日本語の語源には面白いものがたくさんあります。
前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。
以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。
1.箸(はし)
「箸」とは、「食べ物を挟むのに用いる二本で一対の棒」です。
箸の語源には、「挟むもの」という意味で、その役割に由来する説。
端の方でつまむことから、「はし」になったとする説。
「橋」や「柱」など、その形状から「はし」になったとする説。
古くは、一本の棒を折り曲げ、ピンセットのように挟んで使うもので、鳥の嘴に似た形というところから、「嘴(くちばし・はし)」を語源とするなど諸説あります。
これら箸の語源となる語は、相互に語源として扱われており、どれかが元というわけではなく、同じ語系と考えるべきです。
2.馬脚を露す/馬脚を現す(ばきゃくをあらわす)
「馬脚をあらわす」とは、「隠していた本性や悪事が明らかになる。化けの皮が剥がれる」ことです。「馬脚を露わす」「馬脚を現す」とも書きます。
馬脚をあらわすの「馬脚」は、芝居で馬の脚を演じる役者のことです。
馬の脚役を演じる役者が、芝居中にうっかり姿を現すことから、隠しておいたことが明らかになることを言うようになりました。
隠しておいたことが表に出てしまったことをいう言葉なので、悪事が明らかになるという悪い意味で用いられます。
中国元代の古典劇『元曲陳州糶米、第三折』による出典で、中国では「露出馬脚来(マーチャオライ)」といわれます。
漢字表記には、「馬脚を露わす」と「馬脚を現す」があります。
「露になる(あらわになる)」ことが原義なので、本来の漢字は「馬脚を露わす」ですが、普通は「露わす」を「あらわす」と読みません。
そのため、「あらわす」の漢字「表す」「現す」「著す」「顕す」の中で使い分けとして正しい「現す」を使い、「馬脚を現す」の表記もされています。
どちらの漢字を使っても間違いではありません。
3.端折る(はしょる)
「はしょる」とは、省いて短く縮める。省略する。
はしょるは「端折る(はしおる)」が音変化した語で、元は着物の褄・裾を折り上げて帯などに挟むことを言いました。
端を折って短く縮める意味から派生し、省略することを「はしょる」と言うようになりました。
また、「おはしょりにする」とも言います。
4.話(はなし)
「話」とは、「話すこと。語ること。言葉を交わすこと」です。おしゃべり。会話。談話。
話は、動詞「話す(はなす)」の名詞形で、古くは「雑談」をさした言葉です。
かつては、国字の「噺」のほか、「咄」の字が「はなし」に当てられました。
「咄」を「はなし」の意味で用いるのは、日本で生じた用法です。
話の語源は定かではありませんが、心事を放す意味で「放す(はなす)」を語源とする説があり、「咄」の字が用いられたことからも有力とされます。
5.ハロウィン/Halloween
「ハロウィン」とは、「キリスト教の諸聖人の日『万聖節』(11月1日)の前夜(10月31日)に行われる祭り」です。
ハロウィンの語源は、「諸聖人の祝日の前夜」を意味する「All Hallow’s Even」が短縮された「Halloween」で、「Hallowe’en」とも表記されます。
ハロウィンの由来は、古代ケルト人の秋の収穫感謝祭に起源があるといわれます。
古代ケルト民族の1年の終わりは10月31日と定められ、この夜には死者の霊が親族を訪ねたり、悪霊が降りて作物を荒らすと信じられていました。
そこから、秋の収穫を祝い悪霊を追い出す祭りが行われるようになり、キリスト教に取り入れられて、現在のハロウィンの行事となりました。
ハロウィンには、「Jack-o’-lantern(ジャック・オー・ランタン)」と呼ばれる、かぼちゃをくり抜いて顔を作った中にろうそくを立てた提灯が飾られます。
これは死者の霊を導いたり、悪霊を追い払ったりするための焚き火に由来するといわれ、お盆の「迎え火」や「送り火」に近いものがあります。
ハロウィンで、仮装した子供たちが「Trick or treat!(お菓子をくれないといたずらするぞ)」と言って、近所の家からお菓子を貰う風習の由来は、農民が祭り用の食料を貰って歩いたさまを真似たものといわれます。
6.バザー/bazaar
「バザー」とは、「慈善事業などの資金を得るために、品物を持ち寄って開く即売会。デパート・商店などの特売会、大売出し。また、その会場」のことです。バザール。
バザーは、英語「bazaar」からの外来語です。
「bazaar」はイスラム圏の市場をさすのが本義で、「市場」を意味するペルシャ語「bāzār」に由来します。
日本では明治に「慈善会」の意味として「バザー」が用いられ、大正から昭和初期の新語辞典では「慈善市」と説明されていました。
7.鋏(はさみ)
「はさみ」とは、「二枚の刃ではさんで物を切る道具」です。
はさみは、動詞「挟む(はさむ)」の連用形が名詞化した語です。
はさみの漢字「鋏」は、金属を表す「金」と両側からはさむさまを表す「夾」の会意・形成文字です。
元々は、鍛冶で熱した金属を挟むのに用いる「金鋏(かなばさみ)」の類を意味した漢字です。
8.ハリケーン/hurricane
「ハリケーン」とは、「カリブ海・メキシコ湾・北大西洋西部・北太平洋東部に発生する、発達した熱帯低気圧のうち、最大風速が毎秒32.7メートル以上のもの」です。
ハリケーンは、英語「hurricane」からの外来語です。
「hurricane」は、スペイン語「huracan(ウラカーン)」の転訛とされます。
ウラカーンは、古くカリブ海沿岸で「暴風の神」のことを指し、スペインの船乗りが「とぐろを巻く」という意味で用いて、「ハリケーン」の意味となりました。
9.パチンコ
「パチンコ」とは、「ガラス板で覆われた垂直の盤面に、釘などの障害物と数個の穴があり、銅製の玉を穴に入れると多くの玉が出るゲーム」です。獲得した玉の数に応じて景品と交換できます。
パチンコの語源は、「パチン」という擬音に接尾語の「コ」が付いたものです。
大正時代に大阪で立体型のコリントゲームが流行し、名古屋・金沢と広まった際、金沢で「パチンコ」の名称が生まれたとされますが定かではありません。
なお「パチンコ」については、「パチンコは韓国では禁止。ギャンブル依存症や北朝鮮への資金流出懸念も大問題!」という記事に詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。
また、「ぱちんこ」の語は、Y字形の木や金具にゴム紐を張り、小石などを挟んで飛ばす玩具や、ピストルの俗称でもあります。
これらも、擬音「パチン」に接尾語「コ」が付いたもので、小さな玉を飛ばすことでは共通しています。
遊技そのものの歴史ではなく、「パチンコ」という語の語源としては同一です。