日本語の面白い語源・由来(け-⑦)現ナマ・結局・ケチをつける・下馬評・験を担ぐ・血税

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現ナマ

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.現ナマ/現生(げんなま)

現ナマ

現ナマ」とは、現金の俗語です。キャッシュ。

現ナマの「ナマ」は、江戸時代、上方の商人が給料のことを「生(しょう)」と呼んでおり、その「生」が訓読された語です。

給料が「生」と呼ばれた由来は、米や魚などの現物支給に対し、お金がそのまま貰えるという意味からと考えられます。

やがて、「生」がお金を指すようになり、本物のお金を「現金」と呼ぶように「生」に「現」が付けられ、「現ナマ」と呼ばれるようになりました。

1950年代の洋画の邦題『現金に手を出すな』『現金に体を張れ』など、「現金」の文字に「ゲンナマ」のルビが振られたことから、「現ナマ」の語は広く使われるようになりました。

そのため、現ナマを漢字で「現金」と表記されることもありますが、正しくは「現生」です。

2.結局(けっきょく)

結局・囲碁

結局」とは、行き着くところ、結末、とどのつまり、せんずるところという意味です。

結局の「」は物事のしめくくり、「」は囲碁や将棋などの勝負ごとを意味し、本来、結局は囲碁などで一局打ち終えることをいいました。

そこから、「結末」や「物事の終わり」の意味として広く一般にも使われるようになり、「頑張って走ったが、結局ビリだった」など、副詞として用いられることが多くなりました。

3.ケチをつける(けちをつける)

けちをつける

けちをつける」とは、難癖をつけること、嫌がらせで縁起の悪いことを言うことです。

けち」は不吉な出来事を意味する「怪事(けじ)」が音変化したもので、「あやしき事」の意味です。

その「けち」に「つく」で、「縁起の悪いことが起こる」といった意味になり、「悪評などで物事がうまく進まない」などの意味になりました。

そこから難癖をつけたりすることを「けちをつける」と言うようになりました。

囲碁用語で対局の終盤で、決まらない目を詰め寄せる意味の「けち(結・闕)」を語源とする説もありますが、囲碁用語は「けちをさす」と用いられ、「けちがつく」や「けちをつける」といった表現はされません。

また、けちをつけるの「けち」は、難癖をつける意味が生じる以前に、縁起の悪いことの意味で用いられていたため、囲碁用語の説は縁起の意味が考慮されておらず妥当ではありません。

4.下馬評(げばひょう)

下馬評

下馬評」とは、第三者が興味本位にする噂や評判のことです。

下馬評の「下馬」は、馬から下りる意味のほか、城や社寺の門前で馬を下りなければならない場所の「下馬先」も意味します。

下馬

主人のお供の者が、下馬先で城内や社寺に入った主人を待ちながら、噂や評判を交わしていたことから、興味本位の噂や評判を「下馬評」と言うようになりました。

本来、下馬評には噂や評判の意味しかありませんが、「馬」の字が付き、「評」と「表」の音が同じであることから、下馬評は競馬の予想表(予想評)を指す語として多く使われるようになりました。

そこから、野球やサッカーなどスポーツの予想表の意味でも、下馬評が使われるようになっています。

5.験を担ぐ(げんをかつぐ)

験を担ぐ

げんをかつぐ」とは、以前に良い結果が出た行為と同じことをして、前途の吉兆をおしはかることです。名詞形は「げんかつぎ」です。

げんをかつぐの「げん」は「縁起」のことで、「縁起」が反転した「ぎえん」が音韻変化し、「げん」になったとする説が有力とされます。

この「げん」は、「げんがいい」や「げんなおし」などとも使われます。

漢字の「験」には、「仏道修行を積んだ効果」の意味や「効き目」「効果」などの意味があり、「縁起」を意味する「げん」と関係があるとも考えられています。

しかし、「効果」を意味する「験」は平安期、「縁起」を意味する「げん」は近世以降と時代が掛け離れています。

また、「縁起」の「げん」は、やくざ用語から出た言葉とされています。

そのため両語に関係性はなく、「げんを担ぐ」が成立した後に「験」の字を当て、「験を担ぐ」と書くようになったと考えられます。

6.血税(けつぜい)

血税

血税」とは、血のにじむような努力をして働き、納めた大切な税金のことです。

明治5年(1872年)の徴兵令『太政官布告』で、兵役義務を「血税」と称したことに由来します。

」は戦役で血を流す意味で、国民が負わなければならない兵役の義務をいったものですが、血を絞り採られるものと誤解され、血税反対一揆まで起こったといわれます。

現代では、徴兵制度がなくなったことで本来の意味も忘れられ、血税の「血」は「国民の労力」という意味で使われるようになりました。