日本語の面白い語源・由来(し-③)白詰草・食パン・真剣・知らぬ顔の半兵衛・猖獗・しつこい・しっちゃかめっちゃか

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シロツメクサ

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.白詰草(しろつめくさ)

シロツメクサ

シロツメクサ」とは、マメ科シャジクソウ属の多年草です。3枚の小葉は卵形または心臓形。春から夏、花柄の先に、白い小花を密集してつけます。クローバーの名でも知られ、四葉のクローバーは幸運の印とされます。別名「苜蓿(うまごやし)」

シロツメクサの「ツメクサ(詰草)」は、詰め物に使う草の意味です。

オランダから輸入したギヤマン(ガラス製品)を運ぶ際、割れないよう、この草を乾燥したものを詰め物として使っていたことに由来します。

シロツメクサの「シロ」は、花の色の「白」です。

単に「ツメクサ」とも呼びますが、「爪草」と書いた場合はナデシコ科の「ツメクサ」を表し、シロツメクサとは別種で語源も異なります。

「白詰草」「うまごやし(苜蓿)」は春の季語で、次のような俳句があります。

・夕映えの 白詰草を 編みゐたり(長谷川櫂)

・蝶去るや 葉とぢて眠る うまごやし(杉田久女

・詰襟の 中也気触れや 白詰草(岡本久也)

2.食パン(しょくぱん)

食パン

食パン」とは、特別な味付けをしないで箱型の型で焼いたパンのことです。薄く切ってトーストにしたり、サンドイッチにしたりして食べられます。

食パンの語源には5つの説があります。

正確なことは分かっていませんが、それぞれの説に関係する言葉の使われ方や背景などから、以下の順に有力と考えられます。

(1)「本食パン」の略。
第二次世界大戦以前のパン職人は、食パンを「本食」と呼んでおり、イギリス系の白パンを指していました。

本食パンは、西洋料理の「もと」となる食べ物のパンという意味です。

(2)「主食用パン」の略。
日本にパンが伝わった当時はイースト菌がなかったため、食パンのように大きく膨らむパンは作れず、菓子パンが主流となっていました。

1862年、イギリス人のパン職人ロバート・クラークが横浜で創業した「ヨコハマベーカリー」で山型食パンが作られました。

これが、菓子パンではなく、米のように主食として食べられるパンということから、「食パン」と呼ばれるようになりました。

(3)「消しパン」ではなく「食べられるパン」の意味。
パンは食べる以外に、デッサンの消しゴム代わりとしても使われており、その「消しパン」と区別するために、食べられる食用のパンという意味で「食パン」と呼ぶようになりました。

パンが食べるものであること以上に、消しゴムの役割をするものという認識が広まっていなければ成立しない説のため、考え難いものです。

(4)「フライパン」ではなく「食用のパン」の意味。
フライパンも「パン」と呼び、キッチンには2つのパンが存在することから、「食用のパン」として区別するため、「食パン」と呼ぶようになりました。
この説では、他の食用パンが「食パン」と呼ばれない理由が明確でありません。

(5)酵母に食べられたパンの意味。
ふっくらと膨らんだ食パンには隙間ができるため、その穴を酵母に食べられたものと見て、「食パン」と呼ぶようになりました。
酵母を使っているために隙間ができることは、客ではなくパン職人が知っていることなので、お店による命名となりますが、「食べられたもの」として売り出すはずないため、この説も考え難いものです。

3.真剣(しんけん)

真剣

真剣」とは、真面目であるさま、本気で取り組むさま、心がこもっている様子のことです。

文字通り、真剣は本物の刀剣のことで、木刀や竹刀に対していう語です。

そこから転じて、真剣は戯れではなく、本気であること。まじめであることを意味するようになりました。

4.知らぬ顔の半兵衛(しらぬかおのはんべえ)

知らぬ顔の半兵衛

知らぬ顔の半兵衛」とは、よく知っていながら全然知らないふりをすること。また、知らないふりを決め込んで取り合わない者のことです。

知らぬ顔の半兵衛は、知らないふりをする者を人名のように呼んだものです。

名前が「半兵衛」になったのは、戦国時代屈指の知将でとぼけるのがうまい竹中半兵衛(竹中重治)に由来する説が有力です。

略して「半兵衛」と言ったり、「知らぬ顔」が音便化して「知らん顔」になったり、「半兵衛」を「反兵衛」と書いた例もあります。

知らんぷりを決め込むことは、「知らぬ顔の半兵衛を決め込む」の形で用いられます。

5.猖獗(しょうけつ)

猖獗

2019年12月に中国・武漢で発生し、3年半にわたって世界中に蔓延する「パンデミック」となった新型コロナウイルス肺炎(COVID-19)がありましたが、これはまさに「猖獗」という言葉がぴったりです。

猖獗」とは、有害なものが社会にはびこり、勢いを増すこと。猛威を振るうことです。

」と「」の漢字は、ともに「狂う」「猛る」「暴れ回る」を意味します。
これらが合わさった「猖獗」は、猛り狂うこと。転じて、悪いものが猛威を振るうことを意味するようになりました。

多くは「猖獗を極める」の形で使い、悪い物事の広がりがこの上もなく勢い盛んになることを表します。

6.しつこい

しつこい

しつこい」とは、つきまとってうるさい、執念深い、色・味・においなどが濃厚なことです。

しつこいは、とりついて離れない意味の「執(しつ)」に、形容詞をつくる接尾語「こい」もしくは「濃い」が付いた語と考えられています。

「湿こい」や「湿濃い」の漢字表記も見られますが、他に「執拗い」や「執念深い」を「しつこい」と読ませた例もあり、基本的にはひらがな表記されているため、一部の表記だけを取り上げて語源を求めることは適切ではなく、これらはすべて当て字と考えた方が良いようです。

明治時代に「執拗」を「しつくどい」と読ませた例があるため、「しつくどい」が変化したとする説もあります。

しかし、明治時代に生まれた語が、遅くとも室町時代には使われていた「しつこい」の語源となるはずがありません。

しつこいの語源には他に、作りつけることを意味する「しつけ(仕付け・躾)」に、「濃い」が付いた語という説もありますが、近い音の言葉を探して結びつけただけと思われます。

7.しっちゃかめっちゃか

「しっちゃかめっちゃか」は、「物事が入り乱れているさまのこと」「めちゃくちゃなこと」です。「しっちゃかめっちゃかな騒ぎ」などと使います。

似たような言葉に「はちゃめちゃ」や「めちゃくちゃ」、「むちゃくちゃ」があります。それぞれ漢字で破茶滅茶、滅茶苦茶、無茶苦茶と表現されていますが、ニュアンスが若干違います。

語源については次の三つの説があります。

第一の説は「奈良時代の弦楽器」です。ちいちゃか(弛衣茶伽)は弦が23本もある楽器で、よほどの名人でなければ手に負えなくて演奏することができない、混乱をしてしまう、というのが語源です。

第二の説は、戦前の料亭や芝居の世界で使われていた隠語の「しっちゃか面子」です。その隠語の意味は「不器用な女性」だそうで、“しっちゃか”という言葉が使われていたということがあったとしても、どうもこじつけのような感じがあります。

第三の説は「失茶化滅茶化」で茶化すこと、つまり冗談としてはぐらかせていると滅茶苦茶になってしまう、冗談なのか冗談でないのかがわからなくなってしまうという、それこそ混乱しすぎて何がなんだかわからない失茶化滅茶化(しっちゃかめっちゃか)な状態になってしまうということからきているというものです。