日本語の面白い語源・由来(お-23)お年玉・お歳暮・お愛想・お盆・お中元・お仕置き

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お年玉

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.お年玉(おとしだま)

お年玉

お年玉」とは、新年の祝いの贈り物のことで、一般には、子供など目下の者へ与えるお金を言います。

お年玉の「お」は接頭語の「御」です。
古くは正月行事として「歳神」を迎える祭りがあり、門松を立てて鏡餅を供えました。
この正月行事で供えた鏡餅をお下がりとして子供たちに食べさせ、それを「御歳魂(おとしだま)」と呼んでいたのが、「お年玉」の語源と言われます。

また、この餅は年初に分配されることから、年の初めの賜物(たまもの)で「年賜(としだま)」が変化したとする説や、鏡餅が丸いことから「お年玉」になったとする説があり、いずれも歳神に由来します。

お年玉が金品を贈る言葉として用いられた例は、室町時代から見え始めます。
当時のお年玉は、茶碗やなど様々な物が贈り物として用いられました。

2.お歳暮(おせいぼ)

お歳暮

お歳暮」とは、世話になった人などへ年末に贈る贈り物のことです。

お歳暮の起源は、正月に先祖の霊を迎える御魂祭りの御供え物を、暮れのうちに本家に届ける風習です。

お歳暮が現代のような、お世話になった人へ贈り物をする風習に変化したのは、盆と暮れに決済していた商人の習慣によるものと考えられています。

3.お愛想(おあいそ)

お愛想

おあいそ」とは、飲食店でのお勘定や勘定書のことです。

おあいそが「お勘定」を表すようになったのは、店が客に対し「お愛想がなくて申し訳ありません」などと断りを言いながら、勘定書を示していたことからです。

そのため、お客が「おあいそして」と言うと、「こんな店には愛想が尽きたから清算してくれ」という意味になり、本来は、お店に対して失礼な言葉となります。

しかし、お勘定の意味しか知らず「おあいそ」を使う人が増えたため、お客が「おあいそ」と言うことが失礼という認識も薄れてきました。

「お勘定」の意味で「おあいそ」が使われ始めたのは、庶民の暮らしや流行などの情報を掲載した明治時代の雑誌『風俗画報』95号の中で、京都の流行として「勘定をあいそといふなど尤も面白く存じ候ふ」と紹介されたことで、全国に広まったと考えられています。

私が「おあいそ」という言葉を知ったのは社会人になってからで、先輩に寿司屋で奢ってもらった時に、先輩が「おあいそ!」と寿司屋の大将に威勢よく言った時でした。

4.お盆(おぼん)

お盆

お盆」とは、旧暦7月15日を中心に行われる仏事のことです。現在は8月13日から16日に行われますが、7月に行う地域もあります。

お盆は、サンスクリット語「ullambana(ウラムバナ)」の音写「盂蘭盆(うらぼん)」の略です。

「盂蘭盆」を「お盆」や「盆」と略して呼ぶようになったのは盆に供物などを盛り、先祖の霊をもてなすことからとされます。

お盆の語源となる「ullambana」は、手足を縛って逆さまに吊るすという意味で、非常に苦痛なことを指しました。
また、大昔に「魂」を意味した、イランのアヴェスタ語「ウルバン」を語源とする説もあります。

お盆には、きゅうりとナスに箸を刺し、馬と牛に見立てたものを作ります。
この由来は、霊がきゅうりの馬に乗って早く来るように。また、名残惜しいことからナスの牛に乗ってゆっくり帰るように、といった願いを込めたものと言われます。

5.お中元(おちゅうげん)

お中元

お中元」とは、7月初旬から中旬にかけて、お世話になった人などに贈る贈り物のことです。

お中元の「中元」は、道教の習俗「三元(上元・中元・下元)」のひとつで、旧暦7月15日のことです。(上元は1月15日、下元は10月15日)
道教では中元を人間贖罪(しよくざい)の日として、一日中火を焚いて神を祭る盛大な祭りが行われましたが、仏教の「盂蘭盆会(うらぼんえ)」と混同され、お中元は祖先の霊を供養する日となりました。

江戸時代以降、お中元に親類や知人が往来し、お盆の礼として贈り物をする風習が生まれ、お世話になった人に贈り物をする習慣へ変化していきました

6.お仕置き(おしおき)

お仕置き

アニメ「愛と正義のセーラー服美少女戦士セーラームーン」で「月に代わってお仕置きよ」という名セリフがありますね。

セーラームーン・月に代わってお仕置き

お仕置き」とは、「懲らしめること。特に、体罰を加えて叱ること」です。

お仕置きの「仕置き」は、「仕置く」の連用形の名詞化です。

仕置くは「為置く」とも書き、しておく・処置するなどを意味します。「仕置き」は処置することの意味から、処分・処罰・采配・取り締まりなどを意味するようになりました

江戸時代以降は、処罰、特に、死刑にすることの意味で使われることが多くなり、この頃から、仕置きには「懲らしめること」の意味も含まれるようになりました

現代でも、刑罰や処刑のことを「仕置き」と言いますが、体罰を加えて叱る・懲らしめるの意味では、接頭語の「お(御)」を付けた「お仕置き」の形でよく用いられます。