日本語の面白い語源・由来(は-⑮)初詣・バス・バーベキュー・ばつが悪い・春一番・馬鹿貝・ハネムーン・派手

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初詣

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.初詣(はつもうで)

初詣

初詣」とは、「新年に初めて神社仏閣に参詣すること」です。初参り。

初詣の「初」は名詞や動詞の連用形の上に付けて接頭語的に用い、「初めての」「新しい」といった意味を表し、「その年初めての」という意味でも多く用いる語です。

「詣(詣で)」は「参出(まゐいで)」から転じた「まゐで」が変化した語です。

漢字の「詣」は、「言」と「旨」からなり、言葉遣いに旨みがあるところまで上達することを表し、転じて、高い所に行き着くことを意味するようになった字です。

その意味がさらに転じて、神社や寺にお参りすることを表すようになり、「初詣」や「詣でる」など「参出」を表す字として使われるようになりました。

本来、「初詣で」と表記するのが正しいですが、一般的に「初詣」と表記され、俳句などでも「初詣」の表記が多く用いられます。

「初詣」は新年の季語で、次のような俳句があります。

・初詣 雪美事なる 太鼓橋(鈴木花蓑)

・御手洗の 杓の柄青し 初詣(杉田久女

・会者定離 仏心少し 初詣(保坂加津夫)

・みたらしの 四方にあふれて 初詣(鷹羽狩行)

2.バス/bus・バス/bath

観光バス

バス(bus)」とは、「大型の乗り合い自動車」です。

バスは英語「bus」からの外来語で、「全ての人のための」を意味するラテン語「omnibus」を省略した語です。

現在では省略された「bus」が用いられますが、「omnibus(オムニバス)」で「乗り合い自動車(バス)」を意味します。

「omnibus」が「乗り合い自動車」の意味になった由来は、バスの原型である乗り合い馬車の発着所となっていた雑貨屋の看板に「omnibus」と書かれていたためであるとか、フランスのバス会社の名前からといった説があります。
しかし、これらの説は定かなものではなく、「全ての人のための」という意味で十分に足ります。

バス

バス(bath)」とは、「洋風の浴槽。また、浴室」のことです。

バスは、英語「bath」からの外来語です。
「bath」は、「暖めること」を意味する印欧祖語に由来します。
バスの語源には、古代ローマ時代、温泉の街として発展したイギリスの「Bath(バース)」の地名にちなみ、「bath(バス)」になったとする説が多く見られますが、この説は反対です。

この地名の由来が、温泉がある街なので風呂の「bath(バス)」にちなんだもので、風呂の「bath(バス)」がイギリスの地名の「Bath(バース)」に由来するというのは間違いです。

3.バーベキュー/barbecue/B.B.Q.

バーベキュー

バーベキュー」とは、「肉・魚介類・野菜などを直火であぶり焼きしながら食べる料理」です。多くは野外で行います。

バーベキューは、「肉をあぶる木製台(木製架)」を意味するハイチ語がスペイン語に入り、「丸焼き」を意味する「barbacoa」となり、英語に入って「barbecue」となりました。

日本では「B.B.Q.(BBQ)」と略すことが多いですが、この他に英語圏では「Bar-B-Cue」「Bar-B-Q」などとも略します。

アメリカで野外のパーティー料理として発達したもので、日本でもアウトドア料理に位置づけられていますが、アメリカでは炭火焼きの肉を出すレストランを指すこともあります。

4.ばつが悪い(ばつがわるい)

ばつが悪い

ばつが悪い」とは、「その場の成り行きから、きまりが悪い」ことです。「罰が悪い」と書くのは誤りです。

ばつが悪いの「ばつ」は、その場の具合や調子を意味し、「ばつを合わせる」と言えば「話の辻褄を合わせる」「調子を合わせる」の意味です。

この「ばつ」の語源には、「跋」の意味からと、「場都合」の略の説があります。
「跋」は書物の後書きや結びを意味する語で、これらの意味から「具合」や「調子」の意味が派生することは、強引ではありますが考えられなくもありません。

しかし、単に具合や調子を意味しているのでなく、「その場」という時間的な要素を多く含んだ言葉であるあため、「場都合」の略が有力と考えられます。

5.春一番(はるいちばん)

春一番

「春一番」と言えば、団塊世代の私などはキャンディーズの大ヒット曲「春一番」をまず思い浮かべます。

春一番」とは、「立春後、初めて吹く風速8m/s以上の強い南寄りの風」です。日本海に低気圧が発達すると起き、気温が急上昇します。

春一番は、古くから石川県能登地方・三重県志摩地方より西の地方で船乗りが使っていた言葉が、気象用語として使われるようになったものです。

船乗りが「春一番」と呼ぶようになったのは、強風による漁師の遭難に由来するそうです。
それは、安政6年(1859年)3月17日(新暦)、長崎県五島沖に出た漁師53名が春の強風に遭い、全員遭難しました。

そこから、長崎県郷ノ浦町の元居地区では、春に初めて吹く強い風を「春一」や「春一番」と呼ぶようになったというものです。郷ノ浦町内の岬には、「春一番の塔」が建てられています。

「春一番」は春の季語で、次のような俳句があります。

・春一番 帆船無風の 壜の中(河村昇)

・春一番 黒猫縁に 耳立てゝ(正風子)

・春一番 髪逆立てゝ 峡をゆく(青砂)

・白波の 浮燈台や 春一番(岡本静子)

6.馬鹿貝(ばかがい)

馬鹿貝

バカガイ」とは、「浅海の砂底に生息する殻長約8㎝のバカガイ科の二枚貝」です。馬珂貝。クツワガイ。カムリガイ。

バカガイは、死ぬと殻から朱色の足をだらりと出します。
この姿を馬鹿が舌を出した姿に見立て名付けられたとする説が多く、最も有力な説とされています。

その他、バカガイに似た「ウマカイ(旨貝)」の名が転じたとする説。
柱が美味なのに対し、肉は味が劣ることからなどの説があります。

別名を「アオヤギ(青柳)」とされることもありますが、正確にはバカガイの剥き身のことを「アオヤギ」といい、殻も含めた全体の別称ではありません。

「馬鹿貝」は春の季語です。

7.ハネムーン/honeymoon

ハネムーン

ハネムーン」とは、「新婚後の約一ヶ月間。新婚旅行」のことです。

ハネムーンは、英語「honeymoon」からの外来語です。
「honey」は「蜜」、「moon」は「月」を意味し、「蜜月」や「蜜月旅行」とも訳されます。

元々、ハネムーンは「結婚してからの一ヶ月間」を意味します。
ハネムーンが「新婚旅行」を意味するようになったのは、その間に旅行をすることからの派生です。

ハネムーンが「結婚後の一ヶ月間」を意味するようになった由来は二説あります。
ひとつは、新婚期は蜜のように甘美に満ちた生活と、満月のようにすぐに欠けてしまうことをかけた戯言的造語とする説。
もうひとつは、古代ゲルマン人の風習で、子作りに励むため蜂蜜酒(ミード)を飲んで精力をつけたことに由来する説です。

8.派手

派手

派手」とは、「姿・形・色彩・服装・行動などが、華やかで人目をひくこと。また、そのさま」です。

派手の語源には、「映え手(はえて)」の変化した語とする説と「破手(はで)」の転とする説があり、後者が有力とされます。

「破手」は三味線組歌の用語で、古典的な組歌を「本手組」や「本手」と言い、それに対して従来の奏法ではなく、細かくにぎやかな奏法を「破手組」や「破手」と言いました。

元禄から享保にかけて、「破手」は三味線用語から歌舞伎や遊里などを評する語として用いられ、宝暦には、華やかで美しいさまを表す語として用いられました。

さらに、人の気質や態度にも意味が拡大し、「粋」や「風流」などと一部同じ意味で扱われていましたが、それらよりも劣る言葉として位置づけられ、江戸末期には「目立ちすぎる華やかさ」の意味が強調されるようになりました。

漢字の「派手」は当て字で、江戸から明治にかけ「花美」や「華美」も当てられていました。