日本語の面白い語源・由来(て-②)天道虫・テスト・デジタル・丁字路・Tシャツ・為体・テンパる・手を拱く・でれでれ

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天道虫

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.天道虫/紅娘/瓢虫/てんとう虫(てんとうむし)

テントウムシ

てんとう虫」とは、テントウムシ科の昆虫の総称です。または、テントウムシ科のナミテントウ。

てんとう虫は漢字で「天道虫」と書き、「天道」は「太陽」のことです。
この虫は枝などの先端まで登って行って、行き場がなくると上に向かって飛び立つ習性があります。

それを見た民衆は、お天道様(太陽)に向かって飛んでいったのだと考え、「てんとう虫」の名がつけられたといわれます。

てんとう虫の漢字には、「天道虫」の他に「紅娘」と「瓢虫」があり、いずれもこの虫の姿をたとえたものです。
「紅娘」は、紅色で小さいところから。
「瓢虫」の「瓢」は、「ひょうたん」のような形をしているところからです。

「天道虫」は夏の季語で、次のような俳句があります。

・老松の下に 天道虫と在り(川端茅舎)

・冬越して わが耳たぶに てんと虫 (金子兜太)

・てんとう虫 私の肩で ひと休み(田坂めぐみ)

・てんとうむし おひさませおって おてんとうむし(佐々木玲華)

2.テスト/test

テスト

テスト」とは、学力や能力などの度合いを知るための試験、事物の良否や性能を調べること、事前に試すことです。

テストは「試験」や「実験」を意味する英語「test」からの外来語で、「土製の壺(甕)」を意味するラテン語「testum」に由来します。

testの語源が「壺」や「甕」に由来するのは、testumが錬金術の用語で「金属を溶かして品質を調べるための坩堝」の意味として用いられたからです。

ここからtestは、一定の条件下で正しく評価するものを表すようになり、試験や検査などの意味となりました。

3.デジタル/digital

デジタル

デジタル」とは、データを段階的に区切った有限桁の数値で表現する方法のことです。連続で表現するアナログに対する語。ディジタル。

デジタルは、英語「digital」からの外来語です。

「digital」の語源は、ラテン語「指」を意味する「digitus」で、10までの数が指で数えられるところから、「数字の」「計数型の」の意味で使われるようになりました。

数字形式のデータの意味で「digital」が使われるようになったのは、実用デジタルコンピューターが登場する1940年代より少し前の1938年からです。

4.丁字路/T字路(ていじろ/てぃーじろ)

丁字路

丁字路」とは、丁字形に交差している道路のことです。

丁字路は、その名の通り、漢字の「丁」の字の形をした道路のことです。
古くから丁字形をしたものは、略して「丁字」と呼ばれており、1508年の『六物図抄』にも「丁字」が使われています。

明治時代までは「丁字路」が一般的な呼称であったが、漢字の「丁」と英語アルファベットの「T」は形も似ており、「てい」と「ティー」で音も似ていることから、アルファベットが普及するにつれ、「T字路(ティーじろ)」と呼ばれるようになっていきました。

「T字路」が一般的に使われるようになった現在では、「ティー」をうまく発音できない人が「ていじろ」と言っていると誤解されるようにもなりました。

しかし、道路交通法でも「丁字路」が使われているように、本来の正しい呼び方は「ていじろ」です。

同じような変化をした言葉には、術後や出産前後に使用するふんどしに似た包帯の「T字帯」があり、これも正式には「丁字帯」です。

5.Tシャツ/ティーシャツ/T-shirt(てぃーしゃつ)

Tシャツ長袖Tシャツ

Tシャツ」とは、半袖または長袖の襟のないシャツのことです。

Tシャツは、ワイシャツのように言葉が変化した和製英語ではなく、英語「T-shirt(tee-shirt)」からの外来語です。

両袖を広げた時のシャツの形が「T」の字に似ていることから、「Tシャツ」と呼ばれるようになりました。

この語が生まれたのは1950年代のアメリカで、日本では1970年代から使われ始めました。

元々、下着の一種であったTシャツが、トップスとして普及した背景には、映画『欲望という名の電車』でマーロン・ブランドが着用し、流行したことが挙げられます。

また、広告やアートをプリントでき、自身の主張を表現できるファッションということが大きく影響しています。

6.為体/体たらく(ていたらく)

体たらく

体たらく」とは、ひどいありさま、なんとも情けない状態のことです。

今日では「なんという体たらくだ」という形で、軽蔑したり自嘲をこめて好ましくない状態をいう言葉となっていますが、これは近世以降の用法で、本来は悪い意味を含んだ言葉ではありませんでした。

体たらくの「体」は「様子」の意味で、「てい」と読むのは漢音。「たらく」は、断定の助動詞「たり」が名詞化した語。

「体」+「たらく」の「体たらく」は、「そのような状態である」という意味です。
「体たらく」が悪い状態を表す言葉として受け取られるようになったのは、悪い状態に対して使うことが多かったことからです。

「様子」を意味する言葉が、悪い状態を表すようになったのは「体たらく」に限ったことではなく、「さま(様)」が音変化した「ざま」も同じように「なんというざまだ」と使われています。

また、物事の状態を意味する「ありさま(有様)」も、多くの場合は悪い状態をいう際に用いられています。

7.テンパる

テンパる

テンパる」とは、余裕がなくいっぱいいっぱいになることです。

テンパるは、麻雀用語から出た言葉です。

麻雀で、あと一つの牌が入れば上がれる状態になることをいう「テンパイ(聴牌)」に、動詞化する接尾語「る」が付いた語が「テンパる」です。

一般にも、準備が整った状態、余裕を持って対応できる状態の意味で「テンパる」が用いられるようになり、物事が成就する直前の状態にあることを表すようになりました。

「直前の状態」「ぎりぎりの状態」という部分的な意味から、テンパるは「切羽詰まる」「余裕がなくなる」という悪い意味に転じて使われるようになりました。

8.手を拱く(てをこまねく)

手を拱く

手をこまねく」とは、事が起きたときに何もしないで傍観していること、また何もできないでいることです。手をこまぬく。

手をこまねくの「こまねく」は、「こまぬく」が音変化した語で、漢字ではどちらも「拱く」と表記します。

「こまぬく」は、両手の指を胸の前で組んで挨拶する中国の敬礼の一で、腕組みをするという意味もあります。

傍観する際には腕組みをすることが多いことから、手をこまねく(こまぬく)は「何もしないでいる」「何もできないでいる」の意味で使われるようになりました。

文化庁が発表した「国語に関する世論調査」では、手をこまねくを「準備して待ち構える」の意味と誤解している人が、「傍観している」と認識している人よりも多く、その数は年々増加しています。

このような誤用は、言葉の由来を知れば正しい意味を理解できることも多いですが、腕を組む姿は待ち構える印象もあるため、手をこまねくに関しては、語源で誤用を減らすことは困難です。

9.でれでれ

でれでれ

でれでれ」とは、態度・様子に締まりのないさま、特に、心ひかれる異性の前でだらしなく落ち着かないさま、媚びるさまなどを表わす語です。「でれる」「でれつく」などとも言います。

語源ははっきりわかりませんが、「照れる」という言葉から転訛したのかもしれません。