日本語の面白い語源・由来(し-⑳)正月・師走・吃逆・進退窮まる・自分・しょうもない・しょうがない・シカト・髑髏

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正月

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.正月(しょうがつ)

初詣

正月」とは、一年の最初の月です。1月。特に、年頭の祝いをする三が日から松の内(元日から7日、もしくは15日まで)までを指します。

正月の語源は、事物の起源や語源・語義を解説した室町中期の類書『壒嚢鈔』の説が有力とされます。
それには、「政治に専念した秦の始皇帝の降誕の月をセイグヮツ(政月)と言っていたものが、正月と書かれるようになり、シャウグヮツと改められた」とあります(正月の旧かなは、「シャウグヮツ」)。

行事としての正月は、歳神様を迎え、その年の豊作を祈る「神祭り」に由来するといわれます。

2.師走(しわす)

師走

師走」とは、旧暦12月の異称です。新暦にも言います。

しわすの漢字「師走」は当て字で、語源は以下の通り諸説ありますが未詳です。

師走の語源で最も有名な説では、師匠の僧がお経をあげるために、東西を馳せる月と解釈する「師馳す(しはす)」があります。
この説は、平安末期の『色葉字類抄』に、「しはす」の注として説明されています。
現代の「師走」と漢字の意味も近く、古い説であるため有力に思えますが、「師馳す」説は民間語源です。
ただし、「師走」の字が当てられた由来は、この説からと考えることはできます。

その他、師走の語源には、「年が果てる」意味の「年果つ(としはつ)」が変化したとする説。
「四季の果てる月」を意味する「四極(しはつ)」からとする説。
「一年の最後になし終える」意味の「為果つ(しはつ)」からとする説などがあります。

なお、「月の異称」については、「和風月名以外の月の異称をご紹介します。」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。

「師走」は暮の季語で、次のような俳句があります。

・旅寝よし 宿は師走の 夕月夜(松尾芭蕉

・白足袋の よごれ尽せし 師走哉(正岡子規

・けろけろと 師走の月夜の 榎(えのき)哉(小林一茶

・炭売に 日のくれかかる 師走哉(与謝蕪村

・物ぬひや 夢たたみこむ 師走の夜(加賀千代女

3.吃逆/噦り(しゃっくり)

しゃっくり

しゃっくり」とは、横隔膜の痙攣によって出る音声、その状態のことです。きつぎゃく。

しゃっくりは、「しゃくり泣き」「しゃくり上げる」などで使う「しゃくり」が音便化した言葉です。

しゃくりは、くりぬく意味の「さくり」が変化した言葉で、「しゃっくり」「しゃくり」「さくり」は同じ意味で使われることもあります。
しゃっくりが「くりぬく」を意味する言葉に由来するのは、腹がくりぬかれたような感じがするためです。

4.進退窮まる(しんたいきわまる)

進退窮まる

進退窮まる」とは、進むことも退くこともできず、困難な状態に陥ることです。

進退窮まるは、中国最古の詩集『詩経』の「人また言あり、進退維(これ)谷(きは)まる」によります。

「きわまる」が「谷まる」と書かれるのは、険しい山の谷間に落ちると、進みも退きもできない状態になるためです。

古く、「進退」は「しんだい」と読まれていました。

5.自分(じぶん)

自分

自分」とは、その人自身、私のことです。

自分の「分」は、本来備わっている性質を意味する「本分」の「分」で、「自分」は自らの力量を指す語でしたが、古くから「私自身」を意味する言葉としても用いられました。

最も古い「自分」の一人称の用法は、827年の『経国集』で、反射代名詞の用法は中世頃からです。

関西では「私」を意味する一人称でも、「あなた」を意味する二人称でも「自分」が用いられます。

6.しょうもない

しょうもない

しょうもない」とは、つまらない、くだらないことです。

しょうもないは、本来「しようもない(仕様もない)」で、発音のしやすさから変化したものです。

「仕」は当て字で、動詞「為る(する)」の連用形「し」。
「仕様」は「するさま」のことで、方法や手段を意味しました。

しょうもない(しようもない)は、手段や方法がないことを行おうとしたり、考えたりするのは無駄なことなので、「つまらない」を意味するようになりました。

江戸時代以降には、当て字で「性もない」と書かれた例も見られます。

7.しょうがない

しょうがないな・ドラえもん

しょうがない」とは、他に良い手段がない、やむを得ないことです。

しょうがないは、本来「しようがない(仕様がない)」で、発音のしやすさから変化したものです。

「仕」は当て字で、動詞「為る(する)」の連用形「し」。
「仕様」は「するさま」のことで、方法や手段を意味しました。

しょうがないは「手段や方法さえもない」という意味で使われていましたが、手段がないことから諦めの意味として使われるようになりました。

8.シカト(しかと)

花札・鹿十

シカト」とは、無視することをいう俗語です。

シカトは、花札の10月の絵柄「鹿の十(しかのとお)」が略された語です。

十月の札は、鹿が横を向いた絵柄であるため、そっぽを向くことや無視することを「シカトする」言うようになりました。

警視庁刑事部による『警察隠語類集』(1956年)には、「しかとう とぼける。花札のモミヂの鹿は十でありその鹿が横を向いているところから」とあり、この頃はまだ「シカト」ではなく「しかとう」で、賭博師の隠語であったことがわかります。

その数年後には不良少年の間で使われるようになり、「しかとう」から「シカト」に変化しました。

やがて、一般の若者にも「シカト」は使用されるようになりました。

9.髑髏(しゃれこうべ)

髑髏

しゃれこうべ」とは、風雨にさらされて白くなった頭の骨(頭蓋骨のことです。

「しゃれこうべ」「しゃりこうべ」「されこうべ」「髑髏(どくろ)」とも言います。

英語ではskull(スカル)です。

髑は、一文字で「ドク」とよみ、髏は一文字で「ロ」とか「ロウ」と読みます。

髑髏はもともと「ドクロ」で、「しゃれこうべ・しゃりこうべ・されこうべ」の漢字表記「髑髏」は当て字です。

しゃれこうべの「しゃ」は、「されこうべ」の「さ」が変化したもの(「さ」→「しゃ」)です。

しゃれこうべは、もともと「曝(さ)れこうべ」のことです。

こうべは「頭」のことで、曝れ(され)は、「長い間、風雨や日光にあたることで、色あせたり、くさってボロボロになる」ことです。

「長い間、風雨にさらされ、色あせた頭」=「風雨にさらされた白い頭の骨」ということで「されこうべ」、「されこうべ」が転じて「しゃれこうべ」、どちらもドクロと意味が同じなので「髑髏」という漢字を当てました。

「さ」を「しゃ」と言うのは、鮭を「サケ」といったり「シャケ」といったりするのと同じです。

今では、「しゃれこうべ」という人がほとんどで、「されこうべ」という人はほとんどいません。

なお、「しゃりこうべ」の「しゃり」の語源は、「舎利」とする説が一般的です。

こうべは「頭」のことで、舎利(しゃり)は「死んだ人の骨」のことです。

昔は、戦で死んでそのまま放置される人、道ばたなどに倒れてそのまま死ぬ人がいて、死体をそのまま放置することもありました。

「死んだ人のこうべ(頭)の骨」=「風雨にさらされた白い頭の骨」ということで「しゃりこうべ」、ドクロと意味が同じなので「髑髏」という漢字を当てました。