日本語の面白い語源・由来(う-⑥)雲梯・牛の角を蜂が刺す・牛に経文・裏目に出る・鱗

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雲梯

日本語の語源には面白いものがたくさんあります。

前に「国語辞典を読む楽しみ」という記事を書きましたが、語源を知ることは日本語を深く知る手掛かりにもなりますので、ぜひ気楽に楽しんでお読みください。

以前にも散発的に「日本語の面白い語源・由来」の記事をいくつか書きましたが、検索の便宜も考えて前回に引き続き、「50音順」にシリーズで、面白い言葉の意味と語源が何かをご紹介したいと思います。季語のある言葉については、例句もご紹介します。

1.雲梯(うんてい)

雲梯

うんてい」とは、体育・遊戯用具のひとつで、金属製のはしご状のものを水平または弧状にしたものです。ぶら下がって渡ります。

うんていは、昔、中国で城を攻める際に用いた長いはしごのことでした。
兵器としてのうんていは、台車に折りたたみ式のはしごが搭載されたもので、そのはしごを伸ばし、城壁に掛けて攻め込んでいました。

これが「雲にも届きそうなはしご(梯)」ということで「雲梯」と名付けられ、のちに遊具の名前に用いられるようになりました。

2.牛の角を蜂が刺す(うしのつのをはちがさす)

牛の角を蜂が刺す

牛の角を蜂が刺す」とは、手ごたえのないことのたとえです。

牛の角に蜂が刺しても、牛は痛くも痒くも全く感じないことから、いっこうに手ごたえのないことのたとえとして、「牛の角を蜂が刺す」と言うようになりました。

同様の句に「鹿の角を蜂が刺す」がありますが、どちらが先に生まれたか定かではありません。

3.牛に経文(うしにきょうもん)

牛に経文

牛に経文」とは、いくら説き聞かせても効き目のないことのたとえです。

どんなに素晴らしい経文を牛に説き聞かせても、言葉の通じない牛は聞く耳を持たず、全く効果がないことから、言い聞かせても効き目のないことを「牛に経文」と言うようになりました。「馬の耳に念仏」と同じ発想の慣用句です。

対象が「牛」である理由は、古くから家畜として飼われ人間の近くにいたことや、何事にも動じなさそうな姿からと思われます。

4.裏目に出る(うらめにでる)

裏目に出る

裏目に出る」とは、良い結果が出ると期待してしたことが、逆の悪い結果になることです。

裏目に出るの「裏目」は、サイコロを振って出た目の裏側の目のことです。

サイコロの面は、表が「1」であれば裏は「6」、表が「2」であれば裏は「5」というように、表裏が奇数と偶数になっており、サイコロ賭博で「丁(偶数)」に掛けて裏面の「半(奇数)」が出ると「裏目が出た」ということになります

そこから、期待して行ったことが反対の結果になることを「裏目に出る」と言うようになりました。

ただし、丁半博打では通常二個のサイコロを用い、丁半が逆転するのは一方のサイコロが裏の時だけで、両方のサイコロが裏を向いた場合は予想通りの結果となります。

このように、「裏目」と言っても必ず正反対の結果になる訳ではないため、「裏目に出る」は丁半博打から直接出た言葉ではなく、サイコロの丁半にたとえたところから生じた言葉と思われます。

5.鱗(うろこ)

鱗

」とは、魚類・爬虫類など、動物の体を保護するため体表を覆う硬い小薄片です。

鱗を平安時代には「いろこ」と言い、「いろくず(いろくづ)」と併用されていました。
「いろくず」は、魚や竜など鱗のあるの動物を指すようになりましたが、元は「いろくず」が鱗の正式な表現として用いられ、「いろこ」は俗的な表現でした。普通、俗な表現は新しい言葉です。

使用例も「いろくず」が古い時期に多く、「いろこ」が新しい時期に多く見られるため、「いろくづ」から「いろこ」、そして「うろこ」に変化したと思われます。
この音変化は、「いを(魚)」から「うを」、「いごく(動く)」から「うごく」と変化したのと同じです。

「いろくず」や「いろこ」の「いろ」は、ざらざらした細かいものの意味で、「くず」は「屑(くず)」、「こ」は「小」の意味と考えられます。

「いろ」には、「い」が「魚」の意味で、「ろ」を接辞とする説もあります。しかし、草木のトゲを意味する「イラ」は魚の背びれにあるトゲも意味し、鱗と形状の似た「いらか(甍)」も、この「イラ」に由来するとも考えられています。

このことから、「イロ」や「イラ」が平らなところから少し飛び出ていたり、ざらざらしたものを表現したと考えられるので、「いろ」を「魚」の意味に限定せず、形状や感触と考える方が良いようです。

また、頭皮の「ふけ」を「うろこ」や「いろこ」と言ったり、皮膚病の時に掻くと出る粉も「いろこ」と言いましたが、鱗状であるところから「ふけ」など指すようになったとも考えられるため、これをもって魚の説を否定することは出来ません。