日本語の面白い語源・由来(て-①)鉄砲百合・田麩・天竺牡丹・顛末・凸凹・天衣無縫・天真爛漫・テント・ディスる

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鉄砲百合

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.鉄砲百合(てっぽうゆり)

テッポウユリ

テッポウユリ」とは、初夏に白色のラッパ状の花が横向きに咲くユリ科の多年草です。種子島、屋久島、沖縄諸島に自生。庭植えや切り花にもします。

テッポウユリは、その形状が鉄砲に似ていることからの名といわれます。
しかし、テッポウユリの花はラッパ状に開くため、鉄砲に似ているとは言い難いものです。

「ラッパ銃」とも呼ばれた「ブランダーバス」(下の写真)の砲口は広がっており、形状が似ていることからであれば、その鉄砲はブランダーバスのことと思われます。

ブランダーバス

また、「鉄砲」の名が付いたのは、鉄砲(火縄銃)(下の写真)が伝来した種子島に多く自生することも関係しているのでしょう。

火縄銃

「百合の花」は夏の季語で、次のような俳句があります。

・わすれ草 もしわすれなば 百合の花(山口素堂)

・百合の花 折られぬ先に うつむきぬ(宝井其角

・飴売の 箱にさいたや 百合の花(服部嵐雪)

・ひだるさを うなづきあひぬ 百合の花(各務支考)

2.田麩(でんぶ/でんぷ)

でんぶでんぶの入った巻き寿司

でんぶ」とは、タイ(鯛)やタラ(鱈)などの魚肉を細かくほぐし、砂糖・醤油・みりんなどで調味して煎り、粉末状にした食品です。

でんぶは、元々「田夫」と書いたため、「でんぷ」ともいいます。

田夫は「農夫」のほか、「田舎者」や「野暮」の意味でも用いられる語です。

魚をバラバラにする無骨さや、材料が大小不揃いな野暮ったさから、田舎風の粗野な食品の意味で「田夫」と称されました。

やがて、乾燥した「麩」に似ていることから、でんぶは「田麩」と漢字表記されるようになりました。

でんぶの原型となる食品は、江戸時代から作られており、「都春錦(としゅんきん)」と呼ばれていました。

都春錦は、田作り・昆布・山椒の樹皮・ごぼうなどに、古酒・醤油・塩・砂糖などで味を調え、煎ったケシの実をかけたものでした。

この都春錦が、干しダラなどを火で炙って肉をほぐした「ふくめ」や「ぼんぼり」という、室町時代から作られている料理と合わさり、簡略化されたものが現在の「でんぶ」です。

3.天竺牡丹(てんじくぼたん)

天竺牡丹

天竺牡丹」とは、ダリアの別名です。

天竺牡丹は、遠い異国から来た牡丹に似た花なので、この名があります。

天竺は中国や日本で用いた「インド」の古称ですが、ダリアはメキシコ原産です。ヨーロッパで栽培され、日本へはオランダ船によって長崎に持ち込まれた植物で、インドはまったく関係ありません。

天竺牡丹の「天竺」は、接頭語的に用いて「遠方の」「舶来の」を意味します。

同じように「天竺」が使われている名前には、モルモットの「天竺鼠」、そら豆の「天竺豆」、ゼラニウムの「天竺葵」などがあります。

「天竺牡丹」「ダリア」は夏の季語で、次のような俳句があります。

・天竺牡丹 仰山よろし おますなあ(小形さとる)

・大いなる 緋ダリア草に 逆しまな(原石鼎)

・なかんづく 緋の天鷲絨の だりあかな(原石鼎)

・ダリア大輪 崩れて雷雨 晴れにけり(臼田亞浪)

4.顛末(てんまつ)

顛末

顛末」とは、物事の始めから終わりまでの事情、一部始終のことです。

顛末の「顛」は「いただき」「てっぺん」の意味で、物事の最初を表します。
「末」は物事の最後を表し、顛末は始めから終わりまでのいきさつを意味します。

5.凸凹(でこぼこ)

デコボコ

でこぼこ」とは、物の表面に起伏があって平らでないこと(また、そのさま)、物事に優劣・大小などの差があって、釣り合いが取れていないこと(また、そのさま)です。

でこぼこの「でこ」は、「おでこ」など出ているものを表す語で、「出る」の意味からと思われます。

でこぼこの「ぼこ」は、くぼみや穴がたくさんあるさまをいう「ぼこぼこ」や、物が凹んだり、穴があいたりするさまの「ぼこっと」があるため擬音語と思われますが、穴があく意味の「ほげる」に由来する説もあります。

「でこぼこ」「でこでこ」「ぼこぼこ」が使われるようになったのは明治以降のことです。

江戸時代には「だくぼく」「だくりぼくり」が「でこぼこ」を表す語として広く用いられ、「でくぼく」や「でくまひくま・でこまひこま(凸間凹間)」などの形もありました。

6.天衣無縫(てんいむほう)

天衣無縫

天衣無縫」とは、人柄が天真爛漫であること(また、そのさま)、詩や文章に技巧などの余計なあとが見えず、自然かつ美しく完成されていることです。

また麻雀で「九蓮宝燈」(ちゅうれんぽうとう、ちゅうれんぽおとう、チューレンポートン)の別名です。「九蓮宝燈」とは、麻雀における役のひとつで、役満です。門前で「1112345678999+X」の形をあがった時に成立します。

九蓮宝燈

天衣無縫は、天女の衣服(天衣)には縫い目がない(無縫)という意味です。
そこから、詩や文章などでわざとらしい技巧がなく、自然でありながら完璧なことや、天真爛漫なことを「天衣無縫」というようになりました。

出典は中国の『霊怪録』で、次の話に基づきます。

郭翰とい青年が、夏の夜、庭で寝ていると、空から天女が降りてきた。
天女が着ている衣には縫い目がないので、不思議に思って尋ねると、天女は「天人の衣服は針や糸で縫ったものではありません」と答えたという。

7.天真爛漫(てんしんらんまん)

天真爛漫

天真爛漫」とは、飾ったところがなく、ありのままの姿が言動にあらわれるさま、明るく無邪気で、ほほえましくなるようなさまのことです。

天真爛漫の「天真」は、天から与えられた自然のままの姿で、飾り気がないこと。
「爛漫」は、花が咲き乱れるさまや、光り輝くさま、明らかに現れるさまのこと。

そこから、子どものように無邪気で憎めないさまをいうようになりました。

「天真爛漫」という言葉は、中国、宋代の詩人 蘇東坡の詩の中の句「天真爛漫是吾師」から広まりました。

陶宗儀の随筆『輟耕録』の中で、絵の出来栄えを「天真爛漫」と評したのを始まりとしているものが多いですが、『輟耕録』は元末の1366年に書かれた随筆で、蘇東坡の詩よりも300年ほど新しいものです。

8.テント/tent(てんと)

テント

テント」とは、支柱と布製の覆いからなる簡易な家屋で、解体して持ち運びできるものです。キャンプに用いるもの、サーカスや芝居の掛け小屋として用いるものなど多様です。

テントは、英語「tent」からの外来語です。

tentは「引き伸ばされた」「張った」を意味するラテン語「tentus」に由来します。

9.ディスる

ディスる

ディスる」とは、相手を否定する、批判する、けなすことです。

ディスるは、英語の「ディスリスペクト(disrespect)」を日本語的に動詞化した「ディスリスペクトする」の略です。

disrespectの「dis-」は否定的な意味を持たせる接頭辞、「respect」は尊敬すること、敬意を表すことを表し、ディスリスペクトは「否定すること」や「けなし」を意味します。

元々「ディスリスペクト」は、ヒップホップのアーティストが主に使用していた語です。

「ディスる」の形は、2007年頃からインターネットの掲示板やSNSなどで使われ始めました。