャーハンが炊いた米を炒めるのに対し、ピラフは炊いていない米を炒める点が大きな違いです。

また、リゾットとの違いは、ピラフが洗った米で作るのに対し、リゾットは洗っていない生米から作るところにあります。

4.Pコート/ピーコート/pea coat(ぴーこーと)

Pコート

ピーコート」とは、「厚手ウールのダブル前で腰丈のコート」です。ピージャケット。

ピーコートは英語からの外来語で、「pea coat」と表記しますが、この「pea」は「豆(えんどう豆)」のことではありません。

ピーコートの語源には、「ピー(pea)」が「錨(いかり)の爪」の意味とする説と、オランダ語で表面が毛羽立った厚地の織物・ラシャを意味する「pij」に由来する説があります。

ボタンには錨があしらわれており、元々、漁師や船乗りが着る防寒用コートで、イギリス海軍が軍服として着用していたことなどを考慮すると、「ピー」は「錨の爪」の意味に由来すると考えられます。

しかし、ボタンが錨であることは、このコートの主だった特徴ではなく、厚いラシャのダブルの上着を指して「ピーコート」と呼ぶことから、オランダ語「pij(pij jekker)」の説が有力といえます。

5.びっくり

びっくり

びっくり」とは、「突然のことや意外なことに驚くさま」のことです。吃驚。喫驚。

びっくりの語源は、第一次世界大戦でドイツが負けた際、ドイツ人捕虜が「Wirklich(本当に?)」と叫んだことからとする説が、テレビのクイズ番組で取り上げられ広まりました。

しかし、既に室町時代には見られる語なので、ドイツ語に由来するはずがありません。
びっくりは、驚くさまのほか、わずかに動くさまを表し、「びくり」が促音化した語です。

「びくびく」「びくっと」「びくともしない」など「びく」の付く語は、かすかな動きを表す擬態語「びく(びくっ)」から派生したもので、「びっくり」が驚くさまを表すのも、驚いた際に小さく動くところからです。

びっくりの漢字には、意味からの当て字で「吃驚」や「喫驚」と書かれることもあります。

余談ですが、俗に「びっくりマーク」と呼ばれる下記のマークの正式名称は「感嘆符」「エクスクラメーションマーク(exclamation mark)」です。注意標識にも用いられています。

感嘆符

6.秘書(ひしょ)

秘書

秘書」とは、「要職の人に直属し、機密の文書や事務などを扱い、その人の補助をする人。また、その職」のことです。セクレタリー。

秘書の初出は、中国の歴史書『漢書』といわますす。
ここでは「宮中の蔵書」の意味で用いられ、監理する役所を「秘書省」、管理する職は「秘書監」といって、「秘書」のみでは「職(仕事)」や「人」を表していませんでした。

日本では平安時代に「秘書」の語が見られますが、ここでも「秘蔵の書物」「人に見せない本」など、文字通りの意味で用いられていました。

「職」や「人」を表すようになったのは、明治中期に金融機関で採用されたことによります。
英語の「secretary(セクレタリー)」や、オランダ語の「secretaris(セクレタリス)」の語は、江戸時代に日本に入っていますが、幕末から明治初期には「書記」と訳されていました。

そのため、「秘書」が「人」を表すようになった頃は、「書記」と合成した「秘書記」という言葉も用いられており、「秘書」が定着したのは大正になってからです。

7.枇杷(びわ)

枇杷

ビワ」とは、「中国原産のバラ科の常緑高木」です。果樹として栽培しますが、西日本の一部に野生種があります。

ビワが初めて文献に登場するのは、2世紀頃に書かれた中国の語学書『釈名』で、「推手前日批、引手却日把」とあります。

これは、枇杷の「批(琵)」と「把(琶)」の意味が演奏方法にあることを述べたもので、元々は楽器の琵琶が「枇杷」と表記されていたことがわかる文献です。

植物のビワが「枇杷」と表記されるのは3~4世紀ほど後のことで、ビワの栽培が盛んになり始めた頃と通じ、ビワの形が楽器の琵琶と似ていることから付いた名と考えられます。

ビワの葉の形が琵琶に似ているとも言われますが、形が似ているのは葉ではなく実です。

その他、ビワの語源には「ヒロハ(広葉)」の意味とする説もありますが、「ビハ(ビワの歴史的仮名)」が和語と誤解されていたため生まれた説なので間違いです。

「枇杷」は夏の季語で、次のような俳句があります。

・枇杷黄なり 空はあやめの 花曇(山口素堂)

・葉かくれぬ 夏こそ至れ 枇杷の色(大島蓼太)

・忌のことに つどひつ枇杷に 乳人と酌む(飯田蛇笏)

・枇杷の精 おとづれし日の 風甘き(中勘助)

8.雛(ひよこ)

ヒヨコ

ひよこ」とは、「孵化して間もない鳥の子。特に、鶏のひな。ひなどり。ひよっこ。まだ一人前でない者。未熟な者」のことです。

ひよこの語源は、「ヒヨヒヨ」と鳴くことから鳴き声の「ヒヨ」に「雛」の意味で「子」がついたか、鳴き声の「ヒヨ」に親しみを込めて添える接尾語の「こ」と思われます。

小刻みに跳ねるように動くさまを「ひょこひょこ」と言うことから、擬態語の「ひょこ」からとも考えられます。

「ひよこ」は「ひな」よりも新しい言葉で、どちらかと言えば俗語的な言葉でした。
幼い子の意味から、「ひよこ」は幼稚な者や未熟な者を指す言葉としても使われます。